札幌 でスキーをしないなんてもったいない!と大声でいいたい 沼にハマる さっぽろ単身日記

前回のスキーの沼のハマる はこちら・・・ https://sodane.hokkaido.jp/column/202212240638002904.html

ナイター編

「暴走しない小回り」「カービングを乗りこなす」「年齢なきスキー技術」…

 

いい時代になった。

高いレッスン代を払わなくても、ユーチューブを検索すればいろんな解説動画が出てくる。

何本か視聴して分かった。

 

基本ができていない。

 

理屈は理解できるが、体が思うように動かないのだ。

長年の癖だからとにかく練習しないと直らないだろう。

とはいえ、毎日スキー場に行ける訳ないし。

そんな話をKさんとしていると、またしても悪魔のささやきが。

 

「ナイターもありますよ」

 

Bスキー場のホームページを見ると、午後4時からはナイター営業に切り替わる。リフト券は昼間の半額ほど。夜10時まで営業していて帰りの路線バスも運行している。

 

仕事を早めに切り上げれば平日でも行けるのか。

 

職場から自宅まで歩いて10分。いったん帰宅してスキーウェアに着替え、地下鉄とバスを乗り継げば1時間足らずでゲレンデに着く。平日、仕事帰りに手ぶらでスキーができるのだ。

滑りたい衝動と背徳感が葛藤する。

 

この日、夕方以降の予定が急になくなった。

天気も悪くない。

 

もしかして、行ける?

心の悪魔がささやいた。

 

午後5時前。

急いで帰宅し、着替えた。

冬山登山と兼用しているウェアは上下とも黒。手袋も長靴も毛糸の帽子も黒だ。ファッションに関心がないとどうしてもこうなってしまう。鏡を見るとまるで忍者。そんな姿で地下鉄東豊線のさっぽろ駅に向かう。

改札口でふと我に返った。

 

浮いている…

 

平日の夕方なのだ。当然ながら帰宅ラッシュになっていた。

通勤、通学客らの冷ややかな視線を感じながら、ほぼ満員の車両に乗り込んだ。

 

できるだけ目立たないように車両の端に移動。一つ目の大通駅で降り、東西線に乗り換えて円山公園駅で下車。人波に隠れるように、終始うつむいたまま移動した。

 

バス乗り場に着くとホッとした。

 

仲間がいる。

 

スノーボードのケースを背負った若い女性が立っていた。

その後ろにそっと並ぶ。

もちろん見知らぬ者同士だが、目的を同じにした連帯感で結ばれている。

そして、禁断の世界へといざなう夜のバスに乗り込んだ。

 

乗客は10人ほど。途中のバス停で次々と降り、住宅地を抜けると2人だけになった。

峠を越えてしばらく走ると、ライトに照らされたゲレンデが見えてきた。

怪しくきらびやかな金色の世界。バスを降り、まるで竜宮城に吸い込まれるようなふわふわした気持ちでロッジに入った。

 

レンタルコーナーの客は私1人。

人影がまばらなゲレンデは昼間より広く感じる。

驚いたのは、夜なのに地面の状態がよく見えることだ。

 

強度の近視に加えてひどい飛蚊症の私は、白い雪の斜面が見えにくい。しかもメガネの上にかけるゴーグルはすぐに曇る。白いウェアの女性や子どもが転んでいたりすると、直前まで気付かないこともある。

 

その点、ナイターは黄色い光が雪の凹凸をはっきり映し出してくれる。ゴーグルがなくても、ゴーグル越しのような見え方になる。

これは滑りやすい。

 

美しく輝く黄金色の斜面。

だれにも邪魔されず1人で思い切り滑り降りた。

なんと素晴らしき夜のスキー!

 

あれっ?

 

1時間ほど滑るとゲレンデの様子が変わってきた。

急に人が増え始めたのだ。

ボードの若者グループに、私のようなおっさんスキーヤー仲間、親子の姿もある。

駐車場では車のヘッドランプが頻繁に動いている。

 

そうか。

 

私は早めの退社だったが、定時に帰宅して車で来るとこの時間になるのか。

前日まで大雪だったので、新雪を求めて来た人も多いのかも知れない。

みな思い思いに札幌の冬を楽しんでいる。

 

ああ、大声で言いたい。

 

札幌でスキーをしないなんてもったいない。

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この記事を書いたのは

山崎 靖

元朝日新聞記者、キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、温泉学会員、温泉ソムリエ

昭和40年生まれ
新潟県十日町市出身


コラム「新聞の片隅に」
https://www.asahi-afc.jp/features/index/shimbun

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