〝不同意性交〟事件 初公判 見知らぬ男が枕元に「なぜ?」「開いているからだよ」…無施錠のドアから侵入した男 被害女性2人に刻み付けられた恐怖
2025.01.20
平年に比べ非常に雪が少ない札幌。札幌地裁の周りも歩道はむき出しで歩きやすい状況だった。
目覚めたらいきなり男がいた! 世間を恐怖に陥れた事件の裁判
住居侵入・不同意性交・不同意わいせつの罪で起訴されているのは高田富士世(57)。初公判の日、拘束されたまま法廷に現れた被告は上は黒で下は白のスエット。髪は去年逮捕されたときと同じミディアムロングという長さで外にはねていた。表情からはその精神状態はうかがえない。
高田被告が問われている罪は以下の通りだ。
事件①2024年9月11日の午前 3 時 36 分、札幌市内の住宅に無施錠の勝手口から侵入し寝室において寝ていた30代女性に対し、女性に対し不同意に性交したもの
事件②2024年7 月 26 日午前 2 時 55 分頃札幌市内の住宅の無施錠の玄関から侵入し、寝ていた20代女性の右手首と首元をおさえつけ「声を出したらどうなるか分かっているのか」などといって女性の服の中に手を入れ胸などをさわったもの
この二つの事件の起訴内容について、高田被告は「間違いないです」と答えた。
深夜に自転車で徘徊し、あかりのついた女性の部屋をのぞくように…
検察は冒頭陳述で、事件にいたった経緯について述べた。
男が犯行にいたるようになった経緯(検察による説明)
被告は当時、倉庫の管理をする仕事をしていて、勤務時間は夕方から翌朝という生活だった。そういったシフトから、休みの日も深夜に目が覚めていることが多く、去年の春ごろから、自宅で酒を飲んだ後で散歩がてら自転車で近所を走るようになった。
深夜に自転車を走ると、たまにみつける明かりのついた部屋が気になるようになり、たまたまのぞくと女性が見えたりして、次第に「女性をもっと見たい」「さわりたい」「あわよくば性交したい」と思うようになったという。
そして、7月、9月とあかりのついた部屋をみつけ、今回の犯行におよんだ。
30代被害者の女性(Aさん)の調書
「私はかつてしたことのない恐怖を感じました。私は犯人に対し『誰?』と言いました。恐怖から大きい声を出そうと思っても声はつぶやくほどしか出ませんでした。…中略…そのあとも恐怖から大きな声は出ませんでした。私は犯人に抵抗するため体を動かしました。男は上腕あたりから押さえつけたりしました。その時、本当に今日殺されると思いました。そして私は『警察』と言いました。その時も恐怖から大きい声を出そうと思っても声は出ませんでした」
………
女性はその後、小さな物音などにも恐怖から敏感になり、慢性的に頭痛を発症するようになったといいます。
………
この事件の2か月前、7月26日に被害にあった20代女性も心に大きな傷を受けました。女性も寝ているときに男が部屋に侵入されたといいます。
20代被害者の女性(Bさん)の調書
「背中に重みを感じ、犯人の足が私の足にからむように感じました。私は犯人に『なんでいるんですか』と言いました。犯人は『鍵が開いているからだよ』と言いました。私は犯人に対し『すみません、すみません』と言いました。犯人は『動くな。動くとどうなるかわかっているだろうな』と言って服の中に手を入れられました。私はレイプされると恐怖を感じて動けなくなりました」
………
女性は事件後、男性が怖くなり、近くに立たれるだけでも恐怖を感じるようになり、日常生活にも支障が出てきているといいます。
……
そして、被告人質問が始まった。
被告人「中に入るともっと女性が見えるんじゃないか」
弁護士:徘徊するのは?
被告:休みの日です
弁護士:初めて自転車で徘徊中に女性を見たときのことは覚えている?
被告:そういう状況は覚えていないです。女性が目に入ってきただけです
弁護士:最初は何もせず帰ったと。
被告:ジョギング、散歩のつもりで外に出ていたので
弁護士:7月26日の事件の時も最初はそのつもりはなかったと
被告:最初はないです
弁護士:酒はどれくらい飲んでいた?
被告:泥酔するまでは。休みの日は17時から飲み始めるので。
弁護士:Bさんの家を通りすぎたときに入りたいと思った?
被告:見たんだと思います。電気がついているのが見えたんだと思います。
弁護士:どの時点で性的な衝動に?
被告:部屋の中が見えて家族がなく、その時点で「中に入ったらもっと女性が見えるんじゃないか」と思って、やりたいことが増えてきたんだと思います。
弁護士:「声を出すな」と言ったと
被告:「そんなこと言っていない」とは言いませんが、この状況から逃げ出したいという衝動。被害者がそう言ったのなら言ったのかもしれませんが、私は一刻も早く外へ行こうと
弁護士:Bさんに対してどう思っていますか
被告:何の落ち度もないのに、寝ているときに知らない人が勝手に部屋にいて恐怖しかなかったと思いますし大変申し訳ない気持ちでいっぱいです
被告「性欲強くない」動機をあいまいに話す被告
弁護士:Aさんについてはいつそういう行動に及ぼうと?
被告:部屋の中が見えて、電気がついていて、中が見えていて、中を見ようと中をのぞいて、女の人が寝ていて、寝ていたからもっと近くで見ようとかさわりたいというのが衝動で出てきて…
弁護士:そのへんでいいです。あとで。Aさんの姿はそのまま見えた?
被告:ベランダのサンにあしをかけて背伸びして見ました。
弁護士:交際相手とのセックスレスが原因ではない?
被告:ないです
弁護士:じゃあなぜそんな気持ちに?
被告:たまたま(部屋が)見えて急に…
弁護士:衝動的に?
被告:そう思います
弁護士:性欲は強くない
被告:ないと思います。気にもしないので。
弁護士:じゃあなぜこんなことに?
被告:わかりませんが…ストレス…
弁護士:Aさんに対してどう思いますか
被告:急にそんな状況で目をさましてすごい恐怖だったんだろなと。自分のまわりでそんなことが起きたら悲しいし許されるものではないと思いますし、本当に申し訳なくなっています。
……
検察官:人の家に入るのは違法だとわかっていた?
被告:はい
検察官:人にさわることも違法だとわかっていた?
被告:はい
検察官:逮捕されてしまう、つかまってしまうと自覚していた?
被告:………。
検察官:明かりのついている部屋を探していた?
被告:さがしていたわけではないです。通り過ぎて見ていただけ。
検察官:明かりのついた部屋をのぞくかのぞかないかは、どういう判断で?
被告:見えて、見えて、部屋の中が見えた瞬間だと思います。
検察官:「寝ている」と思ったら何をしようと思って入る?
被告:………
検察官:体を触ろうと思って入るということ?
被告:みたいです
検察官:そして見て、触る
被告:はい
検察官:(供述で)同意が得られたらセックスしたいと言っていたが?
被告:こちらの存在を知られなければしたいと思います。
検察官:全部寝ている間にあなたがしたいことを全部やれたらいいということですか
被告:です
検察官:自分が犯罪にいたった原因があなたはよくわかっていない。大丈夫ですか?
被告:はい
検察官:なぜ大丈夫なのですか?
被告:絶対(今後)そういうことはしないと思っているからです
被害者の30代女性(Aさん)からの意見陳述(代理人が代読)
最後に被害女性からの意見陳述を検察側の代理人が代読した。性被害を受けた被害者は、いまも心の傷に苦しめられ、社会的にも不利益を得ていた。
(以下、被害者女性の意見陳述(複数個所中略あり)
私は性犯罪の被害にあったものです。自宅で本来安全であるべきところで、侵入者によって性被害を受けたことに大きなショックを受けています。部屋の中には誰もいないはずなのに、知らない男がいて恐怖でした。
殺されるかもしれないと思いました。犯人の顔をはっきりと見たわけではありません。しかし、私が目を覚ましてしまい、対面してしまったことで、殺されるかもしれないという恐怖でいっぱいになりました。
今でも恐怖で夜中に目を覚ますことがあります。よく眠れませんと睡眠不足にになり、投薬も受けています。
この被告人がいずれに自由の身になると思いますが。逆恨みして私に仕返してこないかという恐怖心もあります。
私はこの事件をきっかけに転居しました。事件にあった部屋は犯人が知っているので、とてもこの住み続けることはできません。いくら転居としたとはいえ、もし私が今住んでいるところを知られてしまったらと思うととても怖いです。この恐怖は時間が経ってもやれることはできないと思います。
今回の性犯罪の被害にあったことで、警察から事情を聞かれました。自分が受けた性被害のことを話すのは正直とても辛いです。
………
女性は警察や検察から事情を聴かれた際に男性の捜査員から話を聞かれ、非常につらい思いをしたことを訴えていました。
………
被告人質問が終わり、検察側は被告に対し懲役8年を求刑。弁護側は寛大な判決を求めた。
裁判長から最後に何か言いたいことは?と言われた被告は、以下のように答えた。
被告「私が被害を与えた方に対し大変申し訳なく思って居ます。自分がどうしてこのようなことをしたのか、何度もいろんな人に聞かれるんですが、最初から「ああしてやろう」「こうしてやろう」と思っていなくて」
「こんなことをしてしまって大変申し訳なく思っていて、自分の罪の重さというのはわかっていて、このようなことをして犯罪全般ダメだから、何を言ってるかちょっとわからないですけども、犯罪やダメなことダメなこと言われるものなど何に関しても相手のことを考えて行動するようにしたいと思います」
………
判決は2月19日に言い渡される。