札幌で〝眼科ショッピング〟を繰り返した私。たどり着いたのはスーパードクターだった⑥ さっぽろ単身日記

一瞬、目の錯覚かと思った。

遠くに見える電柱が、まるで刀で竹を斜めに切ったように、真っ二つになっている。


少し近づいて凝視すると、何てことはない。
電柱はまっすぐ立っていた。


もしかして…

左目を手のひらで隠し、右目だけでもう一度電柱を見た。


不安は的中した。


D眼科で、右目が「黄斑前膜」と診断されてから4カ月。

とうとう症状が現れた。

(前回はこちら:札幌で眼科ショッピング〟を繰り返した私。たどり着いたのはスーパードクターだった⑤ さっぽろ単身日記
 https://sodane.hokkaido.jp/column/202306100730003456.html )

D医師からは、ゆがんで見える症状が出たらできるだけ早く手術をした方がいいと言われていた。

放置して悪化すると、手術をしてもゆがみが残ることがあるという。
(実際、ゆがみが残ってしまったが…)


すぐにD眼科に電話をして、手術の実績が豊富なE総合病院への紹介状を書いてもらった。

E総合病院は、札幌でも有数の大病院だ。

眼科⑥.jpg


紹介状を持参して開始時間とほぼ同時に受付を済ませた。

一通りの検査を終え、診察室に呼ばれたのは、病院に到着してから3時間後。


まだましな方か…


診察室で待っていたE-1医師は、医大を卒業したばかりかと思われるくらい、若く見えた。

「黄斑前膜だと思います」

ですよね。

「手術されますか?」

えっ、されますかって言われても…

手術しない方法もあるんですか?


「手術しないと症状が悪化する可能性が高いと思います」

じゃあ、手術しかないですよね。

「分かりました。執刀するのは別の先生になりますので、待合室でお待ちください」


はい?


ちょっと頭が混乱していたので、よく覚えていないが、E-1医師とはおおよそこんなやりとりだったと思う。

さらに1時間ほどたって、別の診察室に呼ばれた。


「手術されるんですね」


E-1医師より一回り年上に見えるE-2医師は、念を押すように聞いてきた。


あっ、はい。

「1週間ほど入院していただくことになります」


入院ですか…


確か小学生の頃、風邪をこじらせて肺炎になり、地元の病院に1日だけ入院した記憶がある。
それ以来ということか。


最近、「日帰り白内障手術」といった眼科の宣伝広告を目にすることが多いが、さすがに黄斑前膜の手術となると、入院になってしまうのか。


E-2医師は続けて、手術のリスクなどについて説明したのだと思う。

ただ、その内容についてはほとんど覚えていない。


そのときの私は、E総合病院に入院し、手術を受けるという実感が持てず、ただぼーっと聞いていただけだった。


「よろしいでしょうか」


一通りの説明を終えたE-2医師は私に同意を求めてきた。


説明の中身はほとんど頭に入っていなかったが、一つだけ気になることがあったので、聞いてみた。


白内障の手術もするというということですが、それは両目ですか、右目だけですか?


黄斑前膜の手術は、術後に水晶体が濁る白内障になるリスクが高まるため、水晶体を人工のレンズに取り換える白内障の手術も同時にするという。

つまり、右目は黄斑前膜の手術に加えて白内障手術も行う。


ただ、これには心配なことがあった。


白内障の手術では、人工レンズの焦点の位置を近距離にするか遠距離にするか選ぶことができる。

私は強度近視のため、たとえ近距離に合わせたとしても、いまよりはずっと視力がよくなることが期待できるというのだ。


となると、右目だけの手術だと逆に左右の視力のバランスが悪くなるのではないか。

いずれ左目も白内障になるリスクがあるのだったら、同時に両目の白内障手術をした方が合理的ではないか。


そんな不安、考えからだった。

私の質問に対し、E-2医師からは耳を疑うような答えが返ってきた。


(続く)

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この記事を書いたのは

山崎 靖

元朝日新聞記者、キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、温泉学会員、温泉ソムリエ

昭和40年生まれ
新潟県十日町市出身


コラム「新聞の片隅に」
https://www.asahi-afc.jp/features/index/shimbun

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