1個150円の高級卵 理由は愛と飼育法にあった!

皆さんはスーパーで卵を買う時、いくらなら買いますか?6個入りで100円でしょうか?200円と言われたらちょっと高く感じますか?でも、世の中には1個150円の卵が存在するんです。
「高すぎる!!」と思ったあなたには、ぜひこの記事を読んでニワトリのこと、卵のことを知っていただけると嬉しく思います。ニワトリ愛にあふれる男性のお話です。

<HTB「イチオシ!!」2020年11月9日放送>

暗闇の中に現れた男性の正体は・・・

辺りも真っ暗な午前5時。北海道南部の七飯町の畑の中に停まる1台の車。中から出てきたのは1人の男性です。

01.jpg

「キツネとかも来るかもしれないので心配でここで寝ている」と語るのは小野養鶏場代表の小野美孝さん43歳。1棟のビニールハウスで「岡崎おうはん」という純国産の貴重なニワトリ約300羽を育てています。

02.jpg

小野さんの卵だから「おのたま」。大きな卵黄は弾力があり箸でつまんでも割れません。お値段は1個150円。その秘密は後ほど説明するとして…

03.jpg

実は小野さんは今年の春まで中学校や障害のある子供たちが通う特別支援学校で教師をしていました。養鶏に目覚めたきっかけは7年ほど前に食べた平飼いの卵です。味は濃くて美味しいのにえぐみがなく、後味がすっきりしている卵に衝撃を覚え、自分でも生産をしてみたいという思いに駆られたんだそうです。その後は休みの日に平飼いの養鶏場に見学に行くなど独学でニワトリの育て方を学び、今年の春ついに念願の養鶏を始めました。

04.jpg

おのたまの極意その1 風にこだわるべし

05.jpg

「鶏にとって一番のごちそうは北風と南風」だと語る小野さん。小野さんの養鶏場は駒ヶ岳からの北風と津軽海峡からの南風がぶつかる場所にあり、ビニールハウスの中に常に新鮮な空気を取り入れることができます。朝から天気を見ながら何度も風の取り込む量を調整していて休む暇は1日たりともありません。

おのたまの極意その2 土の上でストレスなく育てるべし

06.jpg

小野さんが実践するのは、ニワトリを土の上に放して育てる「平飼い」。日本の養鶏場で行っているのは、わずか5%ほどです。(※IEC統計を基にした鶏鳴新聞社まとめ)
一方で、私たちがイメージするかごの中で複数のニワトリを一緒に育てる育て方は「ケージ飼い」と呼ばれ、衛生管理がしやすく、効率も良いため、安い卵を生産することができますが、ニワトリにとってはストレスが大きく、病気になりやすいと言われています。

小野さんはケージ飼いについて「ストレスがたまるのでニワトリ同士突くことがあり、それを防ぐために少しかわいそうだがくちばしの先を切る処置をするところもある。そうすると物はついばめなくなってしまう。」と話し、ニワトリの生命を尊重できる平飼いを選択しているといいます。

07.jpg

おのたまの極意その3 エサは地元素材にこだわるべし

08.jpg

私たちの口の中に入る卵ですが、その卵を産むニワトリがどんなものを食べているのか想像したことはありますか?小野養鶏場ではエサにもこだわりを持ってニワトリを育てています。
養鶏でよく使われる配合飼料や病気を防ぐワクチンは一切与えていません。エサにしているのは季節の野菜をはじめ、米に大豆、ハト麦、昆布や魚介、キノコ、チーズ、バターなどなど人間でも食べられる物ばかりです。

09.jpg

こうして育ったニワトリから産まれるのが1個150円のおのたま。小野さんは「コンビニで150円のお茶を買う時に何も違和感はないが、卵が150円と言われると驚く。でもニワトリのことを考えて自然な環境で育てていると決して高い値段ではない。」と語ります。

前の仕事「福祉」と今の仕事「農業」をマッチング

2020年11月1日にオープンした小野養鶏場の直営店「里山楽房」。看板商品は「コタプリン」です。

10.jpg

実はこのプリン、特別支援学校時代の教え子・関口虎汰郎くんと一緒に、1年かけて開発したんです。虎汰郎くんだから「コタプリン」。脳性麻痺の障害がある虎汰郎くんのように、食べ物を飲み込みづらい人でもおいしく食べられるように柔らかさと食べやすさにこだわって試行錯誤しました。オープン初日から大人気です。

11.jpg

教師を辞め、養鶏を始め、店も出した小野さん。「本当に目をキラキラと輝かせていて、好きなことをしている方が輝いているので応援出来たらいいな」と語るのは妻の恵さんです。今も特別支援学校で教師をしていて小野さんの一番の理解者です。

ニワトリに愛情を注ぎ大切に育てるからこそ産まれる1個150円の卵。スーパーで卵を手に取る時、ちょっとだけニワトリのこと、生産者のことを考えてみてはいかがでしょうか。

12.jpg

1

この記事を書いたのは

HTB・喜多和也

映画「しあわせのパン」の暮らしに憧れて北海道に来たパン好き記者。パンシェルジュ。

報道部記者として看護学院パワハラ問題や手話をテーマにしたドキュメンタリーを制作。
2024年5月~社会情報部イチモニ!ディレクター


https://www.htb.co.jp/news/harassment/

合わせて読みたい