旭川 女子高校生殺人事件から2年 内田梨瑚被告は法廷で何を語ったのか
2026.06.09
傍聴席にいる亡くなった女子高校生の遺族に対し、腰から90度に曲げて深々とおじぎをしてから証言台へ向かった内田梨瑚被告23歳。

初公判から求刑までの8日間、内田被告の表情や話す様子は、場面によって変化している印象だった。
3日間にわたる被告人質問で、内田被告自身の言葉で何を語ったのか。
そして、遺族の悲痛な思いが、果たしてどれだけ内田被告の心に届いたのか。
「Aさんは大きな態度だった」「Aさんが1人で来なければ・・・」内田被告が語ったあの日の記憶
「娘に非があるような言葉も聞こえ、内心反省していないと感じました」
「娘の命を奪ったことを本当に分かっているのでしょうか」
これは、娘の写真を抱きながら、傍聴席から8日間内田被告をじっと見つめていた遺族の言葉だ。
「どうか・・・あいつを・・・!私の娘が望む判決を下してください!!」
法廷で、泣き叫ぶ遺族から震える手で指をさされた内田被告は、表情をぴくりとも動かさず、ただ一点を見つめていた。
内田被告は最後まで“殺意”を認めず、弁護側は亡くなった女子高校生の言動によって事件が起き、さらに進展してしまったと訴えた。
「幼稚園の先生になりたい」わずか17歳で未来を絶たれたAさん
留萌市で、母親と祖父母と暮らしていた当時17歳の女子高校生のAさん。
2024年4月、高校2年生になったばかりの春だった。
子どもが好きで、小学生の頃から幼稚園の先生になることが夢だった。幼い頃から兄が好きだったというAさん。兄が大学に進学し実家を出てからも、お互いにインスタグラムに写真を載せ合うほど仲が良かった。
1年前に離婚し別居中の父親とも、月に2~3回会い、食事や日帰り観光を楽しんでいた。事件の翌日20日には、札幌の保育専門学校のオープンキャンパスへ行く予定で、幼稚園の先生になるという夢に向かって、未来を思い描いていたはずだ。
“反社と関わり”内田被告と事件関係者の出会い
旭川市の内田梨瑚被告23歳。事件当時は21歳で、母親と同じ会社で化粧品販売員として働いていた。高校卒業後、反社会的勢力の人と関わるようになり、彼らとの連絡用のいわゆる“飛ばし携帯”を持ち歩いていた。
内田被告とともに事件に関わったのは、当時19歳の女、当時16歳の少年少女の合わせて3人。
共犯の当時19歳の女と内田被告の出会いは事件の数年前。その後は疎遠が続いたが、事件直前の2024年3月末~4月上旬ごろに再会し、親しくなった。事件の数日前に、女がインスタグラムのストーリーに「何か仕事ありませんか?」と投稿したところ複数人から反応があり、内田被告から「梨瑚の舎弟」とメッセージがあったことをきっかけに、内田被告が女のLINEの登録名を「舎弟」とした。当時19歳の女は、「殺人」、「不同意わいせつ致死」、「監禁」の罪で、去年行われた裁判員裁判で、懲役23年の有罪判決が下され、既に受刑中だ。
また、ともに「監禁」に関わった当時16歳の少年と少女は、監禁の容疑で家庭裁判所に送られたのち、少年は少年院送致され保護処分となり、少女は保護観察処分とされた。
少年は、事件直前の4月上旬~中旬ごろに内田被告と出会い、当時19歳の女とともに内田被告と複数回会っていた。少女も同じく事件直前の4月上旬ごろに出会い、内田被告とは共通の知人とともに食事をしたことがあった程度の関係だった。

「私に殺意はありませんでしたし、橋から落下させていません」約1年ぶりに法廷に立った内田被告
5月25日午前8時すぎ、旭川地裁の前には、一般傍聴席を求めて、23席に対し313人が行列を作った。
午前10時すぎ、高倍率の一般傍聴席を手に入れた一般の人が続々と廷内の傍聴席へと入っていく。当時19歳の共犯の女の裁判員裁判を傍聴してからおよそ1年。当時証人として出廷し、宣誓を拒否して証言しなかった内田被告が、自身の裁判で何を語るのか。私も緊張した気持ちを抱えながら、傍聴席に腰をおろした。
午前10時25分ごろ、傍聴席の左手にある扉から、白いYシャツ姿で黒髪を後ろでひとまとめにしマスクをつけた内田被告が入廷した。廷内の視線が集中する。内田被告は腰から90度に上半身を曲げ、深々と頭を下げて3秒ほどおじぎをし、弁護人2人の隣に着席した。
内田被告は無表情でじっと一点を見つめ、ゆっくりとまばたきを繰り返し、落ち着いている印象だ。
傍聴席には、亡くなったAさんの遺族や、内田被告の母親がいた。Aさんの母親とみられる女性が、Aさんの写真が入った写真たてを両手で握りしめていた。
午前10時半、内田被告の裁判員裁判が開廷した。
裁判長から証言台に立つよう促されると、内田被告はマスクを取って立ち上がり、証言台の手前で立ち止まると、口元を硬く結んだ表情で傍聴席の遺族に向かい、深くゆっくりと頭を下げ、証言台に立った。遺族は内田被告をじっと見つめていた。

【裁判長】名前は?
【内田被告】内田梨瑚です。
内田被告の第一声を聞いて驚いた。1年前、当時19歳の共犯の女の裁判で、証人として出廷したときに比べ、声が小さく、印象がまるで違った。
手続きが終わると、検察官がはじめに起訴状を読み上げる。内田被告の表情は、前を向いているので見えないが、ゆっくりと大きく肩が上下していて、深く呼吸をしながら聞いている様子だった。
【裁判長】今読み上げられた起訴状の内容を聞いて、何か言っておきたいことはありますか?
【内田被告】私に殺意はありませんでしたし、橋から落下させていません。その他は弁護人にお任せします。
内田被告の弁護人は、「殺人」について、殺意がなく殺害の行為はなかったと主張。さらに「不同意わいせつ致死」については、不同意わいせつは認めるものの、死亡したこととの因果関係がないとし、「監禁」についてはおおむね認めるが、監禁が開始した時点に違いがあるとした。
一方で、検察側は、内田被告が橋から突き落としていないとしても、女子高校生が橋から転落したことがそれまでの内田被告らの言動のせいであり、実質的に内田被告らが女子高校生を橋から転落させたと評価できるのであれば、殺人罪の実行行為と言えると主張した。
廷内に響くAさんが助けを求める悲痛な音声 表情を変えない内田被告
裁判では、証拠として、内田被告や共犯の当時19歳の女が撮影したAさんの動画や、現場の一つであるコンビニエンスストアの防犯カメラ映像などが公開されている。
裁判員らには映像を見せ、傍聴席には映像は見えないが音声は聞こえる状況だ。
初公判の5月25日には、2本の映像が流された。
1つ目は、旭川市内の小学校の駐車場で、アスファルトの上で土下座をさせられ謝罪するAさんの様子を撮影した15秒の動画。「無断でストーリーの写真と、あと、舐めた態度を取ったので、すみませんでした」というAさんの声が聞こえた。弁護人の隣に座る内田被告には、傍聴席と同じくその音声が聞こえているが、一点を見つめたまま、表情は変わらない。
2つ目は、コンビニエンスストアの店内外を映した複数の防犯カメラ映像で、店内のトイレから出てきたAさんがレジへと走り、店員に助けを求め、内田被告や当時19歳の共犯の女によって店外へ引きずり出される場面だ。
Aさんがレジへと走っているとみられる“バタバタ”という足音のあとに、「通報してください!」というAさんの声が聞こえ、その後は内田被告らの怒鳴るような「やめれやお前」、「立てや!」、「お前が悪いんだろ!」などの声が廷内に響き渡る。
当時19歳の女の裁判でも同じ場面の映像が流されたが、何度聞いても胸が締め付けられる。傍聴席の遺族は涙をこらえながらすすり泣いていた。Aさんが必死に助けを求めようとして阻まれるこの場面の音声は、記者である私の心にも深く残り続けているのだから、Aさんの遺族の思いを想像すると、その苦しさは計り知れない。
一方で、内田被告はそのような悲痛な音声を聞いても、全く表情が変わらず、手元の資料を見ている様子だった。
対立する主張「梨瑚さんが被害者の子の肩甲骨のあたりを両手のひらで押しました」共犯の女が語った最後の瞬間

裁判3日目の5月27日、証人として出廷したのは受刑中の当時19歳の女。
弁護人の隣に座る内田被告と、証言台に座る女との間には衝立が設置され、互いに顔が見えない状況で、証人尋問が行われた。
【当時19歳の女】梨瑚さんが「欄干の外に立て」と言いました。
【検察官】Aさんはどうしましたか?
【当時19歳の女】手すりに、川の方を向いて座りました。
【検察官】被告人は何と言いましたか?
【当時19歳の女】「手伝って」と言いました。
【検察官】あなたは何をしましたか?
【当時19歳の女】梨瑚さんが被害者の子の右側から、右の二の腕と腰のあたりを押していたので、私も被害者の子の左側から、左の二の腕と腰のあたりを押しました」
【検察官】それでどうなりましたか?
【当時19歳の女】欄干の外に立ちました。
【検察官】Aさんの両手はどうなっていましたか?
【当時19歳の女】腕を左右に広げて、欄干の一番上を掴んでいました。
【検察官】被告人はどうしましたか?
【当時19歳の女】「早く落ちろ。自分で死ねや」と怒鳴っていました。
【検察官】あなたは何か言いましたか?
【当時19歳の女】「落ちろや」と怒鳴りました。
【検察官】あなたはそれを何回言いましたか?
【当時19歳の女】はっきりとは覚えていませんが、少なくとも20回以上は言っていたと思います。

【検察官】そのように言われたAさんはどうしましたか?
【当時19歳の女】1回だけ大きく深呼吸をして、上体を前に倒しました。
【検察官】被告人はどうしましたか?
【当時19歳の女】梨瑚さんは、被害者の子の肩甲骨のあたりを両手のひらで押しました。
【検察官】Aさんはどうなりましたか?
【当時19歳の女】私の目の前から一瞬で消えました。
【検察官】あなたはどうしましたか?
【当時19歳の女】下を見ると、ロープか何かに捕まっていて、引きあげようと欄干の隙間から手を伸ばしました。
【検察官】手は届きましたか?
【当時19歳の女】ギリギリ届くか届かないかのところでした。
【検察官】Aさんはどうなりましたか?
【当時19歳の女】消えました。
【検察官】消えるまでどのくらいでしたか?
【当時19歳の女】体感で6秒くらいでした。
【検察官】声は聞こえましたか?
【当時19歳の女】「キャー」という高い叫び声が聞こえました。
【検察官】そのあとは何か聞こえましたか?
【当時19歳の女】「バン」という何かにぶつかったような図太い音がしました。
当時19歳の女は、この最後の場面を証言した理由について、「梨瑚さんが話しているようなことは一切なく、でたらめで、全部作り話で、最初から最後まで全部嘘」だと述べ、自分だけでも本当のことを話さなければならないと思ったと話した。
内田被告が語る 事件のきっかけは“1枚の写真”
裁判5日目を迎えた5月29日。この日は弁護側の被告人質問が行われ、内田被告が初めて自身の言葉で事件の詳細を語った。内田被告は初公判と同じように、傍聴席にいる遺族に向かって深くおじぎをしてから証言台に座った。はじめに、内田被告が大きなはっきりとした声で「よろしくお願いします」と述べ、弁護人からの質問が始まった。
事件のきっかけは、1枚の写真。
内田被告がラーメンを箸で持ち上げている写真で、内田被告の顔は、箸と麺で隠れている。
監禁に関わった当時16歳の少女が撮影し、少女が自身のインスタグラムに投稿したものだという。
この写真を、少女とインスタグラムで繋がりのあったAさんが、2024年4月18日午後8時半ごろに無断で使用して自身のインスタグラムに投稿した。それに気が付いた少女が、内田被告に報告。内田被告がAさんのインスタグラムにメッセージを送り、通話が始まったという。
【弁護人】あなたはAさんになぜ写真を使ったのかを聞きましたか?
【内田被告】はい
【弁護人】Aさんは何と答えましたか?
【内田被告】「いい写真だったので」と。
【弁護人】あなたはそれに対して何と言いましたか?
【内田被告】「いい写真だったら、勝手に使っていいの?」と言いました。
【弁護人】Aさんは何と答えましたか?
【内田被告】「すいません」と言いました。
【弁護人】その「すいません」の言い方はどのようなニュアンスでしたか?
【内田被告】笑っていました。
【弁護人】Aさんは悪気がなかったのかな?
【内田被告】私はそのように感じました。
【弁護人】あなたはどうしようと思いましたか?
【内田被告】Aさんが私の写真を使った理由とか目的を、Aさんから聞こうと思いました。
弁護人からの質問に、はっきりとした口調で答える内田被告。
内田被告によると、無断使用の理由を聞いてもAさんは答えず、Aさんの親と話したいと伝えると、Aさんは「親に迷惑をかけたくない」と断ったという。
【弁護人】お金の話はどこから出ましたか?
【内田被告】私が何回も聞いても、Aさんはそれに対して断っていたんですが、何回目かにAさんから「お金を払うので許してほしい」と言ってきました。
【弁護人】Aさんが50万円を持っていると思いましたか?
【内田被告】持っていないと思っていたんですが、AさんのPayPayアカウントの残高(のスクリーンショット)を私に送ってもらったので、本当に持ってるんだと思いました。
【弁護人】4000円という話は出ましたか?
【内田被告】お金で解決したいとAさんが言ったので、梨瑚にAさんがPayPayから送金しようとしましたが、送金ができなくて、「PayPay以外に今現金はいくらあるの?」と聞いたら、Aさんは「4000円です」と言っていました。
「その態度はおかしいでしょ」“Aさんの態度にイライラした”
内田被告は当時19歳の共犯の女に「50万積ませるわ」とLINEでメッセージを送り、女は「足りますか?50万で」と返信した。
その後合流した当時16歳の少年にAさんとの通話を代わり、少年に暴力団構成員のフリをするよう指示をして「どう落とし前つけんの。誰に喧嘩売ってんの」などと言わせた上、内田被告も「じゃあ家族ごと潰していいんだね」と言っている。
そして午後10時20分ごろ、当時16歳の少年とともに、通話をつないだままAさんのいる留萌へと向かった内田被告。
【弁護人】留萌になぜ行くことになりましたか?
【内田被告】私がAさんに親と話をさせてほしいと何度も言いましたが、Aさんが断っていたので、私がAさんの携帯を確かめたり、Aさんの親と会話をしたりしたかったからです。
内田被告は、留萌でAさんと直接会うことで、Aさんの携帯から無断使用した写真が消されているのかを確認した上で、Aさんの親に無断使用について伝えて注意してもらいたかったため、留萌に向かったと主張した。
午後11時半すぎ、Aさんとの待ち合わせ場所である留萌市の道の駅に到着した内田被告と少年。
検察によると、内田被告は「お前黙って乗ってろよ。バッタバタにしてやるから」と言いAさんを車の助手席に乗せた。
Aさんと合流した場面について、内田被告は。
【弁護人】なぜAさんを車に乗せたのですか?
【内田被告】車の中で話をしたかったからです。
【弁護人】出会ってAさんはどんな言葉を発していましたか?
【内田被告】「すみません」と言っていました。
【弁護人】どんな態度でしたか?
【内田被告】大きな態度です。
【弁護人】具体的にどんな態度ですか?
【内田被告】助手席のシートに深く座って、両肘をひじ掛けに乗せていました。
【弁護人】あなたは何と言いましたか?
【内田被告】「その態度はおかしいでしょ」と言いました。まず始めに写真を使ったことについて謝ってくるだろうと思っていたので、私が言わないとAさんから「すみません」と言ってこなかったので、おかしいと思いました。
内田被告は、Aさんは4000円を持って現れ、無言で渡してきた上に、車に乗り込んでからの態度に腹が立ったと主張した。内田被告は、自身が写真を無断で使われた“被害者”であるといい、Aさんの謝罪に心が込もっていないと感じイライラしたという。
「留萌に送っていくつもりだった」内田被告が語る“神居古潭へ向かった理由”“Aさんを橋に置いて立ち去った”食い違う主張

検察によると、内田被告は少年とともにAさんを乗せて旭川に到着後、当時16歳の少女を合流させ、市内の小学校の駐車場でAさんに土下座をさせ撮影。その後、当時19歳の共犯の女も合流させ、少年が帰宅したのちに、Aさん、当時19歳の女、当時16歳の少女とともに4人で市内のコンビニエンスストアに立ち寄っている。
そこで内田被告はトイレを利用したのちにAさんの携帯のPayPayを使ってタバコなどを購入。トイレに行きたがったAさんを当時19歳の女と当時16歳の少女が店内トイレに連れていき、トイレを出てレジへ走り店員に助けを求めたAさんは、内田被告と当時19歳の女に店外に引きずり出され、店外で暴行された。
内田被告は、コンビニエンスストアに立ち寄る前に、Aさんが「月に5万円」を支払うという約束で話がついていたと主張。コンビニで騒動になったために、その様子が防犯カメラにも映り込み、店員によって警察に通報されてしまうと思ったという。
【弁護人】神居古潭に寄ったのはどのような理由ですか?
【内田被告】もう一度Aさんと話したかったのと、私自身が落ち着きたかったからです。
【弁護人】なぜ、神居古潭にしたのですか?
【内田被告】留萌方向に向かう途中で、駐車場がある場所だったからです。
【弁護人】留萌に行く予定はあったんですね?
【内田被告】送っていくつもりでした。
4月19日午前3時半ごろ、神居古潭に到着し、駐車場で内田被告はAさんに対し服を脱ぐように命令。Aさんは全裸にさせられ、脱いだ服を草むらに捨てられている。
当時の気温はわずか5度。神居古潭では小雨が降っていた。
Aさんは全裸の状態でアスファルト上で土下座をさせられ、謝罪を述べる様子をここでも撮影されている。
【弁護人】コンビニエンスストアで暴力をふるわれてから、Aさんはどんなことを言い出しましたか?
【内田被告】「死にます」と言っていました。
【弁護人】神居古潭で、Aさんを裸にさせたのはどうしてですか?
【内田被告】Aさんが「死にたい」と言っているのが本当なのかどうか確かめようと思いました。
【弁護人】どういうことですか?
【内田被告】本当に死にたい人だったら、何の理由もなく脱ぐことはできないのではと思っていました。
【弁護人】本当に死にたい人はどうすると思いましたか?
【内田被告】断ると思っていました。
【弁護人】試したら脱いでしまったということですか?
【内田被告】はい。
【弁護人】どう思いましたか?
【内田被告】びっくりしました。
さらに駐車場から橋へと移動。橋の上でもAさんは内田被告と当時19歳の女から暴行を受け、橋の欄干の上に座り謝罪する様子を動画で撮影されている。
内田被告は、その後再び欄干に座るよう命令し、Aさんを当時19歳の女とともに押すと、「ロープにつかまり、橋の欄干の外側にAさんが自力であがってきた」と主張した。。
【弁護人】Aさんに何か話をしましたか?
【内田被告】「死ぬ気がないから戻ってきたんだべ」「どうすんの。親と話させて。死ぬの?言うの?どっち?」と言いました。
【弁護人】Aさんに川のほうを向くように指示したのは何のためですか?
【内田被告】死ぬと言って聞かないので、じゃあ死んでみろと。
【弁護人】そこまですれば親と話をすると思ったのですか?
【内田被告】はい。
【弁護人】最後にどうしましたか?
【内田被告】「うちら帰るから」と言って、Aさんの携帯と4000円を置いて、当時19歳の共犯の女と車に戻りました。
【弁護人】戻るときに何か聞こえましたか?
【内田被告】「キャー」という声と、ダンッという音が聞こえました。
当時19歳の共犯の女の証言とは違い、内田被告は、Aさんが橋の欄干の外側に川の方を向いて立った状態で置いてきたという。
内田被告が主張する“無断使用されたもう1枚の写真”の存在
内田被告は、きっかけになったラーメンを箸で持ち上げた写真の他に、もう1枚無断使用された写真があるという。Aさんと会い、Aさんの携帯を確認した際に、X(旧Twitter)のAさんのアカウントに、内田被告の顔が写った写真が使用されていたと主張する。
一方で検察側は、Aさんの携帯の解析結果を示し、「Aさんの携帯にはX(旧Twitter)のアプリは入っておらず、インストールされたのちにアンインストールされた記録もない」と主張。さらに、Xのアプリの他のsafariやGoogleなどのアプリからのログインで確認した可能性については、最後にsafariのアプリが使われた起動履歴は4月18日の午後7時半ごろであり、内田被告らと会う前であるとして、Xのアプリ以外から確認された可能性も否定している。
変わる内田被告の様子「直接言ったのではなく、心の中で言ったこと」傍聴席で思わず漏れる笑い声

被告人質問2日目となった6月3日は、検察側の被告人質問が始まった。
内田被告は、遺族に向かい深く一礼をして証言台に座り、前週に行われた弁護側の被告人質問のときに比べ小さな声で「よろしくお願いします」と述べた。
検察官からは、内田被告のこれまでの供述調書や、証人として出廷した当時19歳の女などの証言との矛盾点について、質問が続いた。
【検察官】留萌へ向かった理由として、Aさんの携帯を確認することなどが目的だと話し、金銭目的ではなかったと言いましたね。
【内田被告】はい。
【検察官】あなたは当時19歳の共犯の女や当時16歳の少年にLINEで「50万積ませるわ」とメッセージを送っていますね。これはAさんにお金を払わせるという意味であり、金銭目的ではなかったという話とは矛盾していませんか?
【内田被告】はい。
【検察官】「50万積ませるわ」というのは、Aさんからではなく、あなたから支払いを要求したのではありませんか?
【内田被告】違います。
【検察官】あなたは通話中に「じゃあ家族ごと潰していいんだね」と言い、留萌でAさんに会ったときにも「お前黙って乗ってろよ。バッタバタにしてやるから」と言いましたね。そのようにあなたの供述調書にありますが、合っていますか?
【内田被告】当時の記憶では、私はAさんにそのように言ったと供述しましたが、直接言ったのではなく、私の心の中で言ったことでした。
【検察官】供述を今変えるということですか?
【内田被告】当時はそう証言しましたが、今思えば違ったと思います。
傍聴席ではAさんの遺族が厳しい表情で内田被告の背中を見つめ、内田被告が「心の中で言った」と発言した際には、傍聴席からは呆れて思わず漏れ出てしまったような小さな笑い声が聞こえた。
【検察官】(Aさんへの暴行の理由として)「当時誰とも喧嘩をしていなかったので、鬱憤が溜まっていた」と取り調べで話しましたか?
【内田被告】はい。
【検察官】今も同じ認識ですか?
【内田被告】・・・・・。
【検察官】同じか違うかを聞いています。
【内田被告】ストレスがあったから、Aさんに暴力をふるうという供述ですか?
【検察官】喧嘩をしていなかったので鬱憤が溜まっていたということです。今も同じ考えですか?
【内田被告】はい。
【検察官】なぜそれを先週(29日の弁護側の被告人質問)に話さなかったのですか?
【内田被告】そこの・・・・当時の気持ちが思い出せなかったです。
【検察官】この期に及んで・・・という言葉が適切かどうか分かりませんが、あなたはこの裁判までに、当時のことを思い出したり、供述調書を読み返したり、整理してこなかったのですか?
【内田被告】しました。
【検察官】それでも思い出せなかったのですか?
【内田被告】はい。
【検察官】自分の都合のいい話しかしていないのではないですか?
【内田被告】違います。
それは殺意があるということでは?-「今は思います」検察側の被告人質問は、さらに神居古潭での場面へ
【検察官】取り調べで、なぜ神居古潭だったのかを聞かれて何と答えましたか?
【内田被告】Aさんの住所や親の連絡先を私に言うか、死ぬかの2択を迫るために行ったと説明しました。
【検察官】当時19歳の女と、Aさんをボコボコにするという話もしたのではないですか?
【内田被告】したと思います。
【検察官】Aさんをボコボコにする場所として神居古潭を選んだ理由はどう説明しましたか?
【内田被告】カメラがないからと言ったと思います。
【検察官】留萌に向かう途中で駐車場があるのが神居古潭だったと言っていましたが、神居古潭に限った話ではないですよね。説明になっていないのではないですか?
【内田被告】・・・・・・・はい。
弁護側の被告人質問で、Aさんの服を脱がせたことを、本当に死ぬ気があるのか確かめるためだったと話したことについては。
【検察官】Aさんの服を脱がせたことは、Aさんに辱めを与えたいという思いがあったのではないですか?
【内田被告】Aさんが裸になったあとは、そのように思っていました。
【検察官】服を捨てた時点で、Aさんを帰すつもりはなかったのではないですか?
【内田被告】違います。
【検察官】(服を脱いだことについて)普通は応じないですよね?
【内田被告】はい。
【検察官】それはあなたも分かっていたんですか?
【内田被告】はい。
【検察官】Aさんが服を脱いだのは、追い詰めていたからではないですか?
【内田被告】追い詰めていたからAさんが脱いだのかは分からないです。
【検察官】分からないんですか?
【内田被告】分かりません。
【検察官】全裸のAさんにひと気のない場所で暴力をふるって、「死にます」とAさんがどんな気持ちで言ったのか、本当に分からないのですか?
【内田被告】Aさんの本心が分からなかったです。
【検察官】自分たちが追い詰めたからだと思いませんか?
【内田被告】・・・・・その理由もあると思います。
【検察官】当時も分かっていたのでは?
【内田被告】当時は、どういう理由でAさんがこうなっているのか、私が怒っているのか、一つひとつの理由を考えることができなかったので。
Aさんの気持ちが分からなかったという内田被告。しかし、Aさんが弱っていたことは分かっていたといいます。
【裁判官】橋の上で暴行していたときのAさんの様子は?
【内田被告】弱っていました。
【裁判官】なぜそう思いますか?
【内田被告】蹴られたり踏んづけられたりして痛いはずなのに、あまり痛がる様子がなかったからです。
橋の上でAさんにした暴行を、自身の言葉で話すように検察官から促されると、内田被告は「髪の毛を引っ張って、腰のあたりを数回蹴ったのと、Aさんの顔を数秒踏んづけました」と淡々とした口調で語った。
【検察官】Aさんが「死にたい」と言うのをやめさせるために、橋に連れていったのですか?
【内田被告】はい。
【検察官】そう思いながら、「落ちろ」「死ねや」と言うのは、やっていることと逆になるのではないですか?
【内田被告】なります。

検察官から、さらに踏み込んだ質問が続く。
欄干に座らせた理由について、「本当に危ない目に遭えば、死にたいと言わなくなって、Aさんの親と話させてくれると思った」という旨の話をしていたことについて。
【検察官】なぜ、欄干の上に座らせることが危険な思いをさせることになりますか?
【内田被告】バランスを取っていないと落ちてしまうからです。
【検察官】あえてその状態にしたということですか?
【内田被告】はい。
【検察官】川に転落してしまえば助からないと知っていてその状態にしたのですか?
【内田被告】はい。
【検察官】落ちたら死ぬかもしれないと分かっていましたか?
【内田被告】はい。
【検察官】それは殺意があるということではないですか?
【内田被告】今は思います。
【検察官】今は思うんですか?
【内田被告】・・・・・・。当時は殺意を持って欄干の上に座らせたり、体を押したりしていたわけではないんですが、今はそんな危険なこと・・・危険なことをしていたので、殺意があったんじゃないかと言われても、言われる・・・ものは当然だと思います。
【検察官】Aさんがケーブルに捕まって戻ってきたというのは、あなたの作り話ではないですか?
【内田被告】絶対に違います。
【検察官】Aさんがうまくケーブルに掴まったりしていなければ、川に落ちていたと思いませんか?
【内田被告】はい。
【検察官】殺人の実行行為になるとは思いませんか?
【内田被告】実際に落ちたのであれば、殺人の行為になると思います。
【検察官】Aさんを川側に向かせて「じゃあ死んでみろ」と言いましたね。
【内田被告】はい。
【検察官】もしAさんが飛び降りれば、あなたがAさんを殺したことになるとは思いませんか?
【内田被告】分からないです。
【検察官】Aさんは、「じゃあ死んでみろ」と言われて従うくらい追い詰められていたとは思いませんか?
【内田被告】・・・・・・・・(約20秒間の沈黙)。追い詰められていたとは思います。
【検察官】(橋から車に戻り)なぜ様子を見に行かずにただ車で待っていたのですか?
【内田被告】(車に戻る)途中でダンッという音が聞こえて、その時は落ちたのかなと思いましたが、そのとき橋に戻ってAさんがいないのを確かめるのが怖かったです。
殺意と殺人の実行行為は否認している内田被告。しかし、落ちてしまえば死ぬかもしれないと分かった上で、欄干の上に座らせたと話した。私は「殺意を認めるような発言ではないのか」と緊張感が走ったが、「それは殺意があるということではないか」という検察からの直球の質問には、内田被告は「当時は殺意を持って欄干の上に座らせていない」と改めて否認した。
“裁判で初めての涙”は自身の母親の証言
被告人質問2日目である6月3日には、内田被告の母親が出廷し、証人尋問が行われた。内田被告の母親と傍聴席の間には衝立が置かれた。これまでの様子と違い、内田被告は少し落ち着かない様子だった。母親への質問は弁護側から始まった。
【弁護人】梨瑚さんはどんな子ですか?
【内田被告の母親】幼いころから明るくて、陽気でとても人懐っこくて、おじいちゃんとおばあちゃんが大好きで・・・いつも家に遊びに行ってました。
そのとき突然、内田被告は一筋の涙を流した。
これまで、ほとんど表情を変えなかった内田被告。さらには、この母親の証人尋問の直前に行われた、遺族の供述調書の代理人弁護士による読み上げの間にも、全く表情を変えなかった内田被告が、この裁判の中で初めて流した涙だった。
その後も母親が話す様子を、涙をにじませ、鼻をすすりながら聞いていた。
【弁護人】事件があった4月19日の夜中、被告人に変わった様子はありませんでしたか?
【内田被告の母親】もともと仕事が18日のあと3連休で、体調が悪かったりして19日は仕事を早退して病院に行っていて、そのあとも大事をとって休むようにと家にいました。
【弁護人】事件を起こしたような様子は分かりませんでしたか?
【内田被告の母親】分かりませんでした。
【弁護人】事件について、いつ知りましたか?
【内田被告の母親】令和6年4月24日です。
【弁護人】きっかけは?
【内田被告の母親】夕方に警察の方が5~8人来て、「留萌の17歳の女の子がこちらに来ていませんか?」と聞かれました。
【弁護人】そのとき梨瑚さんは家にいなかったのですか?
【内田被告の母親】自分の部屋で寝てました。
家族全員が個別に話を聞かれ、内田被告は任意同行となり、そのまま逮捕されたという。
その後、検察からの質問へと移り、これまでの内田被告のトラブルや、喫煙や飲酒などの違法行為についての話が続いた。
【検察官】内田被告が高校生のとき、違法行為はなかったですか?
【内田被告の母親】停学になりました。
【検察官】なぜですか?
【内田被告の母親】アイコスを吸いました。
【検察官】喫煙していたことを把握していましたか?
【内田被告の母親】辞めなさいと言いましたが、外では吸っていたと思います。
【検察官】お酒はどうでしたか?
【内田被告の母親】たぶん、飲んでいました。
【検察官】なぜですか?
【内田被告の母親】家の冷蔵庫の中の甘いカクテルが減っていたので、梨瑚が飲んだのかなと思っていました。
【検察官】注意はしなかったんですか?
【内田被告の母親】しました。
【検察官】それで被告人は?
【内田被告の母親】「ごめんなさい」って言ってました。
衝立があるので、内田被告の母親がどんな様子で答えているのかは分からない。
ただ、私は淡々と答えるその声色が、あっけらかんとした様子に感じ取れた。
【検察官】あなたと梨瑚さんはどのようなときに衝突しましたか?
【内田被告の母親】アルバイトを突然休むと連絡したりとか・・・。あとは自転車を無断であのー・・・持ち帰ってきたということもあって・・・。
【検察官】盗んだということですか?
【内田被告の母親】(笑い声)盗んだっていうか・・・(笑い声)まあ、そう受け取られてもしょうがないですね。
傍聴席では、内田被告の母親が語る言葉一つひとつに、Aさんの遺族がじっと耳を傾けている。そのような状況の中で、内田被告の母親は、時折笑いながら話しているように感じ、私は言葉にならない気持ちになった。
【検察官】あなたは、初公判から毎日傍聴していますね?
【内田被告の母親】はい。
【検察官】当時19歳の共犯の女との供述の対立を、あなたはどう受け止めていますか?
【内田被告の母親】梨瑚の証言を信じています。
【検察官】なぜですか?
【内田被告の母親】梨瑚に嘘をついていないか、Aさんやご遺族に誓って嘘をついていないと言えるか2回聞きました。
【検察官】Aさんやご遺族に対して、あなたは今どんな気持ちですか?
【内田被告の母親】・・・・・。大切なAさんに、怖い思い、痛い思い、苦しい思いをさせて、将来の夢を奪ってしまい、本当に申し訳なく思っています。
この言葉で、証人尋問は休廷に入った。
弁護人2人の間に座る内田被告は、休廷してすぐに弁護人と何かを話し、その表情はどこか安心したような様子だった。そして証言台にいる母親の方へと一度目くばせをして、廷内をあとにした。
涙ながらに遺族へ謝罪 “涙のワケ”を問われ沈黙する内田被告

被告人質問3日目を迎えた6月4日。
この日は、はじめに弁護人から、内田被告が遺族に書いたという手紙が読み上げられた。
この手紙は今年1月に書かれたもので、遺族からは受け取りを拒否されたという。
その後、被告人質問が始まると、内田被告は小さな声で話し始めた。
【弁護人】逮捕されてからこれまで、どう過ごしていましたか?
【内田被告】取り調べ中は、やっていないことはやっていないと訴えることに必死で、Aさんの気持ちを考えられませんでしたが、令和6年7月4日に拘置所に移って過ごすうちに、Aさんを亡くならせてしまった責任と・・・向き合えるようになって・・・・・。
言葉に詰まり、涙声になりながら言葉をつづける。
【内田被告】心から反省と謝罪の日々を送ってきました。当時の人間関係を振り返って、過去の自分には何が足りなくて、どこで間違えてしまったのか考えるようになり、自分と向き合う時間を過ごしてきました。
【弁護人】Aさんは連れまわされ、裸にされ、土下座をさせられ、暴行され、どんな気持ちだったと思いますか?
【内田被告】とても言葉にできないくらい・・・・不安や恐怖、痛みや孤独を感じて、苦しかったと思います。
内田被告は鼻をすすりながら、さらにうわずった声で話し続ける。
【弁護人】ご遺族に伝えたいことはありますか?
【内田被告】はい。
【弁護人】どんなことですか?
【内田被告】私の身勝手で非常識な言動によって、Aさんを再三傷つけ、苦しませ、これからの人生を奪ってしまい、本当に申し訳ございません。これからも自分の罪と向き合って、まずは自分にできる償いを見つけていって、受刑生活を真面目に努めます。本当に申し訳ございませんでした。
内田被告は証言台で立ち上がり、傍聴席の遺族に向かって、深く頭を下げた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
弁護人から席に戻るよう促されるまでの約20秒間、じっとおじぎを続けていた。
また、今回の事件の原因について問われると、「自分の感情をコントロールすることができず、マイナスの感情を言葉にすることが苦手なため、冷静に正しい判断ができず、感情のままに暴言をはいたり、暴力をふるったり、身勝手な行動をとってAさんを傷つけてしまった」などと語った。

その後、続けて始まった検察側の質問。
【検察官】なぜ、泣いたんですか?
【内田被告】・・・・・・・。
【検察官】答えたくないのですか?次の質問に移れないので、答える気があるのか答えてください。
【内田被告】・・・・・・・。
【裁判長】答えますか?
【内田被告】・・・・・・・。
【検察官】答える気がないと判断します。
弁護人からの質問のときに流した涙のワケを問われた内田被告は、
じっと動かず、質問が繰り返されても沈黙を続けていた。
この質問をきっかけに、その後の検察官からの質問に対して、小さな声で答えたり、不貞腐れているような声色で答えているように、私は感じた。
その後しばらくして、再び検察官から涙の理由を問われると。
【検察官】どういう思いで涙を流していたのですか?
【内田被告】法廷の中で、私が今・・・どのような気持ちでAさんを思っているかを・・・話すことで、自然と涙が流れていました。
【検察官】自分たちでしたことでAさんを亡くならせてしまったことの責任を、受け止めていますか?
【内田被告】はい。
【検察官】当時19歳の共犯の女とあなたの話の食い違いがありますが、自分にも責任があると考えていますか?
【内田被告】考えています。
【検察官】罪と向き合って、真面目に受刑生活を務めると言っていましたね。
【内田被告】はい。
【検察官】自分にできる償いを見つけるとも言っていましたね。
【内田被告】はい。
【検察官】まずは罪を受け止めてからだと思いませんか?
【内田被告】思います。
【検察官】自分のしたことが殺人の罪にあたると思わないのですか?
【内田被告】殺人の罪になるのかどうかは判決が出ないと私には分からないです。
検察官から、遺族への謝罪文の意味を問われ、「直接的に橋から落下させていませんが、私の言動によってAさんを橋から落下させてしまったのは間違いないと思います」と答えた内田被告。しかし、殺人にあたらないのかという質問に対しては、やはり直接的な言及を避けた。
遺族の代理人弁護士から“不貞腐れた態度”指摘され「聞いている人が不貞腐れたような答えだったと思うのであれば・・・」
休廷を挟み、午後から行われたのは、遺族の代理人弁護士による被告人質問。
涙のワケを聞かれたあとの内田被告の様子について、指摘された。
【遺族の代理人弁護士】過去に足りなかったこととして、感情をコントロールできないと言っていました。自分でこうしなければと考えたことはありますか?
【内田被告】悲しいことや辛いことがあったとき、またイライラしてしまったときに、すぐに行動に移すのではなく、一旦立ち止まって、何に対してこんな感情になっているのかしっかり考えて、その考えが合っているかを自分で確かめ、自分で確かめることができなかったら、周りに聞いたりすることです。
【遺族の代理人弁護士】検察官に、なぜ泣いたのか聞かれて沈黙していました。ご遺族の方も私も思いましたが、そのあとあなたはずっと不貞腐れた態度だと思いました。自分で感情をコントロールできていたと思いますか?
【内田被告】・・・・・聞いている・・・人が、不貞腐れたような答えだったと思うのであれば、自分でまだまだコントロールできていないと思います。
「Aさんが誰か一人でも一緒に道の駅に来ていたら、もっと早く話がまとまっていた」問われる内田被告の“向き合う”姿勢

【遺族の代理人弁護士】冒頭陳述で、弁護側からは、Aさんにも否があるというような主張がありましたが、あなた自身もそのように今も思っていますか?
【内田被告】このような結果になってしまったのは、今は私の責任だと思いますが、もしAさんが誰か一人でも一緒に道の駅に来ていたら、もっと早く話がまとまっていたと思います。
【遺族の代理人弁護士】あなたはそのように考えていて、本当にこれまで自分のしたことに向き合っていたと言えますか?
【内田被告】はい。
これまでの裁判で、法廷への出入り、そして証言台に立つときには遺族に向かって、腰を90度に曲げて、深く頭を下げていた内田被告。そのおじぎの意味を問われると、小さな声で答えた。
【遺族の代理人弁護士】あなたはこの裁判で、法廷に入るとき、出るときに、深々とおじぎをしていますね。それはどんな気持ちですか?
【内田被告】心からの気持ちです。
【遺族の代理人弁護士】心からの気持ちとは?
【内田被告】Aさんや、Aさんのご遺族や・・・・・・裁判所です。
【遺族の代理人弁護士】Aさんの家族への謝罪文について、今年1月に書いた理由は何ですか?
【内田被告】逮捕されてから今年1月に入るまで、当時19歳の共犯の女の裁判が始まったり、判決を聞いたりして、私の裁判ではどのような判決が下されるのか・・・もっと家族に迷惑をかけるかもと、Aさんの家族を思うくらい、私も自分の気持ちでいっぱいいっぱいでした。今年1月に弁護人から、遺族に手紙を書いてみないかと提案され、そのときに、私自身のことよりAさんの家族のことを思っていたので、今なら書けると思い、書きました」
涙声になりながら答える内田被告に、遺族の代理人弁護士が続ける。
【遺族の代理人弁護士】共犯の女の裁判は去年の3月です。なぜこれまで手紙は書けなかったのですか?
【内田被告】自分の気持ちに嘘をつくことは嫌だったからです。
【遺族の代理人弁護士】遺族への手紙の中で、「Aさんが亡くなった責任は自分にある」「自分の言動によるもの」だと書きましたね。
【内田被告】はい。
【遺族の代理人弁護士】この裁判で、あなたは「Aさんを殺していない」という主張をしていますが、「私の責任」だと書いたのはなぜですか?
【内田被告】Aさんに対する殺意は全くありません。橋の上で落下させてもいません。ですが、Aさんが亡くなってしまったきっかけは、Aさんと合流して、Aさんを苦しめた結果だと、そのように思います
【遺族の代理人弁護士】殺人の罪にあたるかは分からないと言っていましたね。
【内田被告】はい。
【遺族の代理人弁護士】判決が出れば、受け入れる心の準備があるということですか?
【内田被告】判決の内容によって変わると思います。
【遺族の代理人弁護士】遺族に向けて、償いを考えたことはありますか?
【内田被告】今はご遺族の方に直接会いに行って謝罪することは叶いませんが、もし社会に戻れたら、ご遺族の方に・・・・会って謝罪したいです。
最後まで涙声になりながら答え続けた内田被告。
被告人質問1日目の弁護人からの質問では、はっきりと大きな声で答え、2日目の検察からの質問では、覇気がなく小さな声になり、3日目には涙を流しながら遺族に謝罪を述べたり、検察に対する答える様子を「不貞腐れた態度」だと遺族の代理人弁護士に指摘されていた内田被告。
自身の言葉で語ったこの3日間、それまではほとんど表情を変えなかった内田被告の様子が目まぐるしく変化し、内田被告の“心”が表れていたように感じた。
遺族が泣き叫び「あいつを・・・!娘が望む判決を・・・!」表情を変えなかった内田被告。
8日の裁判では、はじめに、亡くなったAさんの両親の思いが語られた。
母親は、代理人弁護士によって代読された。
「夜中に何度も目が覚めて、この時間に小学校で土下座をさせられたのかな、コンビニで暴行されたのかな、川に突き落とされたのかなと思い、絶望に苛まれています。
裁判ではあの日暴力を受けた娘に非があるような言葉も聞こえ、内心反省していないと感じました。
被告人が言う娘の『反省していない様子』には強い違和感をおぼえますし、責任転嫁するような態度が許せません。娘の命を奪ったことを本当にわかっているのでしょうか」
これまで傍聴席で、Aさんの写真が入った写真立てを握りしめながら内田被告の言葉にじっと耳を傾け、証言台で語る内田被告の背中を見つめ続けていた母親が、内田被告の“向き合う態度”を強く非難した。内田被告は読み上げられる内容を無表情で聞いていた。

そしてAさんの父親は、自ら法廷に立った。
検察側の席で、代理人弁護士2人の間に座っていた父親は、立ち上がると裁判長らに向けて一礼し、さらに傍聴席に一礼をした。
思いをつづった手元の紙を、震える手で握りしめ、弁護側の席に座る内田被告に、鋭い視線を向けた。
廷内は父親の声を待ち、一瞬で静まり返った。
そして放たれたのは、父親の精一杯の思いを込めた叫びだった。
「私は本件被害者の父親です。あの日初めて事件の全容を聞いたとき、どれも耳を疑うことばかりでした。犯人が娘を川に突き落としたかもしれないと聞いたとき、全身に鳥肌が立ちました。家族で神居古潭に行き、必死に捜索しました」
廷内に、力強い声が響きわたっていた。
「署で見た、白い布に包まれ、透明のビニールに入った娘の姿は、あまりにも残酷で、その場で泣き崩れたことを今でも思い出します。顔を見ることも、肌に触れることもできず、『頑張ったね、帰ってきてくれてありがとう』と声をかけることしかできませんでした」
60キロ以上を流され、川に転落してからおよそ1ヶ月後に発見されたAさんの遺体は損傷が激しく、ようやく家族の元に帰ってきたAさんに、触れることも、顔を見ることもできなかったその思いは、想像できないほどつらいはずだ。
絶えず涙を流しながらも、精一杯の思いを内田被告に向けて叫び続ける姿に、私は手元のペンを走らせながらも、耐え切れずノートには大粒の涙がこぼれ続けた。
一般傍聴席からも、鼻をすすり涙をこらえる声が響いた。ぐっと手のひらを握りしめている人もいた。
そして、内田被告に向けて訴え続けた父親は、最後に裁判長らのほうへ向いた。
「裁判官の皆様!裁判員の皆様!どうか・・・どうか・・・・・・あいつを!!私の娘が望む判決を下してください!!」
父親は、涙で顔を濡らしながら、震えながらも力強く内田被告を指でさしながら泣き叫んだ。傍聴席にいるAさんの母親はハンカチで顔を覆い、裁判員の中には涙をにじませている姿もあった。
しかし、指をさされた内田被告は全く表情を変えず、ただ一点を見つめ続けていた。
■“予期せぬ方向に進展し、誠に不幸な経緯” 改めて殺意を否認した弁護側「全てが内田被告の責任とは言えない」
弁護側の最終弁論で、弁護人が特に改めて訴えたのは、「この事件が起き、進展したのは、偶発的事態によるもの」だということだ。
内田被告は初めから計画的に事件を起こした訳ではなく、「50万円」という金額は、内田被告から要求した訳ではなく、Aさんから申し出たことであり、Aさんを旭川に連れていくことになったのは、ガソリン不足の中で留萌で営業しているガソリンスタンドがなかったことであったと主張。
さらに、「内田被告らが留萌へ向かう間、Aさんはボタン一つ押せば通話を切れる状況であるのに通話を続けたこと」、「留萌の道の駅に警察に通報することもなくたった一人で現れたこと」、「監禁に関わった当時16歳の少年少女たちから、家に来ないかと提案されたにも関わらず、Aさんがそれを断ったこと」、「内田被告は月に5万円を支払うという合意で穏便に済ませようとしていたにも関わらず、Aさんがコンビニエンスストアで店員に助けを求めたこと」など、様々な要因によって、“内田被告が予期せぬ方向に進展し、誠に不幸な経緯だった”と主張し、殺意についても改めて否定した。
遺族の悲痛な叫びには反応がなかった内田被告は、これらの弁護人による話を聞きながら、何度も頷く様子がみられた。
また弁護人は、内田被告の情状面について、身体拘束は既に2年になり、自分自身と向き合う中で、責任を感じノートに思いを書きとめ、15冊に及んでいること、この裁判で遺族に対し頭を下げることができたことなどをあげた。
“懲役27年”の求刑「最後の瞬間までもがき苦しみながら亡くなり、将来の夢や希望の一切が絶たれた」
一方で検察側は、内田被告の殺人の実行行為性について、「転落によるAさんの死の結果は、内田被告らの執拗かつ強度な暴行、脅迫、長時間にわたる監禁や悪質なわいせつ行為の末に『落ちろ』『死ねや』と脅迫するなどした行為が招いたもので、内田被告らがAさんを橋から転落させて殺害したと評価しなければならず、内田被告が殺人の実行行為を行ったと認められる」と主張した。
また、不同意わいせつ致死については、「Aさんが橋から転落したのは、全裸のAさんを欄干の外側に立たせて間もなくの出来事であり、少年とのビデオ通話は、Aさんが転落した際にも継続中であったと認められる」と主張。
つまり、時間的にも場所的にも転落した場面と近いと評価され、亡くなったことにわいせつ行為も関係していると言えるとして、不同意わいせつ致死は成立するとした。
これらの理由から、検察は「内田被告は首謀者かつ主犯である」とした上で、「心身ともに極限まで追い込むとともに人格の尊厳を踏みにじった挙句、最後まで苦痛を与え続けながら確実に死に至らしめ、その痕跡すら残らない方法で殺害しており、極めて残虐であり悪質」
「最期の瞬間までもがき苦しみながら亡くなり、将来の夢や希望の一切が絶たれたAさんの苦痛や無念さを言葉で表し尽くすことはできない」として、“懲役27年”に処すべきであり、これを下回ることは、被告人の責任を不当に軽く見るもので不相当である」との求刑を言い渡した。
この瞬間も、内田被告の表情は変わらず、ゆっくりとまばたきをしている様子だった。
検察は、求刑を「無期懲役刑」とせず有期刑にした理由として、過去に「殺人」と「強制わいせつ致死」が合わさった事例は3例あり、そのいずれも無期懲役刑となっているが、それらは全て「性欲」を満たすために被害者を「性のはけ口」とした挙句に殺害したものであり、内田被告の場合はAさんに対する「制裁」目的で全裸にさせたものであるため、この違いを考慮すべきであると説明した。
さらに、既に裁判を終えている共犯の当時19歳の女の「懲役23年」の判決に触れ、別の裁判結果であるものの、公平な裁判を行う観点で、共犯の女の量刑とのバランスも十分考慮すべきだとした。
事件から2年 内田被告が何を感じてきたのか、そしてこの裁判で何を感じたのか。
亡くなったAさんは、事件からおよそ1ヶ月後の2024年5月21日に、神居大橋から約63キロ下流の川の中で、枝にひっかかっているところを遺体で発見された。
死因は、溺水による窒息だった。
ようやく再会を果たした娘の顔を見られず、髪1本にさえ触れられなかったAさんの家族。事件から2年が経った今も、Aさんを失った悲しみの中にいる。
内田被告は最後の弁論で、遺族に向かい深く一礼をして証言台に立ち、「今日まで8回の裁判を通して、改めて結果の重大さを身に沁みて感じています。今後も反省、謝罪、償いの日々を送ります。以上です」と、淡々とした口調で述べた。
8日間の裁判が結審し、内田被告は今、何を思っているのか。
22日、内田被告に判決が下される。
