秋サケ5年前の半減ペース…記録的不漁続く 価格に直撃

 旬を迎えている秋サケ漁ですが、高い海水温などの影響で深刻な不漁が続いています。2020年の9月末時点の水揚げ量は5年前の半分に減っています。そのためサケやイクラの価格が高騰していて、飲食店などから心配する声が上がっています。

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秋サケ水揚げ量は5年前の半減に

 道のまとめによりますと、2020年の9月末までの秋サケの水揚げ量(全道)は858万匹でした。5年前の同じ時期は1736万匹水揚げされていたことから、今年の秋サケの水揚げ量は5年前の半減にまで落ち込んでいることになります。
 道内では近年、秋サケの深刻な不漁が続いています。特に2019年は年間の水揚げ量が1522万匹に留まり「平成以降最悪」を記録しました。
 2020年は9月末現在、水揚げ量は前年を1割弱上回るペースとなっています。しかし回復したとは言い切れず、決して満足できる量ではありません。

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記録的不漁の原因は高い海水温か

 2020年は地域によって秋サケの水揚げ量に大きな差が出ています。日本海側とオホーツク海側は前年より上回っているものの、太平洋側の特に日高と根室はさらに深刻な落ち込みとなっています。
 原因として考えられるのは高い海水温です。太平洋沖を通過する台風が少なかった影響で海水がかき混ぜられず、海水温の高い状態が続いています。そのため日高や道東沖で温かい水を好むブリが水揚げされています。
 しかし秋サケは冷たい水を好むため、沿岸の海水温が高いと沖合や深いところに避難してしまい定置網にかかりにくくなってしまうということです。
 一方で近年続く深刻な不漁が、漁獲期における高水温だけが原因であるかどうか詳しく分かっていません。

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価格高騰は家庭や飲食店を直撃

 炭火でこんがりと焼かれたサケの切り身。そして秋サケからとれたイクラ丼。釧路市内にある名物炉端焼きの店では、自慢の秋の味覚、サケやイクラが値上がりしていることに危機感を抱いています。

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 「仕入れ値はここ数年で2割から5割上がっている。仕入れ値の高騰は店舗にとって一番の打撃。それでも店頭価格は上げず、これからもできる限り上げないでやっていきたい。できればサケがたくさんとれてほしい」(炉ばた煉瓦 木村隆志店長)
 一方食卓では、イクラの値上がりは避けられない見通しです。道東では9月末に漁獲される秋サケの魚卵が一番イクラに適しているとされています。そのため多くの業者がこの時期に1年分のイクラを漬け込み、冷凍保存しています。しかしその9月末も高水温の状況が続いたため、十分な量の秋サケが水揚げされませんでした。
 釧路市の和商市場に店を構える水産関係者によりますと、今後イクラの価格を2割程度値上げする可能性が高いということです。
 秋サケのほかサンマなど暗いニュースが続く「秋の味覚」。どれも不振の原因ははっきりと分からず、明るい兆しは何ひとつ見えていません。

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この記事を書いたのは

HTB報道部記者・佐藤裕樹

佐藤裕樹
HTB報道部記者。
釧路駐在(2018年11月~2020年12月)。
HTBノンフィクション『秋刀魚が消えた サンマのまち』
https://www.htb.co.jp/hn/log/2020/12281114/

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