札幌で〝眼科ショッピング〟を繰り返した私。たどり着いたのはスーパードクターだった⑤ さっぽろ単身日記

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札幌で〝眼科ショッピング〟を繰り返した私。たどり着いたのはスーパードクターだった④ さっぽろ単身日記

朝起きて目を開けた瞬間、異変に気付いた。

右目の見え方が明らかに変だった。

ブワッとした煙のような影が現れたり、輪っかの形をした黒いものが浮かんだりしている。
目をキョロキョロさせると、それらの物体もまるで水の中を漂っているよう一緒に動き出す。


とうとう来たか。

恐れていたことが現実になった、と直感した。

眼の中に蚊や糸くずのようなものが飛んで見える症状は「飛蚊症(ひぶんしょう)」という。

眼球の中を満たしている硝子体(しょうしたい)というゼリー状の成分が時とともに変化し、一部にしわのようなものができる。

このしわの部分が濁って、眼球の内側を覆っている網膜に影が映り、糸くずや黒い点のように見える。


私は20年以上前からこの症状に悩まされていた。


眼科⑤.jpg

これまで診察を受けた多くの眼科医によると、私の眼球はまん丸ではなく、ラグビーボールのように横に伸びた形になっているらしい。

飛蚊症も強度近視も、そのいびつな形が原因なのだそうだ。

このため、硝子体が網膜からはがれる「硝子体剥離」がいつ起きてもおかしくない、と言われてきた。

緑内障の治療を受けているD医師からも、飛蚊症の現象が悪化したら「硝子体剥離」のサインなので、すぐに知らせて欲しいと指示されていた。

硝子体剥離そのものは飛蚊症と同じで、加齢による(年を取ると色んなところにガタが来て嫌になります…)生理現象なので予防法はないという。

ただ、硝子体が網膜からはがれるときに、網膜も一緒にはがれる「網膜剥離」が起きることがある。

網膜剥離は失明につながるので、すぐの受診が必要ということだった。


早速、D眼科に電話をして、この日の午後に診察を受けることにした。

いくつかの機器で検査をし、最後に瞳孔を開く目薬を差して眼底を調べてもらった。

「網膜剥離は起きていないようですね」

よかった。

「ただ…」


??

「オウハンゼンマクかも知れません」


長年、眼科に通っているが、初めて聞く病名だった。


「黄斑前膜」


硝子体剥離が起きたとき、網膜も一緒にはがれてしまうのが網膜剥離だが、硝子体がうまくはがれずに、
黄斑という、網膜の中心で視力にもっとも重要な場所に、硝子体の一部が膜のようにはりついてしまう病気だ。

症状が進むと物がゆがんで見えることがある。


D医師は診察室で、私の網膜の断層画像を見ながら説明してくれた。

ちょうど黄斑の上の部分に薄い膜のようなものがはりついていて、本来ならへこんでいる部分が少し盛り上がっているように見える。

どうしたら、いいんでしょうか。

「手術しかないです。硝子体手術といって白目に小さな穴を開けて硝子体を取り除いた後に、
網膜の表面に張り付いている黄斑前膜をピンセットで取り除きます。
硝子体手術の後は白内障が進行することがあるので、白内障手術も一緒にやるのが一般的です。
高度な手術なので大きな病院か専門の眼科を紹介することになりますね」


えっ、手術ですか…

「日常生活に支障がなければ経過観察で良いこともあります。しばらく様子を見ますか」

そうですね。そうします…


これが、いまから半年前のD医師とのやりとりだ。


種明かしをしてしまうと、手術を受けた後のいまでも、右目にはゆがんで見える症状が残っている。


いまになって思えば、このときすぐに手術を受けたら、状況が変わっていたかも知れない。


ただ、半年前の私には眼の手術を受けるという勇気と覚悟がなかった。


(続く)

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この記事を書いたのは

山崎 靖

元朝日新聞記者、キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、温泉学会員、温泉ソムリエ

昭和40年生まれ
新潟県十日町市出身


コラム「新聞の片隅に」
https://www.asahi-afc.jp/features/index/shimbun

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