札幌で〝眼科ショッピング〟を繰り返した私。たどり着いたのはスーパードクターだった② さっぽろ単身日記


(前回はこちら)

札幌での単身赴任生活が始まった2021年4月、
最初に受診したA眼科は、職場に出入りしている医療関係者から紹介された。
正常眼圧緑内障が専門で完全予約制だという。

へー、そんな専門があるんだ。

もしかしたら全国的に有名な先生なのだろうか。
最先端の治療が受けられるかも。

期待を胸に早速、電話予約。


指定された日時に訪れた。

待合室は広々としていて、ゆったりとしたソファが弧を描くように並んでいる。
いままでかかったことのある眼科のイメージとは明らかに違う。
眼科というより、高級美容外科(行ったことありませんが…)といった雰囲気だ。

誰もいない…

完全予約制だからなのか。
期待と不安が入り交じる。

複雑な気持ちのまま、受付で手渡された問診票に記入。
これまた広々とした検査室で、視力や眼圧を測定し、視野検査などを一通り済ませると、すぐに呼ばれた。

「いやあ、典型的な正常眼圧緑内障ですね」

診察室に入るなり、そう告げたA医師は、ベンチャー企業のやり手経営者という感じ。
何枚も資料を示しながら説明を始めた。

このときの私の眼圧は右が16mmHGで左が15mmHG。
20mmHG以下が正常眼圧と言われているので、その範囲内だった。
視野検査では、いわゆる盲点と言われている部分以外でも欠けているところがあり、初期の緑内障だという。

眼科②.JPG

直前に勤務していた福岡で通っていた眼科でも同じような結果を告げられていた。
このため、毎日の点眼が欠かせなかった。

A医師の説明によると、

緑内障になっている日本人の多くは正常眼圧だが、さらに眼圧を下げるしか治療方法がない。治療の主流は点眼だが、眼圧を下げる目薬には副作用が多い。SLTというレーザー治療があり、これを年1回受ければ点眼の必要がなくなる。

よって、私にとって最適な治療方法は、SLTというレーザー治療だという。

なんとなくSLTに持って行くための説明にも聞こえたが、A医師を紹介してくれた人が大きな病院の勤務経験があり、そこの眼科医の薦めだというので、ここはその人を信じて治療を続けることにした。

とは言え、SLTとはどんな治療方法なのか。
まだ不安があったので、ネットで調べてみた。

正式名称は、選択的レーザー線維柱帯形成術。

私の理解では、

眼の中には房水といって、循環して組織に栄養を補給する水があり、役割を終えると眼の外に出て行く。その出口(繊維柱帯)が詰まって循環が悪くなると眼圧が上がる原因になる。この出口にレーザーを照射して刺激で隙間を広げ、房水の流れを良くすることで眼圧を下げる。

そんな治療だ。

緑内障の治療はとにかく眼圧を下げることなので、最近は選択肢の一つとしてSLTを採用する眼科が増えているという。
だが、問題は費用。
A医師の説明だと、保険適用して3割負担で片目3万円。
両目で6万円だとか。

6万円か…

いま私が緑内障治療として続けていることは、眼圧を下げる目薬を差すことだけ。
ただ、毎日数種類の目薬をさすのは結構大変で、目にくまができるといった副作用もある。
目薬から解放されるのであれば、6万円の価値はあるかも知れない。

A医師を信じてみるか。


1カ月後。

治療はあっけなかった。


診察室にある治療器をただのぞき込むだけ。
レーザーを数十発照射して5分程度で終了した。

30分ほど休憩して、再度眼圧を測定する。
左右とも12mmHGほどに下がっていた。

「いやあ、ばっちりです。もう目薬とはおさらばですよ。後は半年後にお越しください」

目に少し熱ぼったさが残る程度で痛くも痒くもなかった。

こんなに簡単に緑内障の治療ができるのだったら、もっと早くやれば良かった。

札幌に赴任して良かった。

満足感からなのか、目の疲れのせいなのか、この日はぐっすりと眠った。


翌朝、その目がとんでもないことになっていた。

(続く)

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この記事を書いたのは

山崎 靖

元朝日新聞記者、キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、温泉学会員、温泉ソムリエ

昭和40年生まれ
新潟県十日町市出身


コラム「新聞の片隅に」
https://www.asahi-afc.jp/features/index/shimbun

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