【裁判ルポ②】「やれと言われた」「指示を出していない」食い違う証言 「真実」はどこに? 江別市大学生暴行死 「主犯格」の男らの裁判
2026.07.19
食い違う証言
「川口が蹴って倒してから、『やれ』って言われました」
「自分は事件の中で指示出したのは一切ありません」
「僕の記憶だと馬乗りはないです」

証言台の前で繰り広げられたのは、食い違う被告らの証言だった。
誰が話していることが「事実」なのか。これまでの裁判で語られていたことは「真実」だったのだろうか。裁判を傍聴していて疑問が深まっていった。
「この裁判で正直に話します」
2024年10月、江別市の公園で千歳市の大学生・長谷知哉さん(20)が現金など奪われ、激しい暴行を受けて死亡した事件。
この事件で強盗致死などの罪で長谷さんの交際相手、八木原亜麻(やぎはら・あま)被告、友人の川村葉音(かわむら・はおと)被告ら6人が起訴された。このうち川村被告は先月の裁判で懲役30年の判決を受け、本人と検察側の双方が控訴している。

そして13日から主犯格とされる川口侑斗(かわぐち・ゆうと)被告と当時17歳の少年の裁判が始まった。当時17歳の少年について、川村被告らは先月までの裁判で川口被告の次に暴行した人物と答えている。
以前、川村被告の裁判のとき証人として呼ばれ、宣誓拒否した川口被告。初公判でこう述べた。
川口被告「間違っているところはありません。本当にひどいことをしました。申し訳ありません。この裁判で正直に話します」
「やっぱり事件に向き合いたい」涙ながらに答える川村被告
川口被告と当時17歳の少年は起訴内容を認めていて、争点は量刑となっている。
裁判では証人として川村被告が出廷した。

(川村被告が座る証言台にはパーティションが設置された)
川村被告「あくまで私の記憶ですが被害者さんが本当に申し訳ございませんでしたと言って土下座しているときに(川口被告が)頭を6、7回踏む場面がありました」
検察官「土下座をさせたのはなぜ」
川村被告「川口さんが土下座しろよと言った」
検察官「被害者さんに言った理由は思い当たりますか?」
川村被告「……土下座しないで申し訳なかったと言ったので土下座しろやと頭を踏みました」
そして川村被告は川口被告から指示された暴行もあったと話した。
検察官「どんな暴力をあなたはしましたか」
川村被告「倒れている被害者の背中を1回や腰2回をふみました」
検察官「なぜですか」
川村被告「被害者が近づいてくる場面があって、川口が蹴って倒してから、『やれ』って言われました」
最後に検察官から控訴審が控えている中、なぜ証人として証言台に立ったのか尋ねられるとこう答えた。
川村被告「……やっぱり事件に向き合っていきいたという気持ちがあったから話しました」
川村被告は涙ながらに答えた。
食い違う主張「指示を出していない」
だがこのとき川口被告は首を横に振っていた。その様子を裁判員は見ていた。

(送検される川口被告)
裁判員「川村さんが『やれと言われた』と言ったことについて、私からは川口さんが首を横に振っていたように見えましたが、違いますか?」
川口被告「自分は事件の中で指示出したのは一切ありません」
さらに八木原被告の「指示」に従わざるをえなかったと話した。
弁護士「なぜすぐ暴力をやめなかった?」
川口被告「八木原さんが『まじ許さないし』と言って、自分には聞こえなかったのですが、川村さんが「許さないって言っている」と言って、まだ暴力を振るわなければいけないのかと思い暴力しました」
弁護士「なぜ八木原さんを説得しなかった?」
川口被告「八木原さんに『もういいんじゃね』と強く言いましたし、血出ているからいいんじゃねと強く言ったのに八木原さんは『もっとやって』と言って自分にはもっとやらないといけないのかと思いました」
川口被告ははきはきとした声で答えた。
だがこれに対してまた異なる証言が出たのは少年の被告人質問のときだ。
検察官「途中から(八木原被告が)もっとやってと言った?」
少年「そうです」
検察官「それは影響した?」
少年「していないです」
検察官「それはなぜ?」
少年「川口が空気を作っている人だと思っていたので川口が暴行をやめれば終わると思った」

他にも少年は川口被告とも川村被告とも異なる証言をした。
川村被告らはこれまでの裁判でも「少年は被害者に馬乗りになった暴行した」と証言してきた。しかし少年はこれを否定した。
検察官「馬乗りになって殴る場面はあった?」
少年「馬乗りではないですけど左肩付近にしゃがんで顔を2回3回蹴りました」
検察官「そういうことをしていない?」
少年「またがったりしていないです」
少年は交際相手でもあった川村被告が記憶と「異なる」発言をしたのではないかと話した。
どこまで「正直」に話しているのか?
他にも食い違う証言がいくつかある。
そのうちのひとつが暴行の回数だ。
川口被告は警察の取り調べではおよそ70回暴行したと話していたが、裁判では55回暴行したと話した。だが少年は「川口被告は100回以上暴行した」と話している。
だがいずれにしても被告らが暴行して死亡させた事実には変わりない。
彼らは暴行を終えた後、ボロボロになった被害者を見て当時どのように考えたのだろうか。
弁護士「死んでしまうかもしれないとかは思いませんでしたか」
川口被告「まったく思わず、不安もなかったです」
弁護士「被害者が亡くなったと知って、どう思いましたか」
川口被告「(別の場所に移動していたから)自分は殺してない、だれかがとどめを刺したんだと思いました」
さらに少年は日頃抱えていたストレスを発散するために暴行を加えていたとしてこういった。
少年「こいつにしても大丈夫だろうって」
何が「事実」なのか?
彼らはどこまで「正直」に話しているのか?
裁判はこのあと分離され、月末以降、川口被告と少年に求刑が出される。強盗致死罪は原則、「死刑」か「無期懲役」だ。
判決は来月7日に言い渡される予定だ。
