【裁判ルポ】「死刑」か「無期拘禁刑」ーー被告の発言に裁判長が「理解ができない」 江別大学生暴行死事件

画像①川村被告のスケッチ_1.jpg

「あなたの言っていることは理解ができないんだけど」

裁判長からの言葉に川村葉音被告はまっすぐ前を向いたまま黙り込んだ。

それは質問の意味を理解しようと、答えを探しているようにも見えた。

彼らはどこまで理解しているのだろうか? 私がここまで裁判を傍聴していて疑問に思ったことだ。

画像②江別市の現場.jpg

死刑か無期拘禁刑が原則の「強盗致死罪」 「金品をとらせれば終わると思っていた」

2024年、江別市の公園で大学生の長谷知哉(はせ・ともや)さんが激しい暴行を受けて死亡した事件。

長谷さんの交際相手、八木原亜麻(やぎはら・あま)被告、友人の川村葉音(かわむら・はおと)被告、瀧澤海裕(たきざわ・かいと)被告、川口侑斗(かわぐち・ゆうと)被告、当時16歳と17歳の少年ら合わせて6人は長谷さんからクレジットカードなどを奪い、暴行を加えて死亡させた強盗致死などの罪に問われている。

先月25日から川村被告・瀧澤被告・当時16歳だった少年の裁判員裁判が始まった。

3人は起訴内容を認めていて、量刑が争点となっている。

強盗致死罪は原則、死刑か無期拘禁刑だ。

画像③tiktok.jpg

検察側は長谷さんの死因は全身の血液の20から30パーセントが流れ出たことによる外傷性ショックだったと指摘した上で「長谷さんの服に指紋が残らないよう全裸にした上で、たばこの火を押し付けるなど、暴行は2時間に及ぶ圧倒的長時間で執拗なものだった」と主張。一方、弁護側は3人は主犯格とされる川口被告に同調して暴行をしたと主張している。

川村被告の弁護士「川村さんの犯行は財物をとる目的ではない。目の前のことを何も考えずに行動していただけ。川口(被告)に金品をとらせたら終わると思っていた」

明らかになる事件当日の動き「たぶんボクシングをしている」

そもそも事件の背景にあったのは長谷さんと八木原被告との間での「交際関係」のもつれだ。

長谷さんは道外の会社に就職することを考えていて、八木原被告に1年後に別れることを告げた。

八木原被告がこのことを川村被告に相談したことがやがて事件へと繋がっていく。

裁判では事件当日の動きが詳しく明かされていった。

川村被告は、川口被告ら少年とともに、飛行機を見るために新千歳空港で遊んでいた。到着したときには展望デッキは閉まっていて、窓ガラスから空を飛ぶ飛行機を眺めていたという。そこへ川村被告のスマホに八木原被告から電話がきた。

電話をしているうちに川村被告は苛立ちを見せていった。川口被告はそれを見て楽しい雰囲気を「壊された」と感じ、川村被告から電話を受け取った。そこから聞こえてきたのは八木原被告ではなく、男の人の声―――長谷さんだった。

<川口被告の供述調書>

雰囲気を壊されていると感じたので高圧的な態度で話した。

「何やったの?」と聞くと「1年以内で別れる話」と言われたので、「は?」と言った。

(中略)被害者にどこにいるのか聞くと、ローソンということだったので「ローソンね、そこに行くから、なにもしないから」と言った。(八木原)亜麻の言い分も聞きたいし、二人の別れ話を解決したいと思っていた。

川村被告ら5人は車で新千歳空港から江別へと向かうことになった。川口被告は車の中で川村被告に長谷さんの特徴を尋ねることになる。

川村被告「どんなやつ?に対しては(川口)侑斗より身長低いと答えて、年齢は?については八木原さんから年上だと聞いていたので「21、22ぐらい」と答え、どんなやつに?に対しては「たぶんボクシングをしている」と答えました」

弁護士「実際に被害者(長谷さん)はボクシングをしていましたか?」

川村被告「いいえ」

弁護士「なぜ川口にそれを言ったんですか」

川村被告「川口くんはボクシング経験があるので、共通の趣味で会ったことがある人かもと思ったからです」

川口被告はこれを聞いて、江別市に着いてから公園でシャドーボクシングをして体を温めることとなる。

画像④江別市の現場.jpg

そして始まる止まらない暴力 

公園に着いてから川口被告は長谷さんに別れる理由を聞き始めたが、長谷さんの言い分を理解できず暴力を奮い始めた。

検察官「なぜ暴力が始まったんでしょうか」

川村被告「突然始まった。暴力を奮う意味は?とは思っていました」

検察官「止めようと思わなかった?」

川村被告「何も考えていなかったです。暴力が始まってびっくりして後ろに下がってからは八木原さんに話しかけられて、そこから話していた」

検察官「止めようとは思わなかった?」

川村被告「何も考えていませんでした」

6分間の暴行を続けた後、長谷さんの血が川口被告の服についたことに因縁をつけて、川口被告が金品の要求をし始める。そこに川村被告も「うちもつけられたかもしれない」と同調した。

裁判長「あなたは(八木原被告と長谷さんが)交際を続けたいと願うのが一番では?」

川村被告「はい」

裁判長「あなたはどうしようとしていたのですか?」

川村被告「事件の日は………公園に着いたときは解決しようと……」

裁判長「だったら(交際を続けると願うための)具体的な行動をしていたのではないでしょうか?」

川村被告「その……していません」

裁判長「こんなに怖い人と付き合っていると分かったら付き合いたいと思いませんよね?」

川村被告「はい」

裁判長「あなたが言っていることは理解できないんだけど」

川村被告「………」

裁判長「思っていることと行動していること矛盾していますよね?」

長谷さんは暴行の最中、現金とクレジットカード、キャッシュカードを川村被告らに奪われた。被告らはクレジットカードを使って大量のタバコなどを購入した。

画像⑤川口被告が拒否した証言台.jpg

廷内に広がる動揺の声 「宣誓しません」

裁判では異例の出来事もあった。

証人として川口被告も出廷したときのことだ。

6人の中でも、川口被告については札幌家庭裁判所が少年審判の中で「率先して暴行を加え、終始犯行を主導していた」などと「主犯格」として指摘している。

スーツ姿の川口被告は証言台の前に立った。

裁判長「宣誓用紙を手に持って読み上げてください」

川口被告「宣誓はしません」

裁判長「それはどういうことですか?」

川口被告「自分の裁判がもう少しで始まるので、そのときに証言します。ただやってしまったことは本当に申し訳ございませんでした」

裁判長から処罰される可能性があると説明をされるが、川口被告は力強い声で答えた。

「宣誓はしません」

川口被告が退廷し、裁判は一時中断された。廷内には驚きの声が出て、弁護団も動揺した様子で話し合っていた。

残されていた約20分の動画 廷内に響く遺族の涙声

長谷さんは身の危険を感じていて、スマホで被告らとのやり取りを録音していた。長谷さんが被告らから暴力を受けていたときの音声も残っていて裁判では当該部分のみが再生された。

風を切りながら打たれる拳の音。長谷さんのうめき声。女性の笑い声。鳴りやまない暴力の音が20分にわたって再生された。私は動画を聞きながら正直、息が詰まりそうだった。音声が再生される間、川村被告は険しい表情で画面を見つめていた。

今回の裁判で罪に問われているひとり、瀧澤被告は呆然とした様子で音声を聞いていた。

暴行の中で川口被告は長谷さんからクレジットカードを奪い、その場にいた少年たちにタバコを「買い与える」指示を出していた。

<長谷さんが記録した音声>

川口被告「ワンカートン、ワンカートン、ワンカートン」

瀧澤被告「でかいきたー!」


検察官「なんですかこれ?」

瀧澤被告「喜んだと思います。もらえると思って喜びました」

動画が再生されたとき、検察側の席に座っている遺族から涙をすする声が聞こえてきた。瀧澤被告はそれにも呆然とした様子だった。

瀧澤被告は長谷さんの背中に「ライダーキック」をするなどの暴行をしている。

弁護士「なぜライダーキックをしたんですか?」

瀧澤被告「ライダーキックをすれば笑いに変わると思い、暴力が終わると思いました」

弁護士「どのように蹴りましたか」

瀧澤被告「ライダーキックと言いながら蹴りました」

弁護士「なぜ技名を言うんですか?」

瀧澤被告「ライダーキックということで笑いに変わり暴力が終わると思いました」

弁護士「周りの人の反応は」

瀧澤被告「周りの人達は笑っていました」

罪の重さを彼らはどれほど受け止められているのか? 5日求刑へ

長谷さんはその後、服を脱がされ、ライターで体をあぶられるなどの暴行を受けた。


解剖した医師によると「頭皮から顔まで出血しないところがない」というほどの外傷だったという。

今回裁判を受けている当時16歳だった少年は「川口くんに恩があって逆らえなかった」と答えた。

彼らは自分たちのやったことに対してどれほど罪の重さを理解しているのだろうか。

5日は川村被告に検察側から求刑が出される予定だ。

1

この記事を書いたのは

HTB報道部記者・中川宙大

編集を経て2024年から記者に。
札幌の認可保育園で起きた園児窒息死事故などを取材。機動隊の取材で高い塔から降ろされたことも。