地域とともに12年…「麻生キッチンりあん」 こども食堂だけじゃない〝人と人をつなぐ〟空間へ 

夕方5時…開店した直後から、にぎやかな声が聞こえてきた。

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麻生キッチンりあん。

札幌市北区地下鉄麻生駅にほど近いビルにあるこの場所は、「日替わりシェフ」の食堂。地域の方にスペースを貸し出していて、カフェの日もあれば、イベントや何かの勉強会の会場になっている時もある。

そして地域の子どもたちには「こども食堂」として親まれている。今回取材した日がまさにそうだ。

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この日は10人ほどの女性スタッフが忙しそうに料理に追われていた。

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こんだてはカレーとアスパラのごまあえ、コールスローサラダ。野菜もたっぷり入って栄養満点。

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「おかわりしてもいいですか?」小学生の女の子の問いかけに、スタッフは「いいよ~」と笑顔で答えていた。

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「居場所を作りたい」…「こども食堂」という言葉がまだなかった時代に始まった挑戦

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2013年、麻生商店街振興組合と藤女子大学が連携して立ち上げたコミュニティカフェ「ヘルスタディ藤麻人(とまんと)」がりあんの前身だ。当初の目的は「ひとり親家庭の子どもに対する学習支援と、栄養バランスの摂れた食事提供」だったという。「ひとり親家庭の子どもに対する学習支援と、栄養バランスの摂れた食事提供」

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〝こども食堂〟という概念が、まだ社会になかった時代に始まった「りあん」…12年かけて地域に浸透し、多くの子どもたちの放課後の居場所となっている。

ある小学生の女の子に話を聞いたところ、学校で「りあん」の予定表のプリントが配布されていて、それをみて来るんだという。「ご飯を食べに来るというより、スタッフの皆が面白くて好きだから来ています」と理由を話してくれた。

女子中学生の2人組にも話を聞いた。同じ学校だと思っていたのだが、小学校までは一緒でいまは別の中学校に通っているんだという。「ご飯を食べながらお話をしたいと思って、月に一回の子ども食堂でご飯を一緒に食べるのがいまの楽しみです」と笑顔を見せた。

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食事代はこども100円、おとな500円。

一人で来る子、友達と連れ立って来る子、親に連れられて来る子、利用者はさまざまだ。

子どもといっしょにきたというお母さんに聞いたところ、この場所を知ったのは学校からの情報だという。「とてもおいしくて、また来たい」と話してくれた。

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食堂の奥には小上がりのようなスペースが。まだ幼い子どもをつれたお母さんのほか、小学校高学年の女の子たちがガールズトークを繰り広げていた。

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また、食事を終えたあとも漫画や本を読むなどして時間をつぶす子どもも。親が仕事を終え迎えに来るまで、ここで時間をつぶす子どもたちも多い。親としても一人で家にいるより安心だと言える。

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出入口付近には、清涼飲料水やお菓子、そして絵本も。これらは企業・団体などから寄付されたもので、自由に持ち帰ることができる。

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取材中にも「母親や弟のために」とたくさんカバンに入れて持ち帰る小学生がいた。

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絵本も自由に持ち帰ることができるのはうれしい。

食べ盛りの子どもたちのため…奮闘するボランティアたち

一方、厨房は戦場のように忙しい。料理を作り、給仕するのは食のプロではなく、素人のボランティアたち。しかし、あたたかい料理をおいしく食べてほしいという思いはプロに負けてはいない。

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お米は8号炊きの電子ジャーで3回にわけて炊く。

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お米をはじめ食材の価格は高騰を続け、食堂の運営に重くのしかかる。そんな中、運営を手助けしてくれるのは、さまざまなものや資金を寄付してくれる人々の存在だ。

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取材中も自動車整備工場などを経営している2人の男性がアイスクリームと現金を寄付するために訪れていた。二人は「こどもは宝ですから」と、今後も支援をしたいと話していた。

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こども食堂だけではない…人と人をつなぐ場所

「こどもの居場所を作りたい」として始めたこの食堂は、いつしか地域の人と人を結びつけるためのスペースとなり、子どものみならず大人たちも集まる場所として浸透している。

「りあん」が運営する子ども食堂の日は月に1回。それ以外の日は何をしているのかというと…

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こちらは2025年6月の予定表。食堂として使用される日ももちろんあるが、「顔ヨガ教室」「介護者のつどい」「こどもの学習支援」などさまざまな用途に利用されている。

麻生キッチンりあんの理事長・西本香奈江さんは「こどもの居場所として始めた食堂が、多種多様な居場所として求められることが多くなった」として、核家族化、高齢化、少子化などで人々の生活スタイルが変わる中、「りあん」が果たすべき役割が増えてきたと話す。

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原点はやはり「こども」…助けを求めてほしい

麻生キッチンりあんでは現在、福祉医療機構(WAM)の助成を受けて札幌市北区の「こども・若者応援ナビ」を運営している。

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LINEに登録すると「食べること」「勉強のこと」「居場所のこと」「急いで相談したいこと」などを相談することができる。

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始めたきっかけは数年前、子どもが自分で助けて求めてきたケースが相次いだことだと西本さんは話してくれた。SOSを出していた子どもたちにあたたかい食事をとってもらい、そして話をきいてあげる。それによってようやく子どもたちは落ち着いてくれたという。

そういった体験を通して西本さんは「助けを求められない子もいるんじゃないか」と思い、「こども・若者応援ナビ」を始めることを決めた。寄せられる相談は千差万別。

「音楽の鉄琴がうまく弾けない」などの学校に関する相談から、DVなどの深刻な相談まで。「なんでもいいから一人で抱え込まないでほしい」と西本さんは訴えている。

麻生キッチンりあん


住所:札幌市北区北39条西5丁目2-12 滝澤ビル1階(旧くすりのひまわり跡)

   地下鉄南北線麻生駅 出口6番から出てすぐ

電話:電話 011-707-1795

営業時間: 11:30〜15:00(月・火以外)不定休

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この記事を書いたのは

SODANE編集部

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