「もうダメだ」一次産業から悲鳴•••コロナ余波

「もうダメだ」一次産業から悲鳴•••コロナ余波

 水産加工場や牧場など、道内の1次産業の現場では多くの外国人技能実習生が働いています。いま新型コロナウイルスの影響で深刻な人手不足に悩まされています。
 また外食産業の需要が落ち込んでいる影響で、道内では肉や水産物の取引価格が低迷する「価格崩壊」が起きています。漁に出ても利益にならないため、出漁を取り止めている漁師もいます。

深刻な人手不足•••実習生が来ない

 十勝にある乳牛を飼育する牧場では3月、搾乳などを担当していた中国人技能実習生3人が帰国しました。彼女らは感染が広がった武漢がある湖北省がふるさとで、上海で2週間隔離された後、ようやく家族のもとへ帰ることが許されるそうです。
 帰国した3人の代わりに同じ湖北省から2人の技能実習生が来る予定でした。しかし日本の入国制限などが原因で、来日のめどは立っていません。この牧場では人手が足りない影響で、普段より搾乳作業に時間がかかるということです。
 またJA北海道中央会は3月末の会見で、全道の農家で約180人の外国人技能実習生の出入国のめどが立っていないとし、営農に影響が出ていると明らかにしました。
 この人手不足について解消の見込みはなく、今後農業や水産業などで生産量低下が懸念されています。

ウニやホタテ•••軒並み"価格崩壊"

 巨大なホタテをまるごと使ったジャンボホタテバーガーが有名な道東の別海町。町内複数の飲食店で提供されていますが、新たにテイクアウトを始めました。
 尾岱沼漁港(別海町)ではホタテの中国への輸出が止まり、国内需要も落ち込んだことで、1キロあたりの浜値が去年の約280円から60円も下落。これ以上の値下がりを防ぐため、水揚げ量を去年より3割ほど減らしています。
 また外食産業に自粛の動きが広がるなか、生ホタテの需要がほぼゼロに。地元の水産加工業者はホタテをひとつずつ貝殻から取り外し、冷凍加工して保管する対応を取っています。しかし多くの業者で冷凍施設も満杯になりかけているそうです。漁師からは「冷蔵庫もいっぱいで、このままでは出漁停止になりかねない」「今年はもうダメだ」という不安の声が聞かれました。
 取材した冷凍ホタテをはじめ、道内ではインターネット通販をしている業者が多くあります。外食に行くことが難しい今こそ、自宅でお取り寄せグルメを楽しむチャンスかもしれません。

根室 漁シーズンの幕開けも•••不安の声

 根室の本格的な漁シーズンの幕開けを告げる日本200海里内のサケマス流し網漁。ロシア生まれのサケなどを獲るため国連海洋法にのっとり、日本はロシア側に協力費を支払います。しかし今年は新型コロナウイルスの影響で政府間交渉が行えず、漁獲上限などが決まっていないままです。水産庁はロシア側とテレビ会議を行い、例年通り4月10日の出漁解禁は維持されました。
 初水揚げは出漁から約1週間後の見込みです。ただ外食産業の需要低下で漁師からは「ものが回っていないから、獲ったからって二束三文で売られても困る」などと魚の価格の値崩れを心配する声もあがっています。
 道東の水産業は、去年サンマが過去最低の水揚げ量を記録。今年にかける思いが強かっただけに、新型コロナウイルスによる影響が心配されます。

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この記事を書いたのは

HTB報道部記者・佐藤裕樹

佐藤裕樹
HTB報道部記者。
釧路駐在(2018年11月~2020年12月)。
HTBノンフィクション『秋刀魚が消えた サンマのまち』
https://www.htb.co.jp/hn/log/2020/12281114/

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