深刻な不漁が続くサンマの資源管理について話し合う国際会議が開かれました。加盟する8つの国と地域全体の漁獲量の上限を現行から40%削減することで合意しました。サンマ資源を守るために大きな前進と言えそうです。
一方で漁獲上限による食卓への影響はどうなるのでしょうか
サンマの資源管理を世界で話し合う
近年、北太平洋の公海で中国や台湾などがサンマの漁獲量を増やしている一方、日本は2年連続で水揚げ量が過去最低を記録しています。
こうしたなか日本や中国などサンマ漁を行う8つの国と地域が参加する国際会議が開かれ、サンマの資源管理について話し合われました。この北太平洋漁業委員会(NPFC)年次会合は新型コロナウイルスの影響で開催時期が遅れたほか、オンラインでの実施となりました。
そのなかで2021年と2022年の漁獲上限を現行の55万6250トンから40%削減し、33万3750トンとすることで合意しました。
日本の代表として交渉を担当した農林水産省大臣官房付の太田愼吾代表団長は「40%削減できたことは一定の成果だが、この数字でサンマの持続的利用が可能かというとそこまで言い切れない」と話しました。
日本が求めている各国・地域ごとの漁獲枠の制定もなかったことから、メディアの論調は合意を冷静に見る目が多かった印象です。
実は効果的な合意だった!?
NPFCにおけるこれまでの合意で、各国・地域はそれぞれ2018年のサンマ漁獲量を上回らないことで合意していました。2018年は近年では日本でサンマが豊漁だった年で、中国の漁獲高が日本を上回る前年です。(台湾は2014年に逆転)
加えて今回の会合では、新たに各国・地域それぞれの漁獲枠を「2018年の漁獲量の4割減」にすることで合意しました。適用するのは2021年と2022年です。
これによって例えば中国は9万0365トン(2018年実績)から5万4219トン、台湾は18万0466トン(2018年実績)から10万8280トンに限定されます。水産庁によりますと、現時点ではこれが各国・地域ごとの漁獲枠に等しいということです。ここ2年は新たな漁獲枠を上回る漁獲量はありませんが、これで仮に豊漁になったとしても公海における中国や台湾などの乱獲防止に有効な合意となりました。
一方沿岸国の日本とロシアはEEZ内でのサンマの漁獲も行っているため、その分は一律40%削減の対象とはなりません。今回の合意で日本が漁獲できるサンマの量は最大で約16万トンです。日本は2014年に22万8000トンを記録した以降は10万トン前後で推移していて、2020年は3万トンを下回りました。水産庁は「現時点では合意した漁獲上限による日本の食卓への悪影響はない」としています。
漁業関係者「期待と不安」
根室市の漁業関係者の反応です。サンマ漁船の船主である木根繁さんは「サンマ資源が減少して、2020年のような水揚げになったことには大変な危機感を持っていた。それぞれの国・地域がサンマ資源が減少しているから保護しないといけないと思い合意したことには大きな意義を持っている」と話しています。一方で「各国・地域が漁獲上限を本当に守るのだろうか」と不安もこぼしました。
これに対し水産庁は毎週各国・地域がNPFC本部にサンマの漁獲量を報告することになっていて、合意したルールが守られないということは想定していないとしています。