看護師になりたかった…④ 学院長が初めて語った実態とは…

HTBで継続取材してお伝えしている北海道立高等看護学院を巡る教師によるパワーハラスメント問題。最初の訴えから1年あまり、1012日にようやく第3者調査委員会が52件のハラスメントを認定し、11人の教師が関与したという調査結果を取りまとめました。これを受け、これまで調査中だとして取材に応じてこなかった学院トップの学院長がテレビの取材に初めて応じ、胸の内を語りました。

<2021年10月19日放送「イチオシ!!」>

学生たちに何度も繰り返し謝罪

「パワハラ認定については重く受け止めている。まずは学生の皆様、保護者の皆様、そして市町村自治体等の関係者の皆様、地域の皆様に対して多大なご迷惑とご負担、そして混乱を招き申し訳ないと思う。重ねてお詫び申し上げる。申し訳ありませんでした。」

HTBの取材に応じた北海道立江差高等看護学院の伊東則彦学院長。学生たちへの謝罪の言葉を繰り返しました。

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「今年3月に初めて分かった」

今回、第3者調査委員会が問題の起きた原因の1つとして挙げたのが、管理職等の責任感の欠如です。伊東学院長は江差保健所の所長も兼務していて、新型コロナへの対応にも追われる中、学院にいたのは週に3日、1日2~3時間程度でした。パワハラ行為については「自分が学院に入ると教師たちは学生を教職員室から出す。だから実際の現場というのは見たことがないし分からなかった。自分に訴えてくる学生がいて今年3月に初めて分かった」と語ります。しかし、去年9月に北海道にはパワハラについて匿名の苦情が寄せられています。これについて学院長は「把握していなかった。北海道庁から自分への連絡はなかった。」と明かしました。

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さらに、第3者調査委員会は副学院長に事実上権限が集中し独人的な経営や運営がみられ、チームとしての教育の乏しさがあったとも指摘しています。これについては「決裁権は自分にある。しかし、非常勤で常駐しているわけではないため自分の意見を出すのも難しさはあった。副学院長とは江差の前の紋別市の高等看護学院でも一緒だったが、そこでのパワハラについても見逃して見つけることができず、自分の落ち度だと思っている」と反省を述べました。

異常な退学者数…「いま思うと尋常ではないほど多い」

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これはHTBが北海道に開示請求をして入手した北海道立江差高等看護学院の在籍者数などの資料です。例えば2013年度(H25)の入学者は30人。それに対して3年後の2015年度(H27)に卒業をしているのは17人だけ。退学や留年、休学の人数は個人情報だとして開示されなかったため正確なことは分かりませんが、単純に考えても13人はストレートで卒業できなかったことが分かります。こうした異常な状態は改善されることがないまま、これまで続いています。

学院長は「いま考えると休学者とか退学者が異常に、尋常ではないほど多く自分も見逃していたので反省点だ。赤点の出し方とか実習の採点は厳しいかなと思っていたが、教師の意向で厳しくやっているのかと思い、当時は仕方ないと思いながらもちょっと極端だなとは感じていた。」と語りました。さらに「医療系の大学、専門学校はやはり厳しい。ただ学生に対してどのくらい厳しく当たるのかは江差高等看護学院の場合は極端すぎた。もちろん厳しさは必要だが、学生の育成の観点と選別の観点がある。その育てるという観点が不足していた。むしろそっちの方に重きを置くべきだった。」と医療教育特有の雰囲気も影響していたと言います。

必要なのは教師と学生の信頼関係

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10月からは後期の授業が始まり、休学をしていた一部の学生もリモートなどで復学をしている中、学院長はこれまでの反省を生かし、毎日学院に出向き教師たちともコミュニケーションをとっていると言います。学院長は「看護学生にとっては看護師免許を取るというのが一番なので、安心できる学習環境を一刻も早く作り改善していきたい。そのためにも教師と看護学生の信頼関係が大事だ」と述べ、自身やパワハラに関与した教師については懲戒処分や異動などが必要だとの見解を示しました。

北海道は10月中にも学生や保護者に説明を行う予定ですが、一刻も早い学院の正常化が求められます。

<テレメンタリー2021 「看護師になりたかった…~命の救い手 絶たれた未来~」>

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この記事を書いたのは

HTB報道部記者・喜多和也

映画「しあわせのパン」の暮らしに憧れて北海道に来たパン好き記者。パンシェルジュ。

2021年11月まで函館駐在で看護学院パワハラ問題などを取材。

https://www.htb.co.jp/news/harassment/

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