完成した「Aフレームキャビン」室内と大石さん
SDGs未来都市 北海道下川町で目指すユメ
下川町内在住の大石陽介さん(33)が、地域の魅力を詰め込んだ「森の宿」開業を目指して、トドマツの地域材を使った三角型の移動式客室用ハウス「Aフレームキャビン」を製作。五味温泉体験の森・ビオトープ前に設置し、運用に向けた準備を進めている。
大石さんは静岡県出身。生き方を見直し、今しかできない、やりたいことをしようと、昨年4月に起業型地域おこし協力隊「シモカワベアーズ」の制度を活用し、妻や子どもと下川へ移住した。
森の宿では、森林豊かな下川町ならではの美しい景色を切り取れる場所で、地元産の精油、ハーブ、薬膳茶、木工品などを活用し、そこにいながら、地域の魅力を味わえる空間を目指す。昨年8月から始めた「ぐるっとしもかわ」という町内ガイドと合わせ、ニーズに応じた下川の旅を提供していく考えだ。
宿泊施設は、状況に応じて移設できるものを模索した。けん引するためのシステムはコストが掛かるため、トラックで積載移動可能なものとし、自分で建てやすく、積雪もしづらい構造の三角型住居に着目。
冬期に建築しようと、昨年9月から建築基準法や海外の三角型の建築物の事例を調べ、地元の工務店やAフレームに特化した建築家にも相談しながら図面を作成。町内の製材業者に相談し、トドマツなどの地域材を中心に材を調達。外壁材は森林組合で木酢液につけ込んで防腐加工してもらうなど、下川町らしさを心掛け、自然塗料、健康や環境に優しい材料にもこだわった。
町内の倉庫を借り、今年1月から作業を始め、試行錯誤を繰り返しながら本格的な建築を自分で行った。「目に見えない建物の構造を知ることができた。ドアを開けた瞬間、別世界が広がるように、外は暗く、内は明るい色で仕上げた」と言う。移動式住居はデッキを除き、高さ330センチ、幅240センチ、奥行き455センチ。重さ1・6トンになった。 体験の森ビオトープ前に移動を終えた「Aフレームキャビン」
地域住民12人の力を借りて、倉庫から運び出した後、トラックに積載し、五味温泉体験の森ビオトープ前に移動、窓ガラスをはめ込み仕上げた。三角型の窓からは美しい森林の景色が広がる。
大石さんは「下川ならではの地域の支えがあってできた。建物が完成して、今後は簡易的なキッチンやベッドなど宿泊できるよう準備したい。7月末にお試し利用の機会を設けたい。冬前には小型まきストーブも入れたい」などと話す。
(2021.06.29名寄新聞に掲載されました)