じっくり味わうことで伝わる、再現度の高さ――「味噌ラーメン風ドロップス」を食べてみた

前回青いラーメンを調理したときに思ったが、やはり北海道グルメを語るうえでラーメンは外せない。

(参考記事:食品にあるまじき禁断のビジュアル――ゾンラーメンを食べてみた

だからこそ、ラーメン関連の珍土産が存在しても、何ら不思議ではない。

とはいえ、この組み合わせはいかがなものだろうかと思う商品を見つけてしまった。

「北海道"珍"土産シリーズ」5回目は、名前からしてとんでもない1品を紹介しよう。

味の再現に重きを置いた、北海道のご当地ドロップス

今回紹介する北海道珍土産は、日本観光商事株式会社が販売している「味噌ラーメン風ドロップス」だ。

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砂糖と水飴を煮詰めてできるキャンディー・ドロップスに、まさかの味噌ラーメン要素が加えられている。

「味噌ラーメン風ドロップス」の販売元である日本観光商事は、北海道に限らず全国各地のご当地ドロップスを販売している会社だ。

今から10年以上前、「ご当地グルメの味がする飴」というコンセプトで商品開発を行ない、人気ご当地グルメの味を忠実に再現したドロップスを作り上げた。

他県のラインナップを見てみると、京都は「抹茶風ドロップス」、鹿児島は「白熊アイス風ドロップス」など、甘いキャンディーと相性が良さそうなご当地グルメが選ばれていた。

しかし、北海道の「味噌ラーメン風ドロップス」と福島の「喜多方ラーメン風ドロップス」だけが、圧倒的な異質さを放っている。

もちろん、北海道のご当地グルメとして味噌ラーメンが選ばれるのは自然なことだと思う。味噌ラーメンは札幌グルメの代表格として全国的に高く評価されているからだ。しかし、ドロップスと組み合わせようという思いつきは、到底自然とは思えない。

現在では店ごとに独自の進化を遂げていることが多いものの、一般的な札幌ラーメンは、味噌味のスープと中太ちぢれ麺、ふんだんに盛り付けられたもやしや玉ねぎといった炒め野菜が特徴のラーメンである。

そんな味噌ラーメンを北海道ならではの美食として評価し、ドロップスにしようと決めた結果、かなり個性的な味噌ラーメン風ドロップスが誕生した。

おいしさよりもご当地グルメの味を忠実に再現することを重視し、他の追随を許さないロングセラー商品となった。

ところで、ドロップス缶の側面を見てみると、原材料の欄に衝撃の文字が書かれていた。

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原材料の一部に鶏肉、大豆を含む

ちょっと待ってほしい。

「名称 キャンディー」って書いてあるじゃないか。

キャンディーに鶏肉と大豆が含まれていていいのか。いや、いいわけがない。

思わず取り乱しかけたが、「ご当地グルメの味を忠実に再現した飴」というご当地ドロップスのコンセプトを思い出した。

「なんとなくそれっぽい味」ではなく「味噌ラーメンだとわかる味」にするためには、鶏肉や大豆といった通常のキャンディーに含まれることはあまりないであろう成分を入れる必要があったのだろう。

原材料を見るだけでも、味噌ラーメン味の再現に挑んだ猛者たちの努力が伝わってくる。

その本気度に感服しつつ、いざ実食。

最後のひとかけらまで、じっくり味わって

さて、実食を決めたはいいものの、缶を開けるのは少々てこずった。

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恥ずかしながら、このようなドロップス缶を開けた記憶がない。

子どもの頃にドロップスを食べたことはあるが、きっとふたは親に開けてもらっていたのだろう。

てこの原理でふたをずらせば開けられると知り、スプーンで開けた。

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このレトロで少々手間のかかる開け方は、とても癖になる。

ぜひ、ドロップス缶は文化的遺産として受け継いでほしいものだ。

さて、まずは香りを確かめるため、味噌ラーメン風ドロップスに鼻を近づけてみる。

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思った以上に、味噌のにおいが強い。

通常のキャンディーであればまず甘いにおいが漂ってくるはずだが、味噌のにおいがぶっちぎり1等賞で鼻に到達する。

その後少し遅れて、ドロップスらしい甘いにおいもやってくる。

肉と野菜を炒め、仕上げに味噌と砂糖を入れたときに立ち上ってくるにおい。

おいしそうだが、なんせ相手はドロップスだ。野菜炒めではない。

原材料の一部に鶏肉と大豆を含んでいるだけあり、香ばしいにおいが強く、思わず警戒してしまう。

そして意を決し、口に運ぶ。

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まず舌先に伝わるのは、砂糖の甘さ。これは一般的なドロップスと変わりない。

しかし、舐めて一呼吸置いたところで、味噌のこってりとしたにおいがブワッと広がる。

走って逃げても追いかけてきて、決して離れてくれない。

いつまでも味噌の影が鼻にまとわりつく。

鼻と口は、猛スピードでやってきた濃厚な味噌のにおいに支配された。

主な原材料が砂糖と水飴であることは一般的なドロップスと変わらないのに、香りはこれまで食べてきたドロップスと違い、完全に味噌。

何を食べているのかわからなくなり、頭は混乱する。

とても、おもしろい味だ。

そして、半分以上が溶けたところで、新たな発見があった。

それまでは強い味噌のにおいの影に隠れていたが、たまに長ネギを思わせる苦さやチャーシューを思わせる香ばしさといったものが、嗅覚で感じられるようになった。

これは、香料の力なのだろうか。

後味にラーメンのトッピングを思わせるようなにおいがついていることで、このドロップスは味噌ラーメンをイメージしているんだと思い返す。

砂糖、味噌、そして舐め続けていると感じられるトッピングの具材たち。

すべてを感じ取ることで、初めて「味噌ラーメン風ドロップスを食べた」と実感できる。

味噌風味の飴から味噌ラーメン風ドロップスに変わっていく過程には、感動すら覚えることだろう。

勇気を出してじっくり味わえば、「ただの味噌味ドロップスでは終わらせない」、「ドロップスで味噌ラーメンの味を再現したい」という開発者の志に触れられるはずだ。

癖がなく食べやすい、もうひとつの北海道ご当地ドロップス

実は北海道には、もうひとつ日本観光商事が販売しているご当地ドロップスがある。

それが、「札幌 ビール風ドロップス」だ。

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ビールをドロップスにするというのもなかなか挑戦的だが、味噌ラーメン風ドロップスを食べたあとだからか、そこまで強い抵抗はない。

(回を重ねるたび、珍土産への抵抗力が弱まっていることは自覚している)

こちらも、まずはにおいから確認してみよう。

嗅いでみると、味噌ラーメン風ドロップスのような強いにおいはない。

缶の取り出し口に鼻を近づけてみても、口止めシールから漂ってくる紙のにおいがするだけだ。

ビール風というからには強い苦味のある香りがするのかと思ったが、予想は外れた。

しかし、考えてみればビール自体もそこまでにおいが強いわけではない。

苦さを感じるのは味であり、香りは麦芽感が多少するだけだ。

それでは、さっそく口へ運んでみよう。

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こちらも味噌ラーメン風ドロップス同様、まずは甘みが伝わってくる。

そして、その味を堪能できる時間はかなり長い。味噌ラーメン風のときのような即効性はないようだ。

これ、色だけビールで味は普通のドロップスなんじゃない?

と思い始めた瞬間、ビールが持つ麦芽由来の苦い風味が感じられた。

ふと舐めるのをやめて一呼吸置いてみれば、口内にふんわりとビールの風味が漂う。

しかし、決して味を損なうほどの強い苦味ではない。

ドロップスの甘さが変わらず感じられる程度の、ほんのりとした苦味だ。

強い麦芽感や炭酸の刺激といったものは感じられないが、ビールをイメージしていると理解できるにおいと味がする。

喉にガツンとくる刺激がないだけで、ビールはこんなにも飲みやすい味をしているのか。

強い刺激のなかに隠れているビールの味を、まさかドロップスで再確認できるとは思わなかった。

珍土産としては、かなり食べやすい商品といえるだろう。

なお、札幌ビール風ドロップスにアルコールは含まれていない。

味に酔いしれたとしてもアルコールで酔っぱらうことはないので、安心して食べてほしい。

再現度の高さに敬意を表し、勇気を出して挑戦してみよう

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今回は、味噌ラーメン風ドロップスと札幌ビール風ドロップスの2品を紹介した。

ただのドロップスだと、侮ってはいけない。

甘いお菓子で、ここまで忠実にご当地グルメを再現できるとは恐れ入った。

味噌ラーメンとビール、それぞれの味をきちんと再現していたことに、感服する。

何人かで集まっているときに、何の味がするか当てるゲームをするのもいいかもしれない。

どうせ挑むならクオリティの高い珍土産を、と考えている方にもぜひ食べてみてほしい。

味わうときは、じっくり時間をかけて舐め続けてみよう。

そうすれば、味や香りの繊細な変化を、舌先や鼻で感じられるだろう。

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この記事を書いたのは

相良海琴

札幌在住のライター。 珍土産実食レポートやインタビュー音源記事化など、引きこもり型執筆スタイルを貫く。
人や商品の魅力を伝える記事を多数執筆。
写真が趣味で、撮影と記事執筆を同時に担当することも。
好奇心旺盛で食の冒険をすることが多く、不思議な食べ物を見つけたらとりあえず口にしてみる。

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