もめない!困らない「相続」のために 残されて困る「デジタル遺品」「持ち家」どうする?遺言はどう書いたらいい?
2025.04.16
4月15日は語呂合わせで「良い遺言(いごん)の日」です。(遺言は法律用語では「いごん」)そこで今回は、いざという時にもめない!困らない!相続のポイントについてお伝えします。
亡くなったあとも請求が続く!?デジタル遺品
相続の大問題、1つ目のテーマはスマホやパソコンの中の見えない契約「デジタル遺品」についてです。国民生活センターにはこんな相談が寄せられています。
亡くなった兄がネット銀行に口座を開設していたのは知っていたがどこの銀行かわからない。そこで携帯会社に兄のスマホの画面ロックを解除してほしいと依頼しましたが、「初期化はできるが、画面ロックの解除はできない」と言われました。結局スマホから口座内容を確認することができませんでした」
また、こんな相談もありました。
「亡くなった夫のクレジットカードの利用明細に1000円のよくわからない請求があるのを見つけました。カード会社に問い合わせると…サブスクの請求だとわかりました。サブスクの事業者に解約したいと伝えたところ…「すぐに解約するためのはIDとパスワードが必要だ」と説明されたそうです」
国民生活センターによるとサブスクは契約者が亡くなっても解約手続きを行わないと請求が続いてしまうそうです。デジタル遺品で家族を困らせないよう事前にどのような準備をしておけば良いのか。終活や相続について詳しい終活マイライフの西藤博子さんに聞きました。
■終活マイライフ西藤 博子さん
「1番いいのは今自分が使っているもので、クレジットカードもそうですけど、使用頻度が少ないとかそういったものは自分が解約して数を減らすことが大切だと思います。亡くなってからだと手続きがどうしても煩雑になるので、シンプルに自分が常に使ってるものにまとめて、それをご家族に知らせることが大切」
いざという時のため契約しているサブスクなどのIDやパスワードを一覧表にして家族に共有しているという西藤さん。
自分の情報を記すエンディングノートにも、最近は「デジタル」の項目があり、スマホやパソコンのパスワードなどが記載できるようになっているといいます。
終活マイライフ西藤 博子さん
「形の見えないものだからこそアナログですけど、紙に残して、残された方に少しでも手間がかからないようにしてあげることが大切だと思います」
セキュリティーの問題もあるので国民生活センターではパスワードを書いた部分に修正テープを2、3回重ね貼りして遺族が必要な時にコインで削るという方法も紹介しています。
空き家を放置すると思わぬペナルティーで出費も!?
そして相続の大問題、2つめのテーマはこちら。家など、相続した家。放置しているとペナルティーが科せられる可能性があるんです。
国は去年4月、所有者がわからない空き家や空き地をなくすため、不動産の名義を、亡くなった人から相続した人に変更する相続登記を義務化しました。相続を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料が科せられます。また、倒壊の危険がある特定空き家や、その一歩手前の管理不全空き家と認定され改善がみられなければ、固定資産税が最大6倍に増える可能性があるんです。
持ち主にとっても自治体にとっても悩みのタネである空き家の活用を進めようと新たな対策に乗り出した自治体を取材しました。
北広島市内にある一軒家。玄関がどこにあるのかわからないほど草木が生い茂っています。
家の中には家財道具がそのまま…天井の壁紙は剥がれ落ち、カレンダーの時は2017年で止まっていました。
北広島市 建設総務課・池端宏記 さん
「親が亡くなって相続して中に親の持ち物があり、そのまま残っているものをなかなか片づけられなくてそのままの状態にしているとか、どうやって手をつけたらいいかわからないというケースも結構あります」
北広島市では去年、全戸調査を行い、市内にこうした空き家が400軒以上あることが判明しました。
北広島市 建設総務課・池端宏記さん
「ここは空き家だったんですが、今、賃貸物件として貸し出している物件になります」
空き家を活用すべく新たな対策に乗り出した北広島市。
先月から始めたのが賃貸や売りに出ている空き家や空き地を紹介するインターネットサイト「きたひろナビ」です。物件情報だけでなく周辺の飲食店や施設などの生活環境もわかるようになっています。
北広島市 建設総務課・池端宏記 さん
「ラピダスや北海道医療大学が来るというところで住宅需要が高まる。土地もあまり多くないので今ある物件を利用してもらったり、そこでまた新たに建て替えてもらったり。(空き家を)買いたい人も売りたい人も、市の空き家対策としてもメリットがあるかなと」
また、市役所の4階には相続した空き家の処分や活用方法など、住まいに関する相談ができる専用窓口が。去年4月に設置され、昨年度はおよそ200件、設置前の5倍の相談が寄せられたそうです。
北広島市 建設総務課・池端宏記さん
「不動産会社に行くと騙されるんじゃないかとかそういった印象が強いので市がそこに間に入ることでお客様の不安も解消されるかなというところで設置しました。住まいに関しての相談を受けるので気軽に来ていただければと思っています」
遺言を書いてトラブルを防止!
デジタル遺品や空き家の問題を見てきましたが死後、家族が困らないために重要なのが…遺言です。お金持ちが書くものというイメージがありますが実は違うんです。
札幌市内で行われた遺言についての講演会。札幌弁護士会が主催しおよそ80人が参加しました。
トラブルを避けるため遺言を書くべき人とは?
札幌大通公証役場 公証人・野口幹夫さん
「(子どもがない)夫婦で暮らしている。きょうだいもいらっしゃるという時に配偶者に全部渡したいというような時は遺言書がないと手続きがとれない。不動産がある時には法定相続だと共有という形になります。ただ、そうすると不便になりますので、やはり誰々にはこの不動産をという風な決め方をした方がいい場合があります」
遺言には、法律のプロである公証人が正確に作成し、公証役場で保管する公正証書遺言と、自分で書いて自宅などに保管する自筆証書遺言があります。
自筆証書遺言を書く際はパソコンではなく、自らが本文・日付・氏名を手書きして、押印する必要があります。遺言の紛失や改ざんを防ぐため2020年からは法務局で保管してもらうことも可能になりました。
札幌大通公証役場 公証人・野口幹夫さん
「遺言の手続をする人を遺言の中で指定しておくと、その人がひとりで全部の手続きをすることができます。かなり便利というか、スムーズにことがすすむと思います」
講演会では遺言は大切な人に残せる最後の贈り物だと話していました。札幌弁護士会では相続や遺言についての無料相談も受け付けているということです。