札幌で〝眼科ショッピング〟を繰り返した私。たどり着いたのはスーパードクターだった⑦ さっぽろ単身日記

とうとう黄斑前膜の症状が出てしまった私は、紹介状を持ってE総合病院の眼科を受診した。

手術で執刀するというE-2医師に、同時に行う白内障手術は両目なのか右目だけなのかと質問した。

すると、耳を疑うような答えが返ってきた。

(前回はこちら:札幌で眼科ショッピング〟を繰り返した私。たどり着いたのはスーパードクターだった⑥ さっぽろ単身日記

https://sodane.hokkaido.jp/column/202306170730003483.html)

「それは担当のE-1先生に聞いてください」


えっ、どういうこと?


E-2医師は執刀はするけど担当ではないということなのか。

頭を混乱させたまま、待合室に逆戻り。

さらに30分後、最初の診察室に呼ばれた。


E-2医師からE-1医師に聞けと言われたとE-1医師に告げると、E-1医師は明らかに困惑した表情を浮かべて、こうつぶやいた。


「そんなことを言われましたか」


「少し待っていただいていいですか」


またまた待合室に戻された。


同じ病院内でたらい回し状態になるとは。

10分ほどたって、この日4度目の診察室入りに。


間違いなくE-2医師から意見を聞いたはずのE-1医師の言葉は、もはや驚きを通り越すものだった。


「どちらでもいいそうです」


このとき私は、E総合病院で手術を受ける気持ちがほとんどなくなっていた。


後で連絡しますので、しばらく考えさせてください。

そう言って、手術の予約はせずに診察室を後にした。


精算を済ませ、E総合病院の大きなエントランスを出ると、青空が広がっていた。

眼科⑦.jpg

その瞬間、なぜか気持ちが軽くなった。


ここで手術をしなくて良かった。

そんな安心感だったのかも知れない。


E-1医師とE-2医師によるたらい回しの診察を受けているうちに、二人に任せて大丈夫だろうかという不安だけが増幅していった。

たった二つしかない自分の眼なのだ。

この二人の医師に委ねる気持ちにはどうしてもなれなかった。

やはり、自分が心から信頼できる医師に託したい。

でも、そんな医師はどこにいるのだろうか。


また振り出しに戻ってしまった。


さあ、どうやって探そうか。

そう言えば…

このとき、もう一通の紹介状を持っていることを思い出した。


書いたのは、札幌で最初に訪れた眼科で、SLTという緑内障のレーザー治療を受けたA眼科のA医師。

「緑内障の治療はこれでばっちりです。あとは強度近視を治しましょう。白内障手術の名医がいるので紹介状を出しますね」

1年半前、A医師からそう言われて頼んでもいないのに受け取った紹介状があった。

白内障手術で挿入される人工レンズには主に2種類がある。

一つは単焦点。もう一つは多焦点。


単焦点レンズは1点にしかピントが合わないので、例えば目から30センチのところに焦点を合わせると、遠くを見るときにはメガネが必要になる。

ところが、多焦点レンズは2点または3点でピントが合うため、メガネのない生活が可能になるという。


人生の大半をメガネと共に過ごしてきた私には、想像もできない夢の世界ではあるが…

ただ、多焦点レンズは保険適用外のため費用はかさむようだ。


「目薬とはおさらばできたので、今度はメガネとおさらばしましょう」

そんな言葉とともに、A医師から受け取った紹介状だった。


宛先に書かれていたのはF眼科のF医師。


この札幌郊外にあるF眼科のF医師こそ、私が札幌でようやくたどりついたスーパードクターだった。


(続く)

1

この記事を書いたのは

山崎 靖

元朝日新聞記者、キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、温泉学会員、温泉ソムリエ

昭和40年生まれ
新潟県十日町市出身


コラム「新聞の片隅に」
https://www.asahi-afc.jp/features/index/shimbun

合わせて読みたい