札幌市西区の「利益度外視」スーパー・マンボウ西野店。赤字覚悟の激安を支える〝神様〟80代店長の1日に密着

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大根1本107円

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おにぎり1個75円

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そして缶詰の黄桃は驚きの21円――。

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店内は所狭しと商品が並び、「近所の中でどこよりも安い」「安くて家計が助かる」「メチャメチャ混んでいます」と、客足が途絶えることはありません。

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札幌市西区のスーパー「マンボウ西野店」

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この店を牽引しているのが、現在80代の女性店長、通称「神様」。そのエネルギッシュな「神様」と、利益度外視とも言われるマンボウの驚くべき1日に密着しました。

午前5時半、店長の長い1日が始まる

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まだ雪が残る早朝5時半、店長は誰よりも早く出勤します。

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「いつも1番に出社するんですか?」というスタッフの問いに、「そうです」と短く答え、すぐに売り場へと向かいます。

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彼女の朝の日課は、商品の徹底的なチェック。野菜や果物を一つひとつ手に取り、少しでも鮮度が落ちていたり、変色していたりするものは容赦なく「変なの」として弾いていきます。

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「まともな値段で売っていたらお客様に申し訳ない」。

そう話す店長は、黒ずみ始めたキノコを見つけると、即座に値下げのシールを貼っていきます。バナナも自ら価格を調整。すべては、「少しでも安く」というお客さんへの思いからです。

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店長は、約40年前にパートとしてマンボウで働き始め、約30年前に店長に就任。以来、店の「顔」として、毎日売り場に立ち続けています。

午前7時、開店と同時に始まる「早朝サービス」

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午前7時の開店と同時に、朝一番のサービスが始まります。それは「早朝無料プレゼント」。

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午前9時までに、合計1620円(税込)以上買い物をすると、牛乳やヨーグルトなどの対象商品から1点(1家族1回限り)が無料でもらえるという、太っ腹なサービスです。

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悪天候は「感謝」の合図。「雪降り価格」とは?

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この日は、札幌で今シーズン初の積雪が観測された日。すると、店長はおもむろにマイクを握り、驚きの店内放送を始めます。

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「本日、生のサンマ1尾99円!ただいま『雪降り価格』でご用意しております!」

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マンボウでは、雨や雪の日には「雪(雨)降り価格」と称した特別セールが開催されます。おにぎりが通常価格からさらに値下げされて69円に、黄桃の缶詰は19円(税別)になるなど、ただでさえ安い商品がさらに驚きの価格になります。

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なぜ、そんなことをするのか。店長はその理由をこう語ります。 「悪天候の中、わざわざご来店くださったお客様に、感謝を込めた値段ということです」

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さらに午前9時半になると、チラシの特売品が解禁。柿1個75円、えのき1袋75円、白菜4分の1が53円など、タイムセール目当ての客で店内はさらに混雑を極めます。

利益率13%の秘密。「利益を度外視した運営」

なぜ、マンボウはこれほどの低価格を実現できるのでしょうか。休憩中の店長に尋ねると、力強い答えが返ってきました。

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「利益を度外視した運営です。運営経費だけはいただく。あとはすべてお客様に還元していく。これが会社の方針なんです」

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一般的な生鮮スーパーの利益率が20~30%程度であるのに対し、マンボウの利益率はわずか13%前後。

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特売品に至っては、原価よりも安い「赤字覚悟」で販売することもあるというから驚きです。

30年前からのユニークな文化。「神様」と「仕事人間」

マンボウには、安さ以外にもユニークな伝統があります。それは、従業員同士が「あだ名」で呼び合う文化。

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酒類・日用雑貨担当の男性スタッフのあだ名は「仕事人間」。

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その由来を尋ねると、「マンボウに来たら仕事に邁進して働いてください、ということで、仕事人間になりました」と笑います。

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他にも「担当さん」「馬之助さん」など、個性的なあだ名が飛び交います。

この文化は30年前に遡ります。1996年当時の貴重な映像には、なんと従業員が毎日「仮装」して接客する様子が収められていました。

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ウェディングドレス姿の「お父様」や、

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ちょび髭の「豆次郎さん」。

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そして、当時50代だった店長も、緑のアフロに顔ペイントという衝撃の姿で登場。その時のあだ名が、今も続く「神様」だったのです。彼女の名刺には、今も「神 様」と堂々と記されています。

午後4時、クライマックスは「夕暮れ価格」

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午後1時半、店長は昼食もとらずに、お弁当やご飯ものの値下げ作業に追われていました。「今日はなんか落ち着かない」と笑い飛ばす姿は、まさにパワフルそのもの。

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そして午後4時。店長の「お魚コーナーから、恒例になっております『夕暮れ価格』がスタートいたします!」というアナウンスを合図に、店内のボルテージは最高潮に達します。

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鮮魚コーナーのほぼ全ての商品が、一斉に割引になるのです。通常431円のホッケ(2尾)やニシン(3尾)が323円に。さらに時間が経つにつれ、「ホッケも200円でいいです」「そうだね、200円だね」と、店長と担当者の阿吽の呼吸で、ためらうことなく価格が下がっていきます。

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「夕暮れ価格のときに買えたらラッキー」「なくなっちゃうことも多い」と、お客さんもこの時間を狙って集まってきます。

「お客様は神様です」— 売り切るまで、安く

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午後7時の閉店間際。ついにニシンのパックが最後の1つになりました。

「あ!お客様、ラストになりました!」

駆け寄ってきた常連客に、店長は「じゃあ、ください」と声をかけられます。「ありがとうございます」と商品を渡す店長。

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その最後のニシン3尾の価格は、元値のほぼ半額となる216円でした。

「お客様は神様です」と微笑む店長。

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閉店時間、綺麗に空になった鮮魚コーナーの陳列棚を前に、店長は満足げに語ります。 「全部売り切れるということは、明日また鮮度のいいものを出せるということになりますので。こんな嬉しいことはありません」

利益よりも、お客さんの喜びと「鮮度」を追求する。80代の「神様」店長が率いるスーパーマンボウは、今日も札幌の街で、訪れる人々の「神様」のような存在であり続けています。

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この記事を書いたのは

SODANE編集部

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