眼の手術をした。
眼の手術と聞くと、それだけで目が痛くなってしまうが、実際には想像をはるかに超えていた。
ひとことで言うと、ホラーである。
でも、安心してください。
痛くはないですよ!
(とにかく明るい感じで)
痛みではなく、手術中に目の前で起きている現象がホラーだった。
もちろん麻酔はするが、効いているのは眼だけ。
つまり、意識はあるし、医師や看護師の声も聞こえる。
そして何より驚いたのは、なんと、見えるんです。
私の場合、右目の黄斑前膜(黄斑上膜とも言います)と両目の白内障の手術を同時に行った。
なので、1時間ほどの手術中に様々な出来事が両目に起きて、しかもそれが全て見えていた。
メスで眼の一部が切られ、水晶体という眼のレンズが吸い取られて、人工のレンズが埋め込まれる。
眼球の中に不思議な液体が入ってきて、それが煙のようにぶわっと広がる。
ピンセットのような細い管が入り込み、そのピンセットが(黄斑前膜の原因となっている)薄い膜のようなものをつまんでめくり上げる――
そんな眼の中で繰り広げられている手術の一部始終が、まるで影絵のように目の前にはっきりと映し出された。
ホラー映画であれば、怖いシーンで目をつむることもできるが、当たり前ですけど、眼の手術ではそれはできない。
どんなに眩しくても我慢するしかないのだ。
実際に手術中は、照明の明かりでめちゃくちゃ眩しい。
でも強制的に目は開けられているので、じっと耐えるしかない。
ここまで来ると、怖いを通り越して「もうどうにでもなれ」という心境になってくる。
まさに〝まな板の鯉〟状態。
「終わりましたよ。頑張りましたね」
およそ1時間後、看護師さんの優しい声が聞こえたときは、ぐったりしていて完全に放心状態だった。
でも、本当の怖さはこの後に襲ってきた。
眼の手術からさかのぼること2年。
2021年4月に札幌での単身赴任生活が始まった。
強度近視で乱視もあり、しかも日本人によくあると言われる正常眼圧緑内障という、すでにやっかいな眼の状態だった。
そのため、札幌でいい眼科医を見つけることが私にとって最重要課題だった。
最初に受診した眼科でSLTという聞いたことのない緑内障のレーザー治療を受け、別の眼科で「オウハンゼンマク」という聞いたことのない病名を告げられ、最後にたどりついた眼科で手術を受けるまで、何度も転院を繰り返した。
札幌で受診した眼科はなんと7カ所。
はっきり言って眼科は、医師によって診断結果や治療方針が大きく違ってくる。
そして何よりも重要なのは、その医師と自分との相性。
言葉を変えると、その医師を心から信用できるかどうか、ということになる。
7カ所も眼科をさまよったということは、つまり、信用できる眼科医ばかりではなかったということだ。
私にとって信用できるかどうかの最大のポイントは、眼の状態や治療内容を丁寧に説明してもらえるかどうか、だった。
一番基本的なことだとは思うが、残念ながら札幌ではそういう眼科医は少なかった。
そして最後の最後に、この人になら自分の大切な眼を託してもいいと思えた医師が、診療所の前に連日、診察開始の1時間以上も前から行列のできるスーパードクターだった。
札幌で〝
目の悩みを抱えている誰かのために、何回かにわたって書いてみようと思います。
(続く)