特集はHTBが取材を続けている北海道立江差高等看護学院のパワハラ自殺問題です。
第三者委員会が自殺との因果関係を認めているにも関わらず道が自殺への賠償には応じない考えを示し、亡くなった学生の母親は道の対応に不信感を募らせています。
「自殺との因果関係を前提とした賠償には応じない」
■自殺した学生の母:
「勝手に死んだわけではないんです。あなたたち(道)のせいなんです。その責任から一切逃れようとするのは違いませんか。」
自殺した学生の母親
2021年、複数の教師による学生への30件以上のパワハラが認定された道立江差高等看護学院。
■被害を受けた元学生:
「指導中に先生が持っているペンでぶっ刺すぞだったり実習中にあなたはガキンチョですかとか」2019年9月には、男子学生が自殺しました。
当時、具体的な調査を行っていなかった道。
遺族の要請を受け、道が設置した第三者委員会は3月、男子学生に対する3人の教師による4件のパワハラを認定し、自殺との「相当因果関係」が認められると結論付けました。
■第三者調査委・須田布美子座長:
「ハラスメントと認定した4件については全て自死に関連しているというふうに考えております。」しかし…。
道の第三者委員会は自殺との「相当因果関係」を認める(今年3月)
遺族側によりますと10月23日に道の代理人から電話で、自殺との因果関係を前提とした賠償には応じない考えを示されたと言います。
補償についても請求額の10分の1にも満たない金額を提示されました。
■自殺した学生の母:
「もうなんだろう。頭が真っ白にしかなってない。そこ(因果関係)も含めてだったのではないですかって。私はずっとそこも含めてやってきたことでしたから。」
27日、このことについて問われた鈴木知事は・・・
会見で「因果関係」の質問 自ら明言を避ける知事
■鈴木直道北海道知事:
「パワハラと自死に関する法的な因果関係の解釈についても、今示談交渉中の案件でありますので、コメントについては控えたいと思います。」
として、自殺との因果関係について明言を避けました。
■道の担当者(当時):
「心よりおわびを申し上げます。誠に申しわけございませんでした。」
遺族に謝罪する北海道の担当者(23年5月)
第三者委員会の調査結果を受けて5月に遺族に謝罪をした道の担当者。
知事も会見で謝罪の言葉を述べています。
■鈴木知事(5月):
「ご遺族に対して、深くお詫びを申し上げますとともに、お亡くなりになられた学生に対して、心より哀悼の意を表します。」
10月27日、この謝罪の意味について問われると・・・
■鈴木知事(10月27日):
「教員によるパワハラが認定されました。このことや監督責任を有する道にも問題があるとされました。このことを重く受けとめた上で御遺族の方に謝罪をさせていただいたところです。」ここでも自殺への言及を避けた知事。
■HTB記者:
「Qパワハラが自殺に関係しているとは考えていない。それについては謝っていないという理解でよろしいんでしょうか。」
■鈴木知事:
「報告書の御説明につきましては、後ほど担当からさせていただきたいと思います。」
その報告書を受けて謝罪を申し上げたこういうことであります。
■HTB記者:
「報告書にはパワーハラスメントが認定されて、その全てが自殺につながった。自殺と相当因果関係があると書かれていたが、それについて謝罪をしたということではないんですか。」
■司会(道広報幹部):「同じ内容の質問は…」
■鈴木知事:「そこは(担当部局から)説明をしていただければと思います。」
■HTB記者:「あまり答えになっていない気がするんですけれども。」
■鈴木知事:「(担当部局から)説明をさせていただきます。」
■HTB記者:「自殺との因果関係があると書かれていると思うんですが、それを受けてそれも含めての謝罪をされたということか?」
■鈴木知事:「そこを今(担当部局が)説明しますので」自らの謝罪の意味を問われたにも関わらず、回答を担当部局に委ねました。
10月27日の会見で道知事は終始、自殺についての言及を避けた
知事が繰り返してきた「誠意」とは…自殺した学生の母「逆に踏みにじられているとしか…」
■自殺した学生の母:
「いまさら何を言っているんだろうとしか思わない。あの学校のいままでの体制でパワハラがあったからうちの子は最終的に亡くなったんだという一連が認められた、そのことに対しての謝罪ということだったはずなのに、急に本当に何言っているかが分からないですね…。」
こうした一連の道の対応に、行政問題に詳しい専門家は…。
■札幌大学・武岡明子教授:
「開催要領では客観性を確保する観点から第三者調査委員会を設置するとあり、その報告書を踏まえて5月に謝罪をしている。それなのに今になって賠償責任を負えないと態度を変えるのはちょっと筋が通らないという印象を受けます。報告書というのは最大限尊重するべきだと思いますし、もしそれに反するようなことを行うのであればしっかりと説明する責任があると考えます。」
では一体なぜ、道は自殺の賠償に応じない考えを示したのでしょうか。
札幌大学・武岡明子教授
■道の担当者:
「(調査書には)直ちに行為者や管理者の民事的な責任を裏づけるものではないと記載されているところでこういったところも踏まえて交渉に当たっている。」
道が重視しているのは、調査書のあとがきに当たる「調査を終えるにあたって」の項目で第三者委員会の1人が書いている文言です。
当事者がすでに亡くなっていたことなどから直接の証拠を得ることができず、調査結果が民事上の責任を裏付けるものではないと書かれています。
道の関係者は、「金額も大きく変わってくるため道は自殺の賠償責任はないと解釈しているんだろう。」としています。
突然息子を失ってから4年。ようやく死の真相が分かり、気持ちの整理がつき始めていた矢先、道から手のひらを返された母親。
■自殺した学生の母:
「因果関係があって亡くなったというのをちゃんとそこを含めて謝罪していたはずなんですけれどね最初の時。そこを急に認められないというのは本当に納得できないので、認めさせるまでは本当に頑張ります。」
■鈴木知事(5月11日):「誠意をもって対応していく」
■鈴木知事(5月17日):「今後も誠意を持って」
■鈴木知事(6月9日):「丁寧かつ誠実に誠意を持って対応していきたい」
知事はこれまで会見でこの問題を聞かれるたびに、誠意をもって対応すると繰り返してきました。
■自殺した学生の母:
「誠意なんかないですよ。一切。逆に踏みにじられているとしか言いようがないじゃないですか。何を持って誠意なのかがもうわからない。責任逃れだけはしないでください。トップなんか特にですね。」