『サンマがいない・・・ホントにいない・・・』8月の水揚げ量は過去最低に

 深刻な不漁が続いているサンマ棒受け網漁ですが、今年8月の水揚げ量が過去最低だったことが分かりました。同じく過去最低だった前年同時期のわずか2割程度と厳しい結果です。この不漁はサンマを扱う道東の水産加工業にも大きな影響を与えています。

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 秋の味覚サンマですが、今年も深刻な不漁が続いています。漁業情報サービスセンターによりますと、今年8月に全国で水揚げされた生サンマは166.2トン。過去最低を記録した前年同時期の910.7トンのわずか2割程度でした。水揚げ量が少なかった原因として、サンマが見つからず去年よりも遠い漁場まで行っても魚群を形成していないことが挙げられています。

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 福島県から来ている大型のサンマ漁船の漁師は「本当にいない。だめだよ。もうサンマ漁は終わりじゃないの」と不安を口にしていました。
 また小型・中型のサンマ漁船の多くは漁場が遠く燃料費がかさむサンマ漁を諦めて、沿岸でイワシ漁を行っています。しかしイワシは単価が安く経営への影響は計り知れません。
 中型のサンマ漁船の漁師は「遠いサンマを獲りに行って空振りするよりも、近いイワシを獲るしかない。イワシの単価はサンマの100分の1くらいではないか」と話しています。

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 サンマの不漁は地元の水産加工会社にも影響を与えています。創業50年を超える根室市の永宝冷蔵。例年のこの時期であれば、朝から晩まで生サンマを全国の卸売市場に出荷するための作業に追われているそうです。しかし今年はサンマを選別する機械の稼働率も低く、異常事態だと話します。

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 永宝冷蔵ではサンマの加工品「焼き秋刀魚」も製造しています。サンマが獲れる時期は鮮魚出荷に作業が追われてしまうため、サンマ漁が終わる12月以降に加工品の製造を行います。加工品の原料となるサンマは、サンマが安くなった時期にまとめ買いして冷凍保存しています。しかし今年はまだ加工用のサンマを確保できていません。水揚げ量が少なく、本来であれば加工用に回るような小さいサイズのサンマも鮮魚として流通してしまっているからです。鮮魚用のサンマは高値で取引されていて、加工用原料には向かないそうです。
 永宝冷蔵の齋藤栄寿社長「本来なら天井の2m下まで冷凍サンマの在庫がある状態。すっからかんであり得ない」と話します。
 もしこのままサンマの価格高騰が続けば、今年は加工用のサンマを確保できず、加工品の製造ができないかもしれません。

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 そこで近年は生サンマに加えて、脂の乗りがいい新鮮な生イワシも全国の卸売市場に出荷しています。
 またサケトバやマストバなどの乾物をはじめ、サンマ以外の加工品の製造にも力を入れています。売り上げをサンマだけに頼らないようにする経営努力だといいます。
 サンマ漁はこれから本格的な旬を迎えるはずですが、先行きは不透明です。

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この記事を書いたのは

HTB報道部記者・佐藤裕樹

佐藤裕樹
HTB報道部記者。
釧路駐在(2018年11月~2020年12月)。
HTBノンフィクション『秋刀魚が消えた サンマのまち』
https://www.htb.co.jp/hn/log/2020/12281114/

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