いきなり土下座!? 「自分の死をもって…」 自称〝パチスロ依存症〟の男 パチンコ店で落ちていた財布を持って外へ…「ボロボロの財布だった」と失礼な言い訳も

アルコール依存症やSNS依存症など、何らかの物質や行動にとらわれ、「やめたくてもやめられない」状態に陥る依存症。

中でも精神を病んでしまうほどの強い欲求がともなうものの一つが「ギャンブル依存症」と言われている。

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今回、札幌地裁で裁かれた被告の男がまさにそうだ。「●●●●●」というパチスロの台の名前を一生分聞いたと思うくらい、この男は繰り返し口にしていた。まさに極度に依存していることを物語っていた。

※「●●●●●」は30年前に生まれた長い間ファンから親しまれているパチスロ台のこと(ネット調べ)

パチンコ店で客が落とした財布を盗んだ男 パチスロで生活保護費を使い果たしネット喫茶住まい中の犯行

男は住所不定・無職の50代。拘束されるため、支給されているグレーのスエット上下姿で現れた。額は後退していて、年齢よりも老けて見えた。

男が問われている罪は以下の通り

2025年9月 札幌市豊平区のパチンコ店で、客が落とした財布を盗み、現金7000円を窃取したもの

→マイナンバーカードやクレジットカードは近くのコンビニの床に捨て、財布は袋に入れてコンビニのごみ箱に捨てた

月10万円の生活保護費を1週間でパチスロに使い果たす生活

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検察側の冒頭陳述によると、男は中学卒業後、新聞配達員の仕事についたことがあるほか、生活保護を受けるなどして生計を立てていた。前科は5犯で窃盗と強盗を繰り返している。2024年に前の罪の服役を終えたあとは生活保護を受けていて、働いていない。

今回の事件は、床に落ちていた財布を勝手に盗んだものだが、防犯カメラにその様子が写っていたため、男が後日来店した際に、男に気づいて通報。そのまま逮捕された。

男は毎月10万4500円の生活保護費を支給されていたが、1週間でその金をパチスロで使い果たす生活を送っていて、入った賃貸住宅は最初の月以降、家賃は支払わず、部屋を追い出されネット喫茶に泊まる生活になっていた。

男は盗んだ財布から現金7000円を抜き取り、居酒屋で3500円使用。残りをネット喫茶で使用していた。

「私は「●●●●●」依存症」「●●●●●」で負けて頭に来ていた【被告人質問】

弁護士:今回の窃盗事件、被害者の方に財産上の被害を与えたことになりますが、被害者に対して今の気持ちは?

被告:被害者の方には大変なご迷惑をかけて申し訳ありません。

今後悪いことは、絶対に絶対に絶対にやりません。

弁護士:被害弁償はできていないですね?

被告:はい

弁護士:あなたは現在生活保護を受給している。

被告:はい

弁護士:被害弁償できるお金は手元にありますか?

被告:いくらも残っていなくて刑務所を出たら働いて返したいと思います。

弁護士:あなたには親はいますか?

被告:母は私が小学4年生のときにひき逃げされて殺されました。父は中学校のときにアパートの階段から落ちてそのまま凍死しました。※真偽不明

弁護士:社会に出たらお金を返すといってもいつになるかもわからないですよね。

被告:はい

弁護士:あなたはかつては仕事をしていたこともあるけれども、去年刑務所を出所してから何か仕事をしましたか?

被告:していません。

弁護士:じゃあ社会に出て働いてお金を返すと被害者に提案しても信用してもらえますか?

被告:信じてもらえないかもしれません。

弁護士:出所して1年で今回の事件。財布をみつけたときに本来とるべき行動はなんだと思いますか?

被告:警察の人には信じてもらえなくて。当時所持金は2万4000円くらいあって、1000円タクシーで使ったら、そのまま使ってしまった。お金を店員や交番に届けるべきでした。

そのときは「●●●●●」で4万円負けて頭にきていて、お店にも頭にきていたので…

弁護士:「●●●●●」というのはパチスロの商品名ですか?

被告:私は「●●●●●」しか打たないので、「●●●●●」依存症なんで。

弁護士:あなたは誰かから依存症ですよと言われたことがあるんですか?

被告:言われたことはないんですけど、いつも「●●●●●」のときに事件を起こしてしまって。

「●●●●●」が悪いわけではなくて、パチンコのお店が悪いわけでもなくて。自分が原因なんですけど、依存症の施設に入って治るようにしたい。

弁護士:おカネを自分で使いたいって気持ちがあって、それで財布を届けなかったんじゃないですか?

被告:拾った時点ではいくら入っているかもわからなかったので。失礼ですけど財布のボロボロのキレキレでお金が入ってないと思っていました。

…………

被告は「拾った時点ではたいしてお金が入っていないと思ったので、取るつもりはなかった」という言い訳を繰り返した。

「もはやその言い訳をしても意味はないのではないか」と思ったが、それは裁判が終わるまで続いた。

……………

弁護士「生い立ちは苦労したかもしれないけど、何度も刑務所行くような生活は終わりにしないと」

弁護士:自分は「●●●●●」依存症だと分析していて、治したいと

被告:治したいです原因は。…

弁護士:(さえぎって)もういいですいいです。

被告:今年に入って「●●●●●」をどういうわけかやってしまって、心のどこかに「●●●●●」をやって負けたら刑務所に戻ればいいという甘い考えがありました。

弁護士:あなた、いくつになりましたか?

被告:51歳です。

弁護士:50代ですよ。生い立ちを聞くと苦労したとは思いますけど、何回も刑務所に行くような生活は終わりにしないといけない。

被告:自分の父が亡くなった51歳になったんで、あと何年生きられるかわかりません。「●●●●●」…「●●●●●」で…正しい人生を

…………

続いて検察官が質問に立った。その質問は簡潔で短めだった。

…………

検察官:あなたは前科5犯で、それは窃盗と強盗。窃盗は全部パチンコ店で犯している。全部「●●●●●」のせいなんですか?

被告:「●●●●●」をいつもやっていて、「●●●●●」でいつも大負けするともうアタマがおかしくなって、数百円になってしまって。もうしないと思っても「●●●●●」をしてしまって。「●●●●●」が悪いわけではなく自分が100%悪いので、依存症の治療をうけたいと思っています。

検察官:これまでに依存症の治療を受けたことは?

被告:一度もないです

検察官:なぜ受けたことがないのですか?

被告:ギャンブルの依存症の治療をする施設がなくて、スマホも持っていないので調べることもできなくて。

検察官:前回刑務所を出所してからジャグラーをやったのはいつですか?

被告:出所した初日からやってしまいました。

検察官:刑務所でも「ジャグラーやりたい」「ジャグラーやりたい」と考えていたのですか?

被告:いや、「やりたい」と「やりたくない」と半分半分くらいです。

検察官:なぜ財布をみつけたとき、「これ落としましたか?」って声をかけなかったのですか?

被告:そのときは、被害者の方はあの座って何か落としているなって感じがしていたんですけど、私も落としたことがあるけれども

検察官:けれども思ったわけですよね?なぜ声をかけなかったんですか?

被告:頭はおかしくなっていたのかもしれません。

検察官:それでジャグラーをしようと思ったのでは?

被告:その日はもうするつもりなくて、本当に失礼なんですけど、ボロボロの財布だったんでお金も入っていないだろうと思って。声をかけずに持っていきました。

検察官:盗もうと思ったのかどうなのか、どっちなんですか?

被告:とにかく持って出ようと思いました。お店の人としゃべりたくなかったので。

裁判官の質問終わりで突然傍聴席へ土下座する被告!

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裁判官:さきほどから聞かれていますけど、交番に届けるために財布を持って行ったわけではないですよね?

被告:そのとき自分も2万4000円くらいもっていたので、「●●●●●」をやる気がなくて、ボロボロの財布だったので、入っていても数百円くらいだと思って、それで拾ってなんていうか帰るというか、それで拾って正直…でも拾った時点ではお金のことは考えていませんでした。本当にあのときはすみませんでした。

裁判官:お金は確認したのですか?

被告:はい、1000円札6枚と500円玉2枚…

裁判官:最後に1点だけ。あなたの前科は平成21年から始まっている。きっかけはパチスロですか?

被告:はい、以前は働いていたんで自分の給料の範囲内でやっていて、そのときはまだ。1万8000円ぐらいの服を買ったり。新聞配達やキャバクラで働いていて、自分の周りに迷惑をかけず、「●●●●●」を初めてから…

裁判官:はい。私の質問は以上になります。

被告:本当にすみませんでした。(急に傍聴席へ土下座して)被害者のかたにご迷惑をおかけして申し訳ございません!

………

突然大きな声を上げ土下座した被告。しかし、弁護士も検察官も裁判官も動じた様子はなく、淡々と論告求刑へとうつった。

検察官は、被告の犯した罪は酌量の余地はなく再犯の可能性も高いとして拘禁刑2年を求刑。

弁護側は寛大な処分を求めた。

「自分の死をもって…」

「最後に言っておきたいことは?」の裁判官の問いかけに、被告は次のように述べた。

「被害者の方にたいへんなご迷惑をかけて申し訳ありません。今後絶対に絶対に絶対に悪いことはしません。今度悪いことをやったら自分の死をもってお詫びします」

判決は2週間後に言い渡される。

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この記事を書いたのは

HTB Court Watcher

元HTB報道部・社会班キャップ
SODANE編集部に在籍しながら、たまに趣味の裁判傍聴のため
札幌地裁・高裁に出没。傍聴する裁判は刑事・民事問わず。