札幌で〝眼科ショッピング〟を繰り返した私。たどり着いたのはスーパードクターだった④ さっぽろ単身日記


SLTという緑内障レーザー治療の後、白目が真っ赤になり、ちょっとしたパニック状態になってしまった。

2人の医師から「大したことない」と言われながらも不安は拭えず、札幌で3カ所目となるC眼科を受診。

そこで告げられたのは意外な言葉だった。


(前回はこちら↓)

札幌で〝眼科ショッピング〟を繰り返した私。たどり着いたのはスーパードクターだった③ さっぽろ単身日記

「大したことないです。1週間もすれば自然に白くなりますよ」

清潔感のある診察室で、落ち着いた雰囲気のC医師から、そう告げられた。

3人の医師から同じことを言われたことになる。

心配しすぎただけか…


ホッとするというより、これまで慌てふためいていた自分が恥ずかしくなった。

ところが、続いて発せられたC医師の言葉が意外すぎて、すぐには理解できなかった。


「でも、この目薬は差さない方がいいですよ」

この目薬、というのは、SLTという緑内障レーザー治療後にA眼科から処方された目薬のことだ。


えっ、どういうことですか?

「これは充血をなかば強制的に抑える、かなり強い成分の目薬ですから」


C医師によると、レーザー治療後に充血や結膜下出血はよくあることで、ほとんどの場合は自然に治癒するため、A眼科が処方したような目薬の必要性は少なく、むしろ副作用の方が心配だという。


う~ん。どうしたらいいんだろう


C医師の説明が本当だとしたら、A眼科はなぜ、そんな強い目薬を処方したのだろうか?


かといって、直接A医師にも聞きづらいし。


勇気をふるって問いただしたら、根拠のある説明で納得できたのかも知れない。


しかし、そんな度胸のない私はただ勝手に想像をめぐらすだけで、考えれば考えるほどA医師への不信感が増幅していった。


A眼科でのレーザー治療は選択肢として間違っていなかったのか。


本当に緑内障の目薬を差さなくてもいいのか。

このままA眼科で緑内障の治療を続けても大丈夫なのか。


急に不安になった私は、セカンドオピニオンを求めるように、C医師を質問攻めにしていた。


「朝起きて突然目が真っ赤になっていたら、それは不安でしょう。でも、直に治りますから心配ないですよ。SLTの効果を判断するには、継続して様子を見る必要があります」


おそらくA医師の治療方針や説明は間違ってはいなかったと思う。

ただ、専門的知識の持たない患者は、どうしても自覚症状で一喜一憂してしまい、実際には大したことのないケースでも、必要以上に不安になったり、悲観したりしてしまう。

このとき、医師としての見立てに加えて、相手の心情に共感した言葉があるだけで、患者はどれだけ救われるか。

医師というより、一人の人間としての言葉。

そのたった一言で、患者はその医師を心から信頼できるようになる。


ここで緑内障の治療を受けることはできますか?


私の最後の質問に、C医師は優しい笑顔で答えてくれた。


「私は緑内障が専門ではないので、ここには視野検査の機器はないんです。近くの眼科を紹介しますね」

眼科④.JPG


緑内障のレーザー治療を受けてから1年。

C眼科から紹介されたD眼科は、大通公園の近くにあった。


ガラス窓から柔らかい光が差し込む待合室のソファに腰を下ろすと、緊張していた気持ちがすうっとやわらいだ。


様々な機器が並ぶ検査室は導線が広く取られていて、視力や眼圧など一通りの検査がスムーズに行えるよう工夫されている。


診察室は大きな引き戸式のドアで仕切られていてプライバシーも確保されている。

予約制なので待ち時間もほとんどなかった。

D医師はほぼ私と同世代という雰囲気。

話しやすかったので、思い切ってSLTについて聞いてみた。

「選択肢の一つですね。眼圧は高くないので効果はあったと思いますよ。こちらでは点眼治療になりますが、眼圧がこれ以上あがらなければ進行を抑えられるでしょう」

やっと札幌で信頼できる眼科にたどりついた…、はずだった。


半年後、D医師から「オウハンゼンマク」という聞いたことのない病名を告げられた。

(続く)

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この記事を書いたのは

山崎 靖

元朝日新聞記者、キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、温泉学会員、温泉ソムリエ

昭和40年生まれ
新潟県十日町市出身


コラム「新聞の片隅に」
https://www.asahi-afc.jp/features/index/shimbun

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