おもてなしも“新しい様式”!? JALが毎日じゃんけん企画

 新型コロナウイルスの影響で苦境に立たされている航空業界。欠航や減便が相次ぐなか、帯広空港で働く日本航空のスタッフがユニークなおもてなしを行っています。コロナの状況下で人とのつながりが薄れるなか、新しい発想が生んだ企画に注目が集まっています。

【動画】帯広空港でJALスタッフが毎日じゃんけん企画

 日本最大の食料基地と言われる十勝にある帯広空港。観光やビジネスの玄関口として、日本航空は帯広-羽田便を1日4往復運航していました。しかし新型コロナウイルスの影響で1日1往復に減便。スタッフ総出で行う飛行機のお見送りも1日1回だけになってしまいました。日本航空帯広空港所でカウンター業務を行っている岡坂めぐみさんは「空港でお客様と会う機会が少なくなってしまい、私たちのモチベーションが下がってしまった」と話します。

 そこで人とのつながりを求めて注目したのが、インターネットで24時間配信されている空港のライブカメラ(十勝毎日新聞電子版ライブカメラ)です。初めはカメラに向かって手を振ったり、「元気?」などとメッセージを発信したりしました。すると配信サイトのコメント欄で返事があり、スタッフと視聴者の間でコミュニケーションが図れるようになりました。
 試行錯誤から生まれたのが4月中旬ごろから始まった「毎日じゃんけん」。午後3時半すぎの飛行機が離陸したあと、グー・チョキ・パーが描かれたボードをカメラに示して視聴者とじゃんけんをするという試み。
 企画を考案した中の一人、日本航空帯広空港所の関口昌利さん。じゃんけんボードは紙袋を切り貼りした手作りで、ほかにも工夫していることがあるといいます。「風が強いときは『強風中止、また明日』のボードを掲げて、カメラに向かって手を振ってご挨拶します。反響は大きいです」。
 このじゃんけんを毎日楽しみにしている人は多く、取材した6月18日は配信サイトの視聴者数が一時450人を超えました。コメント欄には「きょうはグー」「また負けた!」などじゃんけんに関する投稿のほか、「JALさんありがとう」などと企画に感謝する投稿もありました。また帯広空港ではスタッフがカウンターで声を掛けられたり、感謝の手紙が届いたりもしているそうです。

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 日本航空でライブカメラを活用した企画を行っている空港は世界で帯広だけ。利用客の減少、そして人との接触が難しいコロナ時代だからこそ生まれた、新しいおもてなしです。
 移動自粛の緩和に伴い、日本航空は帯広-羽田便を7月1日から1日2往復に増便します。岡坂めぐみさんは「じゃんけんのほかに何かやらないのと言われることもありますが、カウンターでお客様をお受けするのが第一の仕事。じゃんけん企画はできる限り続けたいです」と笑顔。
 関口昌利さんも「我々と配信を見ている人だけのコミュニケーションなので、じゃんけんの勝ち負けで何があるというわけではありません。復便して時間的にきつくなったら終わりかもしれませんが、できれば継続したいです」。
 最後にライブカメラから見える地面に、じょうろの水を使ってonちゃんの絵と『まってます』というメッセージを書いてくれました。日本航空のスタッフの皆さんはライブカメラを通して生まれた絆が、帯広空港で結ばれる日を待ち望んでいます。

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この記事を書いたのは

HTB報道部記者・佐藤裕樹

佐藤裕樹
HTB報道部記者。
釧路駐在(2018年11月~2020年12月)。
HTBノンフィクション『秋刀魚が消えた サンマのまち』
https://www.htb.co.jp/hn/log/2020/12281114/

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