【今語りたいアノ人】日向坂46・金村美玖、ツアーで発露したグループを支える強さとは
2022.11.16
日向坂46(以下日向坂)は、11月12日(土)&13日(日)の2日間、国立代々木競技場第一体育館において『Happy Smile Tour 2022』ツアーファイナル公演を開催した。先日のツアーファイナルに関してのレポートでも触れたが、彼女たちにとって今回のツアーは、新章へ向かう「プロローグ」の完成となるような時間となった(ライヴレポートはこちら→ https://sodane.hokkaido.jp/event/202211142300002800.html)
四期生の加入という新たな刺激もあり、彼女たちはこれから新たな物語を綴る季節に突入したと言えるが、先日のライヴにおいても、ここ約1年間の彼女たちの数々のステージを思い返しても、一際存在感を放ったメンバーがいた。約1年前にリリースされた6thシングル『ってか』で初めて表題曲のセンターを務め、今現在もグループの最前線に立ち続ける二期生・金村美玖である。
日向坂にとって激動の時間となった日々を中心メンバーとしてグループを支え続け、今本当の意味でグループの顔として、逞しき強さを放つ彼女の歩みに今こそ迫りたい。
ブレイクスルーに至るまで
現在、言うまでもなく日向坂の中でも屈指の人気/実力メンバーとして認識されている彼女。しかし、初期から彼女がこのような位置にいたかと言えばそうではない。けやき坂46(以下ひらがなけやき)時代からフォーメーションにおいては基本的には後列を務めていたし、ダンスに関してもどちらかといえば不得手な方だったのだ。冠番組などで今みせるような少し毒づくようなキャラクターもあまり出すこともできず、「空回りしてるってファンの人に言われる」と涙を浮かべながら吐露するシーンもあるなど、アート方面での才能は発揮しつつも、どこか不器用なイメージがある存在だったと言える。
しかし、二期生楽曲“Dash&Rush”でのセンター経験などを経て、徐々に存在感を増していった彼女。遂に4thシングル『ソンナコトナイヨ』で初のフロント入りをすると、以降彼女は約1年前にリリースされた6th『ってか』におけるセンターポジションはもちろんのこと、最新作となる8thシングル『月と星が踊るMidnight』に至るまで、すべての表題曲でフロントの位置を務めている。
グループの中で存在感を増していった彼女の歩みにおいて、ブレイクスルーとなったタイミングがある。グループの絶対的なエース小坂菜緒が参加が叶わず、数々のメンバーが代理でセンターを務めることとなった2020年の『日向坂46×DASADA LIVE&FASHION SHOW』だ。金村は“青春の馬”という楽曲で小坂の代わりにセンターに立つこととなったのだが、濱岸ひよりの復帰というストーリーもある中、センターを務めた彼女は<不器用なくらいがむしゃらに…>という歌詞が綴られた同楽曲で、その言葉に違わぬ、完全覚醒となるパフォーマンスを披露。聴く/観る人の背中を押したいという楽曲のメッセージを、精悍な表情と目一杯全身を駆使したダンスで表現した彼女の逞しい姿は、日向坂というグループを背負う存在となる未来を感じさせるものだった。※映像は『全国おひさま化計画2021』にて“青春の馬”で、センターを務める金村美玖。
その予感のままに彼女はフロントメンバー常連となり、遂に『ってか』では表題曲のセンターを務めることに。過去最高レベルに難易度の高い激しいダンスが施された同曲を、完全に乗りこなすパフォーマンスを彼女は披露。加えて<広い世界で私を選んだ理由/どうしてなのか不思議に思う/自信無い私を叱ってよ>という歌詞に象徴されるように、初期のひらがなけやき時代から様々な場面で不安な表情を見せることが多かった彼女の姿が、楽曲の主人公と完全にリンク。楽曲とのフィット感も相まって、完全に彼女は日向坂というグループの顔となったのだ。
「支え合う」グループの象徴として
先日のライヴでも強く感じたが、彼女が今ステージで見せる姿は自信に満ち溢れている。その要因は、グループの危機を足を止めることなく、最前線で支え続けた日々の経験が要因だろう。
約1年前からグループの歩みを振り返ってみよう。グループにとって絶対的な存在であった小坂の休養後に挑んだ全国ツアー『全国おひさま化計画2021』、当時最大キャパシティへの挑戦となった『ひなくり2021』、2022年春に遂に辿り着いた約束の地・東京ドーム公演、グループにとって初めての卒業セレモニー開催となった渡邉美穂という仲間との別れ、本当の意味で欅坂46という源流の元でライヴを行った『W-KEYAKI FES.2021』、そして宮田愛萌の卒業発表を経て新たなストーリーを紡ぐ上でのプロローグとなった先日の『Happy Smile Tour 2022』……どのライヴにおいても、彼女は非常に重要な役目を果たしてきた。ーーグループの顔としての活躍に加えて、「支える」役目である。
初のセンターとして挑んだ『全国おひさま化計画2021』はもちろんのこと、約束の地・東京ドームにおいても、彼女は「支える」役目としてひとつのハイライトを生んだ。開催直前、残念ながら同公演には同期の濱岸が参加できないことに。しかし、金村をセンターとして披露された“青春の馬”では、いないはずの濱岸と明らかに視線を合わせ、手を繋ぐように踊る彼女の姿があった。美しきソロダンスパフォーマンスを通して、不在のメンバーに優しく手を差し伸べた彼女の姿は、共に支え合って歩んできた日向坂というグループにとって象徴的なシーンだったと言える。
その後訪れた渡邉という存在との別れはもちろんのこと、小坂や丹生明里が現状完全な状態でライヴ参加できず、加えて宮田との別れも控えるなど、グループは今過渡期の中で不安定な部分も存在している。もちろんメンバー全員の努力の上でグループが成り立っているということは大前提だが、金村は前述のような状況を文字通り最前線に立って走り抜けてきた。ライヴごとにフォーメーションなども変わる中、彼女は常にセンターポジションやフロントとして、楽曲とライヴを支え続けているのだ。
特に、彼女はライヴ会場に熱気を与えるライヴチューンにおいて完全に屋台骨に。“ってか”はもちろんのこと、“アディショナルタイム”、二期生楽曲“恋する魚は空を飛ぶ”など、ハイテンションと共に会場を盛り上げる楽曲の中心に立ち、今では彼女の代名詞となりつつある激しいダンスパフォーマンスのキレで楽曲を引っ張り続けている。また、加速度的に彼女がライヴで見せる表情も変貌。初期から持ち合わせていた透明感と香り立つ郷愁に加え、エネルギッシュな笑顔が自然と目立つように。偶然にも導かれる中で、グループを休みなく最前線で支え続けた経験は、金村美玖という存在を圧倒的なエースにまで押し上げたと言える。メンバーへの愛情を常日頃から伝え続ける彼女だからこそ、その姿はより頼もしい。※映像は『ひなくり2021』の“アディショナルタイム”。
二期生という世代としてグループの真ん中に位置しながら、最後列から最前列まで辿る道程の中で逞しい強さを得た彼女。四期生も加入し、新たな季節へ踏み出す日向坂にとって、グループを文字通り「支える」存在となった金村美玖という存在は、間違いなくこれからも大きな光となる。写真集の発売が決まるなど、まだまだ飛躍の気配が止まらない彼女。今、完全にエースの風格を得た金村美玖の活躍にこれからも期待したい。
(カメラ:上山陽介)(テキスト:黒澤圭介)
セットリスト
日向坂46「Happy Smile Tour 2022」
2022年11月13日(水)
at 国立代々木競技場第一体育館
Overture
1. My fans
2. NO WAR in the future 2020
3. キツネ
4. 耳に落ちる涙
5. 君のため何ができるだろう
6. 僕なんか
7. 飛行機雲ができる理由
8. 君しか勝たん
9. ブルーベリー&ラズベリー
10. その他大勢タイプ
11. 10秒天使
12. ゴーフルと君
13. キュン
14. 真夜中の懺悔大会
15. 恋した魚は空を飛ぶ
16. アディショナルタイム
17. ってか
18. 月と星が踊るMidnight
19. 知らないうちに愛されていた
EC1. アザトカワイイ
EC2. JOYFUL LOVE
EC3. 日向坂