無免許・無車検・無保険で札幌中心部を運転し事故 20代男「週2~3回乗っていた」 被害者への賠償は可能なのか

札幌・中央区の大通公園がビアガーデンでにぎわうころ、その裁判は開かれた。

そのひき逃げ事件は、まさに裁判所の近くで発生したものだった…

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法廷に現れたの男は黒いTシャツに黒いズボン。胸板は厚く腕も筋肉質。起訴状によると職業は「とび職」だという。年齢は25歳になったばかりだ。

男が問われている罪は大きく2つ。

・男は札幌市中央区で、自身が無免許であることを知りながら乗用車を運転し、赤信号を見落として交差点に進入。横から来た乗用車に衝突し、運転していた男性に2週間のけがをさせた。

・男は事故を起こしたにも関わらず、男性を救護せず、警察にも通報せずその場から逃走した。(男性は腰に2週間のけが)

(起訴状から要約)

検察は冒頭陳述で事故直後の男の行動について指摘。それによると、事故を目撃した別の車が追いかけてきて、その男性が「事故を起こしたんだから逃げるな」と言ったところ、男はその男性を衝突した車の被害者と勘違いし「ぶつかってきたのはそっちだろう」と言い、男性が「警察に電話しろ」と続けたところ「わかった、わかった」と言いながら逃走したという。

事故当時、往生際の悪さを見せた男だったが、公判冒頭ではあっさり「間違いありません」と起訴内容を認めた。そして被告人質問が始まった。

素直に罪を認めるも幼さが見え隠れする供述

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弁護側:あなたはどういう原因で免許の更新漏れをしたんですか?

被告:以前の飲酒運転のやつで更新できないのかなと思って、その間仕事も忙しくて…

弁護側:免許失効する前はどれくらい車を運転していましたか?

被告:3,4年くらい。

弁護側:また免許を取ろうと思っていましたか?

被告:はい。免許合宿の予約していました。

弁護側:どうして免許をまた取る前に運転し始めたのですか?

被告:大丈夫だろうという考えがあって運転してしまいました。

弁護側:車を入手して2カ月くらい。その間 週に2、3回運転していた?

被告:そうです。

弁護側:事故を起こしたのは午前6時、早朝なんだけど、交通量はどうだったのですか?

被告:それほど多くありませんでした。

弁護側:で、過失の内容というのは信号の見落としということでよかったですか?

被告:隣で(同乗者と)話をしていて信号の色を見落としていたと思います。

弁護側:スピードは時速35キロくらい。ここは片側二車線の道路ですから、低速ですよね。低速だった原因は?

被告:……原因は特にないです。

弁護側:あなたは現場から逃走し、そして追いかけてきた車あるでしょ。そして停まるように言われたと思うんですけど、その時あなたはこの車を被害車両だと思った?

被告:そうですね。その車かわからなくて、そうなのかなと。

弁護側:そして今、こういう形で刑事事件になっているんだけど、今あなたはこのことをどう思っていますか?

被告:大きな、、無免許運転をしてしまって自分なりにはここに原因があるとか、行動を含め全部、全部含めて自分が悪いと思っています。

弁護側:今回の処分がどうなるかはわかりません、もし仮に社会内更生が許されるとすれば、あなたはどういう生活を今後していきたいと考えますか?

被告:仕事としてはやっぱり免許は必要なので、しっかり反省した後に免許を取得して、二度と無免許運転はせず、事故を起こして逃げずやっていきたいと思います。

弁護側:二度と交通犯罪を起こさないと、法令を守ると約束できますか?

被告:はい

検察側の質問 指摘に対し、うなづき続ける被告

検察側:あなたは免許を取ろうとしていたんですね?

被告:はい

検察側:免許合宿と言っていましたか?

被告:はい。他県で免許合宿で最短で取れるということで。

検察側:でもその前に車を買ってしまった。

被告:はい

検察側:そして運転してしまった。どうして乗っちゃったのでしょうか?

被告:バレなきゃいいという考えでした。

検察側:事故さえ起こさなければばれないと思った?

被告:はい

検察側:だから慎重に運転していたと

被告:はい

検察側:でも無車検・無保険車に乗っていた。

被告:はい

検察側:でも信号を見落としてしまった。

被告:はい

検察側:相手は車でしたけど、歩行者だったら大きなけがをしていた。そうなったらあなたは自分で責任を負いきれないですよね?

被告:はい

検察側:そういうことを全く想像できていなかった。甘い考えを直そうと思っていますか?

被告:免許なしの状態では二度と車は乗らない。いろいろ考えて最悪のケースを考えて行動するようにします。

検察側:何事についてもということですか?

被告:はい

裁判官による質問 被告の無免許運転の悪質性の理解は…

裁判官:今現場に行くときはどうやって行っていますか?

被告:友人に送り迎えしてもらっています

裁判官:あなたが免許を再取得するのは時間がかかると思いますが、車なしで仕事をして被害者に賠償することはできますか?

被告:そちら(賠償)にお金をかけるので…大丈夫です。

裁判官:基本的にはとび職を今みたいな形で続けていくということですね?

被告:はい

裁判官:何度も言われていると思いますけど、無免許で運転することってどういうことが悪いって理解していますか?

被告:免許を持っていないのに車を運転して、もし事故を起こしてしまったら、免許を持っているという証明もできないから、結構重たいことだと思っています。

裁判官:あなたは一度免許を取っているので車の操作はわかっているのでしょうけど、事故を起こしたらちゃんと対処するために保険に入るとかそういう責任を果たすことも重要だから運転免許というのがあるということを理解してください。

被告:はい

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幼さが目立つ被告の供述 検察側の求刑は

裁判は結審し、検察側は「身勝手な理由で無免許運転をし事故を起こした」として懲役1年2カ月を求刑。弁護側は執行猶予付きの判決を求めた。

判決はおよそ1か月後に言い渡される。

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この記事を書いたのは

HTB Court Watcher

元HTB報道部・社会班キャップ
SODANE編集部に在籍しながら、たまに趣味の裁判傍聴のため
札幌地裁・高裁に出没。傍聴する裁判は刑事・民事問わず。