函館は本当に”何もない街”か?学生たちの挑戦!「荘」ぐらし

函館は“何もない街”か? 人口が減って空き家が増えた・・・

「函館に来た時には何もない街だなと思ってつまらなかったですね。」


こう語るのは、5年前に進学を機に石川県金沢市から函館市にやってきた大学生の下沢杏奈さん23歳。

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実は函館市、観光地としては名高い一方で人口減少が大きな課題です。
2019年の減少数は3640人と道内最多。全国の市区の中でも7番目の多さです。
中でも深刻なのが、函館山の麓にある旧市街「西部地区」の空き家問題です。

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西部地区の物件を取り扱う箱バル不動産の蒲生寛之代表は

「(西部地区は)観光地函館の中でも一番観光客が訪れるエリアではあるんですけれども
一方で少子高齢化や空き家率の高さも一番目立つエリアになってしまっている。」

と語ります。

そんな町にある築108年の空き家をリノベ!住んでみた!

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何とも可愛らしい外観のこちらの建物。
名前は「わらじ荘」です。

1913年に建てられ、米穀店「野口梅吉商店」などに使われた後、空き家になっていました。
そこに目を付けたのが冒頭にも登場した大学生の下沢杏奈さんです。

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「去年9月に渡島総合振興局の学生アパートを作ろうというワークショップの合宿に参加して、
その日の2泊3日の夜に“住もう!”って決めて週末に掃除をしてから始まった。」

と楽しそうに話す杏奈さん。
この時、物件に選んだのが以前、道南スギを使って床板を貼るなど修繕に関わっていたわらじ荘でした。
思い立ったら即行動。この辺りは大学生ならではです。
すぐに持ち主の了解を取り付け、去年10月から3人で共同生活を始めました。

子供たちに本をお届ける春のサンタさんに、飲食店までオープン!!

共同生活を始めたころからコンセプトにしているのは
「学生が学校から出て地域とゆるくつながる場所」にすること。

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今年の春には新型コロナウイルスで学校が休校になった子供たちに
わらじ荘が集めた本を届けるプロジェクトを行い、函館でわらじ荘が知られるきっかけになりました。

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さらに緊急事態宣言が解除された6月にはわらじ荘のメンバーの1人、
大学生の岩崎豪くんが1階に「多国籍居酒屋カルぺ」をオープン。
世界14か国を旅して学んだ各地の家庭料理を振る舞っています。

わらじ荘は定員オーバー 2つ目も作っちゃえ!

どんどん広がりを見せていくわらじ荘の活動。
入居したいという若者も集まり始め、ついに今年8月に2軒目の「荘」となる「みなも荘」が誕生!

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旅館として使われていた築100年を超える建物を杏奈さんが見つけて
大家さんに直談判して借りたというので驚きです・・・
わらじ荘と同じように道南スギを使って床板を1枚1枚丁寧に貼って修繕していきます。
箱バル不動産の蒲生代表は

「今空き家があったり、人が多くいない状況は逆にいうとまだ“余白がある”状況になるので、
それに関してはポジティブな流れが来ているんじゃないかなと思う。」

と西部地区だからこそ多くの可能性が広がっているのではないかと指摘します。

「まちの余白」を上手く活用して函館にできた「荘」という新しい暮らしのカタチ。
入居できるのは原則学生で家賃は月2万5千円からです。

札幌から引っ越して来たという大学生の姿も・・・

「場所というよりは人に惹かれたという方が大きい」

と語る高木桂佑くん23歳は
杏奈さんと知り合い就職をやめて札幌から引っ越してきた歌手を目指す大学生です。

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「同世代でこんなに熱量がある活動って今までにあんまり見たことがなくて
全部自分たちから発信していく活動がすごく自分にとってもわくわくする感情がそそられる。」

夢に向かってネット全盛の時代にリアルな世界でお互いに刺激し合いながら挑戦を続ける学生たち。

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そんな学生たちの様子を町の人たちは

外から来た若者なので古民家の良さというか、
“いいじゃん” “カッコいいじゃん”というのが素直にピン!ときたのかもしれない。」

と話します。
今まで若い世代が少なかった函館・西部地区に新たな波が押し寄せています。


【取材後記】

私がわらじ荘に出会ったのは今年3月、コロナ禍で休校中の子供達に本を届けるプロジェクトの取材でした。それから度々わらじ荘には足を運んでいますが、行く度に新しい「荘民」が増え、ワクワクする面白いことを企てていて何か人を引きつける力をもった独特な空間だなと感じています。もちろん学生だけの力ではできることには限りがあります。「荘」の活動を支えている最大のサポーターは地域の人たちです。物件を快く貸してくれる大家さんに、いらなくなった家電をくれる人、陰から様子を見守りながらちょっとした助言を与える人などなど、たくさんの地域の人の協力があってこそ成り立っている場所だと感じています。わらじ荘の最大の武器は「地域と関わり、巻き込むチカラ」なのかもしれません。

★★気になった方はこちらから★★
わらじ荘公式ホームページ https://www.warajisou.com/

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この記事を書いたのは

HTB報道部記者・喜多和也

映画「しあわせのパン」の暮らしに憧れて北海道に来たパン好き記者。パンシェルジュ。

2021年11月まで函館駐在で看護学院パワハラ問題などを取材。

https://www.htb.co.jp/news/harassment/

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