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元島民焦り「忘れられてしまうのでは」 新型コロナで停滞の北方領土問題

 新型コロナウイルスの影響は北方領土問題にも及んでいます。日ロ首脳会談は2019年9月を最後に行われておらず、ビザなし交流などの四島交流事業も全て中止になりました。また領土問題を啓発する集会も中止が相次いでいます。
 「北方領土問題が忘れられてしまうのではないか」。そんな思いを持つ元島民や関係者を取材しました。

鈴木知事「あくまで緊急的措置」上空から慰霊

 上空慰霊はビザなし交流などが新型コロナウイルスの影響で全て中止となったことを受けて初めて行われました。元島民らは道東の中標津空港からチャーター機に乗り込み、知床半島から根室半島にかけての沿岸を約1時間飛行しました。元島民らは国後島や歯舞群島を望みながら、上空から先祖に手を合わせました。
 色丹島出身の得能宏さん (86)は「上空から見て我がふるさと北方領土は立派な島だと改めて分かった。来年は何としても四島に行かないといけないと実感した」と話しました。
 鈴木知事はコロナ渦においても北方領土における墓参事業の実施は必要という認識を示したうえで、今回の上空慰霊はあくまで今年限りの緊急措置であると述べました。来年は感染対策を徹底し、現地での墓参が実施できるよう国に働きかけることにしています。

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日ロ共同経済活動の進展は?

 2020年3月、納沙布岬の近くに「根室市栽培漁業研究センター」が完成しました。この施設は北方四島での日ロ共同経済活動の一つとして合意しているウニの養殖事業の拠点施設です。7月、大きさ2ミリほどの稚ウニがいけすに入れられました。
 しかし日ロ共同経済活動の先行きは不透明です。そこで根室市は施設を有効活用するため、すでに花咲ガニやホッカイシマエビなどを育てていて、資源の保護増殖事業や研究を進めています。
 共同経済活動について、2019年は観光ツアーやゴミ処理の専門家視察などが行われましたが、2020年に入って目立った進展は見られません。

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菅新総理就任に元島民「毅然と対峙を」

 ロシアのプーチン大統領と27回も首脳会談を行った安倍晋三総理(当時)が突然辞任したことについて、元島民からは落胆の声が上がりました。「領土問題の解決には安倍総理しかいない」という認識があったからです。 
 後任の菅義偉総理は政権発足後、9月にプーチン大統領と電話会談しました。「北方領土問題を次の世代に先送りさせず終止符を打ちたい、こうした旨を申し上げた」(菅総理)。電話会談では、事実上、歯舞群島と色丹島の2島返還を目指す日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を進める方針を確認しました。
 国後島出身で千島連盟根室支部長の宮谷内亮一さん(77)は「(菅総理には領土問題が)戦後の未解決の問題ということをしっかりと肝に銘じて、プーチン大統領に毅然と対峙してほしい」と話しています。

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沖縄北方担当大臣に河野太郎氏就任

 菅内閣で行政改革担当大臣に就任した河野太郎大臣は沖縄北方担当大臣を兼任しています。9月27日に道東の中標津町や根室市を訪れ、北方領土の元島民らと意見交換したほか、納沙布岬の視察ではわずか3.7km先にある歯舞群島の一つ貝殻島が綺麗に見えました。
 河野大臣は安倍内閣で外務大臣や防衛大臣を務め、日ロ交渉にも携わってきました。新たに就任した沖縄北方担当大臣は外交の担当ではありませんが、元島民らは河野大臣の発信力が日本国内の領土問題啓発につながるのではないかと期待しています。
 河野大臣もSNSを活用した啓発に意欲を示し、視察中に早速自分の携帯電話で撮影した写真をフォロワーが200万人を超える自身のSNSに投稿し続けていました。若い世代に北方領土問題を認識してもらう必要があると語りました。

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来年、北方墓参・自由訪問はできるのか?

 新型コロナの影響で毎年12月に東京で行われている領土問題を啓発するアピール行進が中止となりました。こうした集会やビザなし交流などの中止によって領土問題を啓発する機会が失われているほか、報道の機会も減っています。元島民や関係者は北方領土問題が忘れられてしまうのではないかと心配しています。
 そこで元島民らは領土問題啓発と先祖慰霊を目的に、来年度の北方墓参・自由訪問の実現を強く求めています。ロシア国内でも新型コロナの感染拡大が収まらないなか、来年度の実施可否は外交交渉に委ねるしかありません。
 それでも実現に向けて、道や元島民らは北方四島への移動手段で使われる船「えとぴりか」の改修案や感染対策を検討しています。また元島民らは航空機やヘリコプターを活用した墓参の実現も要望しています。
 歯舞群島多楽島出身で千島連盟副理事長の河田弘登志さん(86)は「高齢で焦りもある。元気なうちに若い人を連れて行って、場所を教えておかないと墓の位置が分からなくなってしまう。歯舞群島や色丹島であれば納沙布岬からヘリコプターで行けるようになればいい」と話しています。

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この記事を書いたのは

HTB釧路駐在記者・佐藤裕樹

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