がんになった 再発・仕事を辞めた 不安ばかり どうすれば? 精神腫瘍科医とのQ&A 両側乳がんになりました103

いつもお読みいただいてありがとうございます。

コロナ禍でのがん患者のココロの保ち方。非常にみなさん迷っておられるのがわかります。

まずはお便り 乳がんと診断されました。

『はじめまして。7月のドックに引っかかリ、再検査の結果乳がんと診断されたばかりです。何よりショックだったのは、MRIでもう片側にも腫瘤があり再エコーになりました。来週転移がないか確認して最終診断になります。診断されてかは、眠れず食べられず血圧が上がり2回目のワクチン接種を延期になりました。転移してないか、予後不良だったら?同居の高齢の両親は?仕事は?一人暮らしのまだ若い子どもは?考えすぎて平常心を保てていません。検索してこのサイトをみつけ、わらをもすがる思いです。ただ、怖くてまだ全て読んでません。前を向くヒントを頂きたいと思いコメントさせていただきます。』

きっと今が一番不安。私もそうでした。診断されて眠れないこともありましたし、ネットサーチばかりして目がさえて余計に睡眠不足に・・・。

怖くてまだ読めていないのも仕方ありません。それで普通、みんなそうです。無理に前を向かなくても、その時が来るのでまずは一歩ずつゆっくり歩を進めれば少し楽なのではないかと思います。

大好きな仕事をやめた、温泉も岩盤浴も・・・どうすれば?

『私は、2020年9月に右乳がんが見つかりました。それまでずっと病院で看護助手として患者さんの身の回りの事をお手伝い、介助してきました。病気がわかってから、抗がん剤の治療のため、仕事を辞めなくては行けなくなり、大好きな仕事だったのですごく残念で悔しくて・・・自分の居場所がなくなってしまったと落ち込んでいました。現在は、手術も終わり、右胸全摘でホルモン剤治療をしている状態です。自分が大好きだった仕事、休日に行っていたお風呂、岩盤浴、行きたいけど、行けない。全摘した方は、下着でも傷周りが痛い時あるのだけどどういった対処をしてるんだろう?』

お仕事を辞めねばならなかったのですね。残念だったと思います。介護のお仕事をされている方もいらっしゃいます。ここまではできる、とお話できる環境のところでまたお仕事ができると本当はいいですよね。腕を使ってはいけない、とよく言われるのですがその手術の程度や傷の具合にもよると思います。先生にご相談された方がいいと思います。私は両側ですが、すっかりゴルフクラブを振っていて、逆にリハビリになるといってもらっています。

お風呂や岩盤浴も行けないと思う方も多いですよね。私も最初はそうでした。長いタオルでさくっと隠して、着替えるときはちょっと隅っこを使って最近は出かけています。透明じゃなくて濁り湯であれば解放感!

今、乳がん患者さんなどの温泉デビューを支える『乙女温泉』も全国に広がってきているのでその一歩になるといいですね。函館では毎月、帯広、釧路でも予定されていますし、もちろん札幌でも。またご案内します。

あとは、傷ですが・・・私は1年以上、傷を保護するシートを貼っていました。人によって傷の位置が違いますから、人によって下着などでこすれる位置も違います。すれやすいところに傷がある方は保護シート、おすすめしたいです。そして今でも中が痛むことはあります。先生に聞くとそれは治ってきていると思って・・・とのことでした。

がん患者のココロ

7月8日(木)のピンクリボントークではこのコロナ禍でがんとうまく付き合っていこうというようなテーマで斗南病院の精神科長 上村先生にお話を伺いました。

その後の患者さんとのお話とともにフルバージョンはYouTubeをご覧ください。

https://youtu.be/D-j4RrGSgkw

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一番のアドバイスは『治療を考えることだけに集中しないように』というアドバイスを受けました。先生は普段、入院患者さんとのお話もしていらっしゃいます。どう接しておられるのでしょうか?

上村先生『入院中なら、帰ったらどういうことしたいですかとか、どんな仕事してましたかとか、その仕事に影響が出るならばこういうことあるんじゃないかとか、生活に関する話題をするのがいい。もちろん心の余裕が必要だと思うので今日から治療を始めようって人とはやっぱり治療の話をしますけれども、ちょっと煮詰まってきたなというタイミングで少し力が抜けると言うか、リラックスできるとか、そういうような働きかけが必要かなと思います。』

今回のイベントは、札幌出身の乳がん患者、ヒロササさんにもご参加いただきました。

http://site.wepage.com/sunnymommy2021

(ヒロササさんのストーリーはこちら  :https://sodane.hokkaido.jp/column/202105112100000938.html

コロナ禍で遺伝性乳がん卵巣がん症候群、HBOCと診断されて、健側の予防的切除を受けられています。このコロナ禍でコミュニケーションの不足を感じている、と心の内を語ってくれました。

一方でSNSは便利でありながらも頼りすぎるがゆえに、残念ながら自分の調子を崩していく人も多くいます。例えば、つながっていた方の訃報に接したことでココロの置き方がわからなくなる、といった悩みです。

上村先生『SNSで訃報を聞くと、情報の一部だけが切り取られて入ってくる。実際にがん患者さんのサロンの中で患者さんに会って、どういう経過で亡くなられたのかを聞くときよりも部分的で一部やや不正確な情報が来ている可能性があって。背景をわからないで聞いているケースが動揺を生んでいる、というのがひとつ。SNSは誰かと聞く、というシチュエーションではない。

ひとりで聞くので、悲しいニュースをひとりで聞くと不安が増強する。どうしよう、と思う。入院中などでも起きることがあるけれども、看護師さんなどと一緒に話してみることが重要で。誰かとシェアする、ということが大切なことかもしれません。悪い知らせはひとりで聞かない。』

阿久津『コロナ禍で一人でいる時間も長くて ”答えのないものに答えを求めてしまう”なりがち。なんでがんになってしまったのが、自分で自分を責めてしまう、という方も多い。』

上村先生『明確な答えとしては”答えを探そうとしない”なんですけど、そういう思考に入ってしまうとなかなか抜け出せないのでまずは冷静になって自分が落ち込んでいる理由というところに目を向ける。なんでがんになってしまったのか、と考えることが不安の原因になっているということを冷静に振り返る。あるいは仲間から指摘してもらう。重要なのではないかと思う』

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阿久津『がんはなかなか予防がしずらく、誰がなるのかはわからないですし、そのときのショックはすごいですよね。どう復活していいのかわからない方も。』

上村先生『人数でいうとがんになるのは2人にひとりの時代なので、考えても仕方ないことだよね、と思えるといいなと。』

ヒロササ『再発への恐怖がつきまとうのはどうしたらいいのでしょうか?』

上村先生『毎回、チェックのCTを受ける日、血液検査や胃カメラを受ける日、その結果が出るまで本当にドキドキする、と。とてもそういう人が多いし、ゼロにはできないんだろうと。がん細胞をゼロにすることはできない、いつか広がりをもっていて、いつかコントロールできなくなる。それが20年後なのか、3か月後なのかもしれないし、わからないけど、いつか来るだろうと。ちょっとずつ前から想定しておく、ココロの準備が必要なんだろうと。』

ヒロササ『早期の緩和ケアが重要ですね。』

上村先生『アドバンスケアプランニング、といいます。先を見据えて準備が大切。受けられるがん拠点病院も増えてきています。想定していないことを先生から伝えられると、医学的情報が整理されていないのでどんな質問をしていいかわからなかったり、混乱したりすることもあるのではないでしょうか。診察室の中だけで解決しようと思わない方がいいかもしれません。』

がん情報サービスの中に『質問情報パンフレット』を紹介してくださいました。

https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/psychiatry/psychiatry_panfu.pdf

がんと言われた時とか治療の選択に迷う時とかセカンドオピニオンを求めたい時とかにどういうやり取りをしたらいいかっていうのがあのパンフレットになって書いてあるので、参考にしてみてください。

上村先生『僕が最近よく強調するのは仕事を辞めないでくださいってことをまず言っています。がんというのはちょっと長く付き合うことになりますし、経済的なことを無視しては話せない。今、乳がんの患者さんには意識して話しているんですけどもうとにかく、私はがんとだけ向き合うので、もう仕事もやめるし、趣味のこれも辞めたし、ジムも退会したしてみたいな人が多いんですけどもそこはちょっと一旦冷静になって、と。今はまず知識をちょっと得る時期なので、少しこの病気についての知識を増やした上で少し冷静に判断していきましょう、という話をします。』

一方ですぐ治療しなきゃいけないっていう、ちょっと急ぐような人がいるのでそういう人は不安を抱えながら治療するのは当然なのでそれは私たちがちゃんと全力で支えますよってことで、励ましつつ。一緒に治療していくっていうスタンスにしていくことにしています。』

阿久津『ちょっと時間が経って、我々のように毎日の治療が一段落ついて、でも私の場合はホルモン治療が続いていたり、ヒロササさんのように予防的切除をされると更年期的な症状が起きて、気持ちのアップダウンが起きる。どう対処するのがよいですか?』

上村先生『気持ちのアップダウンが起きるのは、このホルモンの今の体の変化からして当然起こるものだっていう認識を持つ、ということがすごく重要なんです。なんで自分だけこんな気持ちが不安定になるのかとか、なんで普段だったら、こんな時にイライラしないのにイライラしちゃうのかと思ってしまうことが最も追い込むことなので。卵巣などをとった状況だったら、ホルモンのバランスが崩れてるだろうし、今のホルモン療法っていうのは女性ホルモンを抑える薬を飲んでるんだからこういう状況は必ず起きているんだからっていう風に・・・。まずちゃんと理由を自分として明確に理解するってことが大事です。』

その上で今は相談してくれる先生達の対処方法としては漢方薬とかは非常に優れた対処療法はありますので無理せずそこは相談に行くっていうことが重要です。まずはそのメカニズムはとてもしつこいですが、不安の理由っていうか、その気持ちが動揺する理由のところをやっぱり自分で理解してことが大事。』

ヒロササさん『俯瞰的に見ることが大事なんですね』

上村先生『“不確実なものに答えを求めないようにして探さないようにする”っていうことがよくて”不確実なものを受け入れようとする能力”、というのは既にそれは解決方法を求めてますから。何かを解決しようとする姿勢を捨てることがネガティブケイパビリティ。僕ができてるわけじゃないですし、その考え方をまず、置いておくというか、余裕につながるかなと。』

ヒロササさん『白黒つけない考え方って言うかな。グレーであえて見るって言うのも大切ですよね。』

上村先生『何事においてもそういう認識でいると少し楽になるのでは。がん治療においてもそういう感じになるのかなと思います』

ヒロササさん『それぞれ一人一人にとって自分はこのようにありたいという患者像みたいなものを持ってる方っていらっしゃると思うんですよね。

例えばがんと闘いたいタイプの方、あとはがんと共存してきたい、穏やかに過ごしたいという方がいらっしゃると思うんですがそのような中、それぞれが持ってるに患者像に近づきたいって言うか、でも近づけないっていう葛藤の中で皆さん治療されてると思うんですけれども。私の場合は”穏やかにいたい”っていうような患者像に近づくためにアドバイスはありますか?』

上村先生『たぶんがんという病気がない場合、穏やかに生活するっていうことの、自分の具体的なイメージがあったと思う。例えばストレスに関して動揺しないとか自分が好きな生活ができることとかっていうそのイメージがありますよね。それががんという病気によってちょっと失われて、何か満たされているのかというところがまず前提だという風に思うんですけれども。』

今の現状で生活をすることが穏やかな状況っていう何かを得て生活が改善するっていうイメージと少し変えていくってことが、少しでも良くなったり改善したりちょっとハッピーなことがそれをポジティブに考えられるとちょっと穏やかな生活になったなっていう実感が起きると思うので引き算的な考えではなくてちょっと足し算的に考えていくっていうところが重要なのかなという風に思います。』

【上村恵一先生】

斗南病院 精神科長

精神科専門医・指導医、一般病院連携精神科専門医・指導医

臨床精神薬理学専門医・指導医、

日本サイコオンコロジー学会 登録精神腫瘍医

※上村先生が取り汲まれている『緩和ケア』チャンネル

https://www.youtube.com/user/

ご質問・ご感想などはこちらまで・・・

https://www3.htb.co.jp/cgi-bin2/webform/webform.cgi/pinkribbon/form

(文:阿久津友紀 乳がん患者)

がんとともに、、、。

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この記事を書いたのは

阿久津友紀

テレワーク×治療ということで・・・登壇します。
第3回に登壇します!

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「子育て」「介護」「治療」の3つのテーマについて、仕事を両立するためのテレワークについて、
中小企業でも実現可能な実施方法や労務管理を、専門家を交えながら、わかりやすく解説します。

[第1回]2月 7日(水)子育て 13:00~15:00
[第2回]2月14日(水)介護  13:00~15:00
[第3回]2月21日(水)治療 13:00~15:00 ★
※詳細は「チラシ」及び「テレワークポータルサイト」をご参照下さい。

【お申込み】
https://telework.mhlw.go.jp/support/seminer/


引き続きこちらも配信で2月3日より見ることができます!
お申込みお待ちしています。

Next Ribbon2024
「がんとともに生きる、寄り添う」

1月17日(水)

第2部 プログラム
司会:原元 美紀 氏(フリーアナウンサー)

18:30-18:35 挨拶
18:35-18:55 「自分らしく生きる~肺がんステージ4からの独立、出産~」
清水 公一 氏 (社会保険労務士事務所 Cancer Work-Life Balance代表)
18:55-19:15 「がんで働いちゃダメですか?~取材者から当事者に」
阿久津 友紀 氏 (北海道テレビ 東京支社編成業務部長)
19:15-19:35 「新たな患者サポートへの挑戦~治療後の生活も支えたい」
松浦 成昭 氏 (大阪国際がんセンター総長)
19:35-19:55 「 不妊治療か、がん治療か 46歳で出産した私の選択」
だいた ひかる 氏 (お笑い芸人)

オンライン配信 申し込みフォーム

https://ciy.digital.asahi.com/ciy/11012609

『おっぱい2つとってみた がんと生きる、働く、伝える(北海道新聞社刊)10月6日発売

おっぱい2つとってみた がんと生きる、働く、伝える

日本癌治療学会 市民公開講座 9月23日(土)

https://www.jsco.or.jp/public/public_seminar/upcoming_seminar.html


「LINE特集 「失われる自分らしさ」。乳がんになった私たちの3年間。例え、心が折れそうでも…」
https://news.line.me/detail/oa-htbnews/bt2o2l9r6cfc

YouTubeで乳がんについて配信しています!

ピンクリボントーク【ホルモン治療の副作用と簡単ヨガ】 
https://youtu.be/gOOiLPH-n2I

温泉ソムリエも取得しました!

『アピアランスケアを考える』
https://youtu.be/3qVd1xXFvaU

ピンクリボントーク 患者と家族と社会 ~生きてくのに必要なコト~
アーカイブ配信:無料
https://youtu.be/PS4eJMy4GcY

第4弾の”がん患者さんとココロ” 北海道の斗南病院の精神科長で登録精神腫瘍医の上村先生に伺いました。アーカイブは
https://youtu.be/D-j4RrGSgkw

これまでの動画は・・・
【乳がん】おっぱい2つとってみた

HTBノンフィクション おっぱい2つとってみた
【2020年日本民間放送連盟賞 番組部門 テレビ報道番組優秀賞受賞】
【2020年ギャラクシー賞 奨励賞】

HTBonデマンドで無料配信中!
https://www.hod.htb.co.jp/pg_nf/pg_id_nf006

テレメンタリー2020『おっぱい2つとってみた~46歳両側乳がん~』年間最優秀賞 
ギャラクシー賞・選奨(報道活動部門)/民放連 放送と公共性 優秀賞
活動の一部は・・・
youtubeLIVEでピンクリボントーク① 見逃し配信中!
https://sciencefestival.jp/event/breast-cancer/

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